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俳人はなぜ、どのように俳句を作るのか

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俳句は、世界で最も短い文学であり、無限の宇宙でもある。一目で捉えられるほど小さいのに、全貌を掴むことは難しい。そんな不思議な世界を、そこに住む方々(俳人)の視点で旅してみる。俳人…
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#俳人

一行の詩に、生かされている ~俳人 河内静魚さんに聴く(後編)俳句との出会いから

大学卒業の年に、入社と退社を2回繰り返し、3社目で俳句と出会う。「年寄り臭い」と思いつつも付き合いで始めてから、まもなく50年。今では俳句を心から楽しみ、「俳句は生きること」と語る俳人 河内静魚さん。たった一行の詩が、なぜ、これだけの力を人に与え続けることができるのか。静魚さんが歩まれた道のりを辿りながら、その謎を紐解いていく後編です。 (前編)静魚さん略歴/俳句と出会うまで 俳句との出会いから職場句会から、ひとり修行の道へ ――3社目で、ついに俳句と出会われるのですね

師とのご縁が、私を「ここ」に連れてきてくれた ~俳人 根来久美子さんに聴く

たった17音の俳句が持つ、底知れない力。その中を、俳人たちの話を聴きながら、様々な角度から光を当て、探検していく。今回は、「師とのご縁が、私を『この場所』に連れてきてくれた」とおっしゃる、俳人 根来久美子さん(以下、久美子さん)にお話を聴きました。 2つの会を代表する「この場所」とは、上智句会代表、そして、ソフィア俳句会代表という立場である。 上智句会は、上智大学名誉教授の大輪靖宏先生によって1999年に発足した。同氏の人柄や知見、指導力に、他の結社や句会を率いる俳人まで

俳句も仕事も生活も、すべて「生きる姿勢」につながっていく ~俳人 仲栄司さんに聴く

※過去のインタビュー記事3つのまとめです 「俳句は生きる姿勢」 俳人、福永耕二。彼は、42年の短い生涯を俳句ととともに駆け抜けた。冒頭の言葉「生きる姿勢」は、その人生を描いた書「墓碑はるかなり」の中に、彼の俳句観を象徴する言葉として繰り返し登場する。 この本を読み、俳句を人生と等価と捉える福永耕二の俳句観、そして、その覚悟を自らの人生に貫いた純粋な魂に、まず衝撃を受けた。と同時に、そこには、時を超えて運命のように彼の人生と出会い、この物語を紡いでいった著者、仲栄司さん自

俳句は生きる姿勢 ~俳人 仲栄司さんに聴く(3)いまここで共有している時間

俳句とビジネスの2つの世界に身を置くからこその視点で、俳句からイノベーションを考えるという、前回のお話。それも一つのイノベーションかもしれないと感じました。さてここから、栄司さんの生きる姿勢を伺っていきます。 結果とプロセスーー 「墓碑はるかなり」出版後、また新たな執筆活動をされているのですね。 俳句は私自身の表現の一つですが、そこで言えることは限られます。それから、読み手に委ねる部分も大きい。だから、自分が伝えたい、主張したい、ということは文章で書きます。 いまは、「

俳句は生きる姿勢 ~俳人 仲栄司さんに聴く(2)俳句とイノベーション

ここまで、「俳句は生きる姿勢である」という、俳句を真正面に見据えた俳句観についてお話を伺ってきました。ここから、「物事は多面体である」という栄司さんの言葉に習い、別の角度から俳句を捉えていきたいと思います。 俳句とイノベーションーー 俳人としての活動以外に、どんなことをされていますか? 昨年、大手企業を定年退職して、今は、準公務員という立場で、新しい仕事をしています。加えて、「熱帯と創作」という、東南アジアにおける日本の文人を中心とした作品鑑賞の連載も執筆しています。あと

俳句は生きる姿勢 ~俳人 仲栄司さんに聴く(1)俳句は「着眼」

「俳句は生きる姿勢」 福永耕二という俳人がいる。彼は、42年の短い生涯を、俳句ととともに駆け抜けた。冒頭の言葉は、彼の人生を描いた書「墓碑はるかなり」の中に、彼の俳句観を象徴するものとして繰り返し登場する。 俳句には、作者の生きる姿勢がそのまま映し出される。人の心を動かす俳句は、人を心を動かす生き方からしか生まれない。すなわち、俳句は人生と等価である。その覚悟で努力を重ねてきた人によって、俳句の歴史は作られてきたのだと。 この本を読み、その俳句観、そして、それを貫いた福

俳句は短いからこそ、人の心を動かすことができる ~俳人 山本ふぢなさんに聴く

俳句は、世界で最も短い文学であり、無限の宇宙でもある。一目で捉えられるほど小さいのに、全貌を掴むことは難しい。そんな不思議な世界を、そこに住む方々(俳人)の視点で旅してみる。俳人はどのように俳句を捉え、向き合っているのか。なぜ、どのように俳句を作るのか。第1回目は、俳人 山本ふぢなさんにお話を聞きました。 本名:山本公美子 経歴:作句歴19年 ・第12回角川全国俳句大賞 角川文化振興財団賞(題詠部門)受賞 「地祭の竹あをあをと五月かな」 ・平成27年「若葉」艸魚賞受賞(新人