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【Steam】知恵のかりもの→CD-iゼルダ→Arzetteの連想でこのゲームを紹介したい

「ゼルダ姫が主役なのは三度目」

ゼルダ最新作『知恵のかりもの』が発表されたとき、ごく一部のディープなファンがそう言ってにやける。知る人ぞ知る事実だが、ゼルダ姫が主役を務めたことが過去にあった。二度も。そしてその記念すべき一度目はこれ。

原題 ”Zelda: The Wand of Gamelon”
邦訳『ゼルダの伝説 ギャメロンの杖』

ギャメロンの杖は、当然ながら本編ではない。ゼルダの使用権を得たフィリップス社によってCD-iという機器向けに作られた派生作品だ。CD-iゼルダは全3作あり、ギャメロンの杖はその2作目にあたる。ちなみに3作目もゼルダ姫が主役をしている。

参考:ギャメロンの杖のレビュー動画

この動画からも見て分かる通り、現在のゲーマーやゼルダファンにとってマイナスな方向に語り草となっているのがCD-iゼルダだ。ところが、そんな負の個性に光を見出したクリエイターがいたとしたら……?

知恵のかりものによりCD-iゼルダが話題に上がった。そんなタイミングに便乗して、とあるゲームを紹介させてほしい。

Arzette: The Jewel of Faramore

ArzetteはSteamで配信中の2D横スクロールアクションゲームであり、CD-iゼルダの、とりわけギャメロンの杖をリスペクトしたゲームだ。

PVやスクショ、プレイ動画を見ていだければ分かると思うが……凄まじく癖のあるアニメシーン!!絵画風のふわっふわしたマップ背景!!いずれも原典たるCD-iゼルダに忠実だ。特にアニメは驚かされるだろう。この粗粗しい描画をわざわざ再現するのは、普通に制作するより手間にちがいない。

これらアートスタイルはCD-iゼルダにおいてマイナス要素に数えられている。アニメシーンは「絵が怖い!キモい!」絵画風マップは「足場や出入り口が分かりづらい!」といった具合に。

そもそも、ゲームとして非常に怪しい出来のCD-iゼルダは、ゲーマーやゼルダファンからの評価が相当に厳しい。坊主憎けりゃ袈裟まで憎いの精神で、ゲームのほとんどの要素は低く見積もられている。

Arzetteはその現実にどう対応したかというと、単純な話で、ゲームをきちんと仕上げたのだ。操作感を整えて、UIを小綺麗にし、マップの分かりやすさに気を使う。「えっ、それって当たり前のことでは?」と思われるだろうが、そんな当たり前ができていなかったのがCD-iゼルダだった。

自分は、今作を遊ぶ前には少しだけ「悪質なゲームバランスの再現」を期待していた。ひょっとするとそこまで完コピしているのではないかと不安もしていた。蓋を開けてみるとArzetteは普通の横スクロールアクションゲームだった。普通とは、とてもありがたいことなのだ。

ゲームとして手堅くまとまり体験が面白いと、同じアートスタイルでありながら不思議と魅力を感じられる。気味悪いアニメーションはむしろ個性に見えて、カートゥーン仕草の大仰にクスッとくる。この発見には感心させられたのだが、それこそが開発者の狙いの通りだったと後で知る。

このアニメは馬鹿にされるようなものではない、むしろ楽しいものだ。というのはArzetteの開発者の言であり、今作はそれを証明したいという思いもあったそうだ。

英語だがソース
【Arzette開発者 CD-iゼルダの「真の可能性」を引き上げる】



こんなところだろうか。

CD-iゼルダはゼルダファンにとっていまだ封印されるべきタイトルだろう。だが、そんな腫れ物にも熱心なフォロワーがいて、Arzetteのような佳作の下地になったことは、興味深い。

知恵のかりものによってCD-iゼルダを初めて知った人は、ぜひこの、親戚の妹みたいな立場の作品 Arzette にも興味をもってみてはいかがだろうか?

現状ではプレイ困難なCD-iゼルダの、その再現された残り香を嗅ぎにいく、そんなゼルダファンのファン活動として見ても面白い試みだと思う。

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