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【Steam】2Dホラーアドベンチャーという名の宝箱 Little Goody Two Shoes
これ
OPもどうぞ
最終的にはやはり、90年代アニメ風へと気持ちは帰っていく。繰り返し見ることになる立ち絵の強烈なクセが良い。イベントスチルの古臭さと柔らかさも良い。全部よい。本当に、本当に、誇張も比喩も抜きにして本当に好きだ。こんなに絵が好きなゲームは生まれてはじめてだ。
※現時点では英語のみ対応している。しかしデベロッパーがスクエニであること、開発スタジオの前作『ポケットミラー ~黄金の夢』は各言語対応していること、これらを踏まえると今後の日本語化は十分にありうる
日常パートとホラーパートの往復
基本はリソース管理の日常パートと、オーソドックスな2Dホラーアドベンチャーの往復。ホラゲーパートはこの手のゲームでおなじみ鬼ごっこや謎解きで構成されている。
さて、日常パートとホラゲーパートは当然シナリオ面で密接でありながら、リソース管理というシステム面でもよく噛み合っている。日常パートにおいてプレイヤーたる下女のエリーゼは常に空腹に悩まされながら、人々からは魔女の嫌疑をかけられてその払拭に苦心する。ホラゲーパートでは体力と正気を削り取る悪意に次々と襲われ、それら安くない負債を抱えたまま日常パートに戻らなければならない。
そのどちらも物語が進むにつれ苛烈さを増す。シナリオ システムともにエリーゼはどんどん押し込められて立場は危うくなっていく。リソース管理の物理的な厳しさは、そのままエリーゼの精神的な厳しさを連想し、プレイヤーも気がつけばそれらを介してエリーゼとおなじ息苦しさを抱くわけだ。
1人のヒロインと、3人のヒロイン
もう一つ面白いことに、このゲームには恋愛要素がある。3人のヒロインと積極的に交流していくことで愛を育んでいくことができる。そう、女性同士の恋愛、百合だ。
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シナリオ面とシステム面の噛み合いはこの恋愛においても発揮される。日常パートにて交流を取るか生活の糧の仕事を取るか、という単純なリソース管理でもある。しかし、それに加えて……といった感じ。
自分はこれを書いている時点では1周クリア済み、最初のヒロインにはローゼンマリネという娘を選んだ。謎めく異邦人のローゼンマリネは、祖母といっしょに旅を続けていたせいか世間知らずで純朴すぎるきらいがある。そして彼女は運命論者でもあり、エリーゼとの出会いも「そう定められたもの」と捉えているようだ。
無垢で人懐っこく運命論者のローゼンマリネ、彼女との交流の果てにあるもの……まあそれは各々の目で確かめてみてほしい。
ちなみに2人目のヒロインはフレヤ、おとしやかな村娘でエリーゼとは幼馴染のような関係。3人目のレーブクーヘンは教会のシスターだが、エリーゼにしばしば冗談を飛ばす一方で気にかけてもくれる。
余談だが、ローゼンマリネの名前はローズマリーの間違いではないかと最初は思えた。エリーゼの台詞中では "Rosmarine" と表記される、一方でキャラ名は "Rozenmarine" 表記なので混乱する。おそらくこれはエリーゼが愛称呼びしているか、名前を覚えていないか。なお英語ボイスではローズマリーと呼び、日本語ボイスではローゼンマリネとはっきり呼んでいる。
クセはあるが隙はないアートの数々
こうした遊びの生地に華々しいデコレーションを当てているもの。それはやはりアートスタイル 演出 音に違いない。90年代アニメ風のキャラデザとOPのインパクトは、何度語り尽くしても飽きない魅力がある。
もちろんそれ以外の部分にもこだわりが光る。背景やUIデザインには手書きの絵画を取り入れる贅沢で、どの場面にいても目が飽きない。さらにはおとぎ話風の愛らしい絵が要所を飾り、たまに実写のお人形が出てきたり、他にもドット絵に、日本語ボイス、歌と展開していく千変万化の催しには最後まで楽しく遊ばせてもらった。
が、最終的にはやはり、いまいちど書くことになるが90年代アニメ風へと気持ちは帰っていく。
この宝箱に詰まった宝石の数々は、何周もして愛で続けたい。自分はまだフレヤとレーブクーヘンが残っているので、当分このゲームに没頭する。
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最後に
2024年11月1日に公式が1周年を記念した記事を投稿した。なんとそこでDLC開発中の発表もされた。とても楽しみだ。
なおその記事は本編のネタバレも含まれているため未プレイの人は要注意すること。
宝石を愛でる時間は末永くいまだ留まるところを知らない。