見出し画像

欧州食品安全機関EFSAによる科学報告書(仮訳)

欧州食品安全機関(EFSA)はこのほど、
"Horizon Scanning Exercise on Preparedness for Future Risk Assessment Requirements and Possible Challenges in Regulatory Science"
「将来のリスク評価要件への備えとレギュラトリーサイエンスの課題に関するホライズン・スキャンによる実践」

と題する科学報告書を発表しました。

この報告書は、将来のリスク評価に対するEFSAの準備要件を分析するとともに、規制科学とそのコミュニケーションにおける課題を取り上げることを目的としています。

本報告書は、6つのテーマ別領域に焦点を当てています。
1.動物福祉とフードチェーンの安全性
2.リスク評価における曝露科学
3.持続可能な食糧システムによる栄養と健康的な食生活
4.革新的な食品の安全性評価
5.持続可能な食糧システムと食品安全
6.EUの食品安全システムにおけるエビデンスに基づくリスクコミュニケーション

本報告書は、これら6つのテーマ分野における新たな、そして今後の科学的進展の概要を示すとともに、科学的関係者やその他の利害関係者が今後の作業で協力すべき分野を特定しています。

本報告書では、分析を行うためにホライズン・スキャニングを実施するとしています。
ホライズン・スキャニングとは、食品環境の潜在的な将来を作用する原動力を考慮しつつ系統的に調べることと定義しています。
この原動力には、関連する科学技術の発展、社会経済的な発展、政治的・法的な発展、および生態学的な発展が含まれます。
ホライズン・スキャニングでは、どのような傾向が合理的に予測され、推進力に関してどのような不確実性が存在するかを検討します。研究者は、ワークショップ、アクティビティマッピング、調査などを利用して、ホライズン ・スキャンニングを実施しました。


テーマ別領域1:
動物福祉とフードチェーンの安全性

動物福祉とフードチェーンの安全性に関わる領域です。
ここで言及された注目すべきトピックは、動物の健康と福祉を損なうことなく、許容可能な抗菌剤使用量の削減レベルを確立する必要性です。

この領域で特定された食品安全の課題には、
・動物福祉の利点と食品安全のバランスを取ること
・病気の発生が生きた動物の輸送に与える影響など
があります。

テーマ別領域2:
リスク評価における曝露科学

EUレベルで規制が強化され、化学物質のヒトへの曝露に関する科学的評価が集約されるようになったことに関連しています。
この領域で特定された潜在的な分岐点は、異なるリスク評価機関の多様なデータセットとデータ解釈を調整することの難しさにあります。

EFSAはまた、曝露評価の集約に伴い、より多くの曝露経路を評価する場合にデータの欠落が生じる可能性が高くなるなどの課題も認識しています。

テーマ別領域3:
持続可能な食糧システムによる栄養と健康的な食生活

持続可能な食糧システムによる栄養と健康的な食生活、および欧州が食糧システムの持続可能性を優先する中で、人間の健康と食品安全に対して起こりうる影響について論じています。

本報告書では、持続可能な食品から新たな汚染物質やアレルゲンが導入されることにより、これまでにない食品安全の問題が発生する可能性について考察しています。EFSAは、このような汚染物質や、非意図的に添加された物質や未知の物質を適切にモニタリングし、研究を行うための手法やデータが不足していることを認識しています。

テーマ別領域4:
革新的な食品の安全性評価

革新的な食品の安全性評価について取り上げています。革新的な食品とは、藻類や昆虫由来のタンパク質、細胞培養食肉など、新規かつ持続可能な食品・飼料の製品を指します。新しいゲノム技術や合成生物学的アプローチなど、革新的な食品品を開発するために使用される技術も議論されています。

本報告書は、多くの新しい複雑な食品の開発により、新しい生物学的および化学的汚染物質、添加物、マトリックスなど、考えられるハザードを体系的にスクリーニングする必要性が生じていることを取り上げています。

テーマ別領域 5:
持続可能な食糧システムと食品安全性

テーマ別領域3で論じたように、持続可能な食糧システムについて検討していまが、栄養と健康な食生活よりも食品安全に重点を置いています。

持続可能な食糧システムの開発に伴って発生する可能性のある注目すべき食品安全のハザードとしては、
・有機肥料による食品供給への感染性物質や有毒化学物質の持ち込み
・都市農業による汚染物質や病原体への暴露
・新しい保存、包装、除菌方法による腐敗や新しい食中毒のリスク
・食品詐欺の増加につながる可能性のある持続可能性に基づく食品表示システムの開発など
が挙げられています。

テーマ別領域6:
EUの食品安全システムにおけるエビデンスに基づくリスクコミュニケーション

・統合的リスクコミュニケーションの枠組みの開発と実施
・研究ニーズの特定
・さまざまな対象者とリスクコミュニケーションの状況間の潜在的差異
・消費者向けのメッセージの適切な作成
について探求しています。

制度的能力、制度に対する国民の信頼、デジタル環境の急速な変化、対象者のコミュニケーションニーズの違い、消費者の優先事項や態度の絶え間ない変化などの課題が明らかにされています。

結論

報告書は、6つのテーマにわたって個々の領域が行っている多くの関連する研究がある一方で、これらの研究とEFSAの活動との関連性を強化する必要があると結論づけています。
EFSAは、ホライズン・スキャンにより、報告書からの推奨される行動に基づいて可能なロードマップを設計することができ、EFSAと利害関係者の協力を強化することで、データが不足している分野における科学的「盲点」の数を抑えることができるとしています。
新しく進化する食品、技術、優先事項の影響はまだ十分に理解されておらず、規制科学が進歩するためには、政策立案者が解決策の特定に向けて努力しなければならないと主張しています。

EFSA Report Analyzes Future Food Safety Challenges

Food Safety Magazine April 29, 2022 Bailee Henderson

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?