一滴の雨粒として、糸を紡ぐー村上春樹『猫を棄てる:父親について語るとき』を読んで
海を越えてやって来た本楽しみにしていた村上春樹さんの久しぶりの新刊は、日本から海を越えてやってきた。
私はいまタイに住んでいる。
そして、この本を読む直前に、私は出産した。
生後一ヶ月の娘を横に、この本を手にしている。親子の縁とはいったいなんだろう。
個人的な人生の大きなイベントをこの本とともに少し考えてみようと思った。
偶然の積み重ねでかたち作られた人間
私は今年三十になった。
大学時代から村上春樹さんの長編に親しんできた私にとって、春樹さんは少し先を行く先輩み