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「ダンジョン飯」の主人公ライオスの魅力を勝手に考察して語る怪文書を公開します

突然ですが、あなたはダンジョン飯、読んでますか?

えっご存じない!?!?!?
飯を食う漫画ブームの皮を被った重厚なファンタジーかつ九井諒子さん(作者)の類まれなる人間観察力と激うま描写による
おもしろ人間達の群像劇で読んだら””感情””にアッという間になれる超名作なのに!?!!?
しかも主人公ライオスはオタクが考察余地の感動で目頭抑える要素が溢れ倒しているというのに??!?!??(なぜならオタクは考察が好きなので)

こちらは”孤独のグルメから始まるメシを食う漫画ブーム”に舞い降りた異端児作品「ダンジョン飯」の主人公ライオス・トーデンについて、ひたすら考察して語るだけの記事です。
ヤマとイミはあってもオチはない。

1. ダン飯を知れ、とりあえずwikiで良いから読め

未読の方、まず前提知識としてニコ百の記事を軽く読みましょう。
流し読みで良いから。

こちらが作品自体のニコ百です。このお目々が相当サイコってるのが主人公我らがライオスくんです。

サムネ同じじゃねーか!!!読みましたね?続けます。

ニコ百の通り、ライオスは本作の主人公で、主人公パーティのリーダー。
この作品はギルドで仲間を探し、魔物とバトルしてダンジョンを潜っていくという「いわゆる中世風RPGのお約束」が根幹ストーリーとしてあります。

そしてライオスパーティはドラゴンに囚われた妹(ファリン)を助けるべく深層を目指すのですが、ライオスは「人間より魔物が好き、魔物の事ばかり考えている」やべー奴として描かれています。
作中でメンバーにパーティリーダーでいいのかこいつ…?ぐらいのことを言われてしまっています。

しかし、ライオスくん(26歳独身)、現代の読者から考えると共感の塊、かつ相当恵まれた才覚の持ち主です。それを説明と考察、やっていきをしましょう。

2. 「オタク」の観点でライオスを考える

読んでいるあなた、何かに「ハマった」ことはありますか?
電車、昆虫、アニメ、特撮、音楽、映画、漫画……など現代なら色々と「ハマる」魅力を持ったコンテンツがありますよね。

この作品では、人間類が敵対する「魔物」という存在がおり、ライオスくん(26歳独身)は幼少期から今に至るまでそれにハマっている魔物オタクです。
犯罪者のプロファイリングに異常に詳しい奴とか、致死量の毒キノコの知識網羅してる奴とか友人にいたりしますよね?
ライオスくん(妹が美人)が現代にいたらおそらくそんな感じでしょう。

ライオスが魔物に対して興味を持ったきっかけとして、「幼少期に親に魔物図鑑を買ってもらった」というシーンがあります。
このシーンの前後では、ライオスが村人の大人たちを信用できなかったこと、学校(と思われるところ)でもイジメらしきものに遭っていたこと、村を抜けて軍に入ったあとも馴染めずに逃げ出したことも合わせて描写されています。

クラーケンの中から出てきた寄生虫に目を爛々と輝かせるライオスくん(26歳独身)

ここ、なんかオタク的に共感できません??
人間とのコミュニケーションがうまくできず、ふとしたきっかけで人間とのコミュニケーションが必要ないモノにハマる

これ何とも陰の者のオタク的じゃない????読んでいるあなたがそういった属性を持っている人なら、これは共感の塊としてズンドコぶつかってくるでしょ……。

魔物図鑑は公式ガイド「ダンジョン飯 ワールドガイド 冒険者バイブル」にあります(宣伝)

ライオスは魔物を倒して深層に進むという目標がありながら、とにかく、魔物の思考、環境、境遇を軸に魔物のプロファイリングを相当なレベルでやっています。というか作中で魔物の新説を見つけたりすらします。もはや学者のライフワーク。

そして興味が高じてついに魔物食に手を出します。ここがダンジョン飯第一話の始まり。

魔物の生態を熱く説明するライオスくん(妹は糸目キャラ)

「この毒キノコうまいらしいよ!!ちゃんと毒抜きするから大丈夫!!」とか言い出す友人をどう思いますか?普通に距離置くわこいつ…ってなりますよね。
そう、ライオスくん(妹は23歳恵体)は今もコミュ障オタクのまま成人しちゃった奴なんですよ。
こういうイビツさ、オタク的な人間ならどんな人にもありますよね。
ダンジョン飯を読み進めるごとに「こいつおれと似てるなあ……」と自分はめっちゃ思うようになりました。

3. 「リーダー」の観点でライオスを考える

ライオスは作中のメンバーから基本的にリーダーの才覚がない、もっと自覚して鍛えろ、と言及されています。
実はこの題材について、素晴らしい分析をされている方が既におられます。

詳しくは連ツイを読んでほしいが、他の上手くいってそうなカブルーパーティよりも成果を上げ、どのチームよりも深層にたどり着くのが早いなど、ライオスパーティは一番の成果を上げているんですよ。

※カブルー:魔物が嫌いで人間に強く興味がある”人タラシ”。ライオスの対極みたいな奴。ルックスもイケメンだ

元モブキャラなのにどんどんイケメンに描かれてくるカブルーくん

これはなぜか?と考えたときに、主人公補正のご都合主義やろそんなん……の一言で済ませるには惜しいのがこの作品の魅力です。

リーダーに必要な素質とはなんでしょう?
人望があること?コミュ力があること?強い目的意識があること?シンプルに実力が強いこと?誠実であること…?

上記のどれも状況によっては正しいと思うが、
この作品の「選択が生死に関わるほどシビアなチーム」のケースなら、
i. 発言に決定力と責任感があること
ii. パーティメンバーを尊重して頼れること

この2点がものすごく重要だと思っています。

少年…ャンプ代表作品の決断力に優れたリーダーのような人

ライオスが第一話で言っていたことですが、
妹を早く助けるために最短ルートで進む。そのためには途中で魔物を狩って食料にしながら進むぞ
こんなん普通メンバーに言えます???そして何かあったときの責任を取れるか???(念の為、本作品は魔物を食うなど"禁忌"な世界観です)
あなたが例えばロックバンドのリーダーだとして
今日から楽器を全部現地調達で対バン相手に借りてライブやろう。そうすれば運搬費もかからないしツアーもお金をかけずにできるぞ」と言えますか??普通言えないですよね……。

怒髪天のギタリストから借りたギターをフェスで投げる北海道の伝説バンドマン(故人)

でもライオスはそれに近いことを言っていて、
●自分で魔物を捕まえる(言い出しっぺがやる)→
●本の見よう見まねで調理してみる(発言を有言実行する姿勢)→
●みんなの前に自分で食べて毒味してみる(責任を取る)
という「i. 発言に決定力と責任感があること」につながる行動をちゃんとしているのです。
すると料理の稚拙さに様子を見かねたセンシという、魔物の料理に詳しい変な人が助けに来てくれる……。(まるで間違いをツイートすると引用RTで集まってくる正義マンですね)
そして、ライオスは見ず知らずのセンシの意見をちゃんと聞き(相手を頼れる)、料理を作ってくれた事に対する感謝をしている(相手を尊重する)。魔物料理というよくわからないものを作る相手に対して、ですよ。そして意気投合し、メンバーに引き入れてしまう。
ii. パーティメンバーを尊重して頼れること」はここからかなり見ることができます。

魔物料理に定評のあるイズガンダのセンシさん

読み進めるとわかりますが、ライオスはこの2点をかなり忠実に守ろうとします
しかしライオスは基本コミュ障なのでたまにそれをミスするんです。
でもそのたびにちゃんと謝って反省して、この2点の原則を決して曲げようとしない。コミュ障で人間が苦手なのに、ちゃーんとリーダーの素質があるんですよ。
(ちなみにメンバーそっくりに化けるシェイプシフターをライオスが見破る回、ライオスのこの素質が光る神バウトなのでマジ読んでほしい)

な、なんだってー!?みたいな構図のセンシ達(シェイプシフターの化けた姿)

生死が関わることを「決定するエネルギー」と、「周囲をちゃんと頼ることができる勇気」があるリーダーがいるので、連ツイにある通り一番バランスが良いのは実はライオスパーティ……というわけです。
基本的に人間、自分でなにかを決定するってマジでエネルギー要るし無意識に避けちゃうんですよ。他の人にも影響するなら尚更。
今日ご飯何にする?といわれて「何でもいいよ」と返しがちなあなた、もしかしたら決定力とテストステロンがどんどんと枯渇してるかもしれないよ……。

(余談)対象的にカブルーは上のとおり"人タラシ"力は凄まじい。
メンバーのリンと恋人?関係を作って仲間とし、他メンバーには「自分の出身地が魔物で滅ぼされたことから、二度と同じような状況を作りたくない」という崇高な目的で尊敬を得ており、ギルドの噂では最も早く深層に到達するパーティではないかとも云われている。
しかし、彼は自分の実力に驕りがあるので「カブルー本人は周囲の人間を自分より下に見ている」。無意識かもしれんが。
なので実は「ii. パーティメンバーを尊重して頼れること」これが全くできていないし、パーティメンバーにもそれが伝わってしまっている(あいつ人タラシだから…みたいに言われてる)。
そのため、カブルーのパーティは実は信頼関係があるようで非常に希薄であり、ダンジョンの浅い階ですぐに全滅してしまうんです。(作中では二度全滅している)

彼も作中で成長を見せていくことになるが、それはまた別のお話

4. 「生きづらさ」の観点でライオスを考える

ライオスを共感できる点のあるオタクだと言いましたが、ライオスは人との距離の問題で「生きづらさ」をかなり抱えています。
誤解を生みたくないので大っぴらには表現しませんが、ライオスを現代人の感覚に置き換えると、彼は以下の点でかなり、対人コミュニケーションで「生きづらい」タイプの傾向があります。

一. 魔物について一つの本を擦り切れるまで読み込み、その内容に異常に詳しい部分
二. 自分の理想の魔物など、独特のこだわりがある点
三. 想像力の「質」が他メンバーとかなり違い、自分が見たり予想していた以外の出来事や、成り行きを想像することが苦手な点
四. パーティメンバーの気持ちの機微を読み取れない点
五. 過去のメンバーの恋仲や恋慕を知らなかった(全く興味がなかった)点

時代背景的にはコミュ強やコミュ障、強者男性や弱者男性の概念などない中世的なものとして描かれているはずなので、おそらく当時は「個性」の一部として考えられていると思うが、現代の感覚からするとライオスは「生きづらさ」のポイントがかなり強いです。
自分もこの傾向があるので「共感」だけでなく、ライオスを同一視して「感情移入」してしまうポイントが多くあるんですよ。
考えるに、作者はライオスの人物像を意図的にこのように描いている気がするんですよね。

ライオスにめちゃくちゃキレてる過去のメンバー

そしてライオスも、この特性で被る不利益を克服するため、穴が開くほど読んでいた魔物図鑑の内容の間違いを認め、メンバーの信頼を得るために気持ちをなんとか読み取るべくコミュニケーションを自分から取ろうとし、ゆっくりではあるが彼は視野が広がっていき、作中で自分の欠点を無くせなくてもなんとかカバーすべく、人間的な成長を見せていくんですよ。
そこがまた良いのだ……。

人面カボチャを食わせようとするライオスくん 人の心とかないんか?(禪院直哉©)

(余談)ちなみにパーティメンバーのマルシルもかなりおっちょこちょいタイプな「生きづらさ」的部分が強く描かれており、それが元でよくトラブルを起こすし、最新話付近ではそれが大爆発するしなかなか見ていて辛い部分も多い……。
でもそれを補って余りある魅力があるのが彼女。

ブレイクダンスに優れた宮廷魔術師の女

5. 結局ライオスの魅力ってなんだ?

自分が思うに、以下の点に要約できるんではないかなと思っています。

■陰の者のオタクが共感する「性質」を持っていること
■リーダーたる「素質」があって、人を惹きつけること
■現代に置き換えたらコミュニケーション的に困りうる「特性」を持っていて、本人なりに苦悩していること
■それをなんとか補おうとする努力をしており、作中で人間的に「成長」を見せること

まだまだ語り尽くせないほどライオスの分析や考察はあるが、あまり熱を込めすぎるとライオス同様に引かれてしまう事を自分はこの作品から学んだんで、この辺で……。

記事中にもちょこちょこ書きましたが、他の登場人物も魅力たっぷりに描かれていて、その人々の絡みも本当に面白いです。
そして飯要素が少なくなってきたな……と思った頃にすかさずオタクが大好きな「タイトル回収」を入れてくる九井諒子さんの技量よ。
最新12巻でもそれが見れて最高でした。

作品屈指の決めゼリフがこれ

最後に。
アニメ化本当に楽しみです……待ちきれないけど、いつまでも待ってますね。

TVアニメ「ダンジョン飯」公式サイト


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