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【散策】田んぼのド真ん中で川瀬巴水の新版画を求めて

川瀬巴水という新版画の作家をご存じだろうか?

海外では、川瀬巴水(Hasui)、歌川広重(Hiroshige)、葛飾北斎(Hokusai)と並び称される版画家、3Hとして知られる。
そして、江戸時代に流星を誇った浮世絵を明治・大正時代に復活させ、海外の絵画の技法を組み合わせて進化させたのが新版画である(たぶん)

川瀬巴水の新版画は、旅先の情景を版画に起こしたものが多く、一人旅が好きな私の心に刺さった。また、有名な観光地を芸術的に書き上げるのではなく、川瀬巴水の版画は何気ない人の営みを切り取り、どことなく静けさ侘しさといった印象を受ける。それ以外にも、青というより群青色・藍色に近い色合いをよく使い、夜や雪の情景を題材にした作品も多い印象だ。

法師温泉に飾ってあった川瀬巴水の版画(うまくは撮れていない…)

一方で、写真の構図に近い感性も働かせていて、海外の絵画の良さも取り入れている。そういった点が海外でも評価されるゆえんなのだろう。
こういった点から、文明開化の時代において、西洋の良さも取り入れながらも、日本人らしさを版画に落とし込んでいるから、私は好きだ。

前置きが長くなってしまったが、そんな川瀬巴水の特別展が「稲敷市立歴史民俗資料館」で開かれると聞き、行くことにした。行くことにしたのはよいが、「ど、どこ!?」と思って Google Map で調べてみた。茨城県のそれも田んぼのド真ん中にある資料館で、最寄り駅から1時間半かかる(それって最寄りとは言わないのでは?というツッコミは、なしだ)

下総神崎駅から1時間半、佐原駅まで2時間(緑の箇所が多い)

珍しい版画も展示されるとのことで、川瀬巴水ファンとしては逃すわけにはいかない!という半ば使命感で行くことにした。また、資料館から2時間歩けば水郷の街として知られる佐原まで行けるので、合わせて観光してまわろうという思惑もあった。

当日は朝5時に起床し、JR成田線で銚子方面の電車に乗っていく。下総神埼という駅で降りて、そこから1時間半歩いていく。駅前こそ民家が立ち並んでいたが、しばらく歩いていき、川を渡って千葉県から茨城県に入ると、一面田んぼののどかな風景に切り替わる。

寒くもなく春を感じさせる陽気で、利根川が近いからか、朝靄が立ち込めていた。清々しい気分で気持ちよく散歩気分を味わうことができた。

我孫子駅にて(この地点ですでに霧が立ち込めていた)
下総神埼の朝靄(シネマ色で撮ったので、清々しい感じが出ていないが…)

ずうっと歩いていくと、周りは田んぼだらけなのだが、何やら立派な建物がひょっこり見えてきた。「おっ、ここだな」と思い、敷地に入っていった。結構な車が止まっていたので「川瀬巴水の人気はすごいなぁ」と感心していたのだが、そこは資料館ではなく中学校だった。

左手に見えるのが資料館と中学校

カメラを持って敷地に入っていったので、完全に不審者と勘違いされると思い、足早に敷地を出た。中学校の隣が目的地の資料館だった。

川瀬巴水の特別展の看板が表に見えた。場所が場所だけに、他に来館者はいなかった。なお、入館料は無料である。2階が目的の展示会をやっている場所で、受付?のおじいさんが立っていてお互い「おはようございます」と挨拶した。

展示室は薄暗く少し版画が見えにくかった。美術館というわけではないので、展示に慣れてないのだろう。そこは御愛嬌だ。重要な版画の方だが、今まで見たことのなかった川瀬巴水の版画を見ることができて満足した。美術館蔵のものと個人蔵のものが両方並べてあることもあり、お互いを見比べてみるのも面白い。版画ならではの楽しみ方だ。

また、茨城県との関わりも書かれていて、初めて聞いたエピソードも知ることができた。あとでじっくり見返すために図録も購入した。

帰りがけにアンケートをお願いされたが、書こうと思って躊躇してしまった。過去に書いた人がいなかったからだ。そのまま帰ってきてしまったが、かなり力を入れて展示会を開いただろうから、アンケートに回答すればよかったと少し後悔した。

稲敷市立歴史民俗資料館も良いのだが、ご覧の通りアクセスが難点だ(川瀬巴水ファンという方にはオススメしたいが)川瀬巴水の新版画を見たい初見の方には、これから開催される「川瀬巴水 旅と郷愁の風景」をオススメする。

資料館をあとにして、佐原まで歩き、観光して帰ろうと思った。河川敷をずうっと歩いていくと、まばらではあるが菜の花が咲いており春を感じさせる。暖かい風が吹いていて、春の陽気を感じさせる。いや、気温は20℃を超えていたので、むしろ暑いくらいだった。佐原まではわりかし遠く、資料館から2時間ほど歩いた。

土手沿いに咲く菜の花

お昼近くでお腹も空いていたため、パッと目についたチェーン店らしいラーメン屋(伝丸という名前)に入った。その店のオススメらしい濃厚タンメンを食べた。野菜がたっぷり入っているのだが、野菜らしさが感じられ、他のチェーン店とは一線を画する一品だった。思った以上の美味しさだった。地元にほしい。

かなりの距離を歩いたため、佐原につく頃には疲れ果ててしまい観光するどころではなかった。結局、観光せずにそのまま帰ってきた。佐原にはまた別の機会に来よう。

佐原駅、また来よう

最後に…、日記を書くにあたって写真を振り返っていたのだが、写真があまり撮れていないことに気付いた。実は、VLogを試しに初めて撮っていたせいで、写真が少なめになってしまっていたのだ。正直言うと、動画をスクショに撮ってこの日記に使っている箇所も多い。

ジンバルを使って撮影しているとなんだか恥ずかしい…

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