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【ライブレポート】『IMALAB NEWCOMER PLAYLIST LIVE #03』2022年12月8日 at 下北沢Flowers Loft

ユニバーサルミュージック/EMI Recordsの音楽制作ディレクター・今村圭介が主宰する、新人アーティスト発掘・発信プロジェクトIMALAB(@imalab2021)。これまでにも注目の新人アーティストをピックアップしたライブを開催してきているが、2022年6月15日に実施した第2回に続く、第3回目となる『IMALAB NEWCOMER PLAYLIST LIVE #03』を12月8日に下北沢Flowers Loft(@Flowers_Loft)で開催した。


出演アーティストは以下の4組となる。

Norenn(@Norenn_band
ウマシカて(@Umashikate____
GAMBS(@gambs_tokyo
夜鷹の星(@yodaka_official

ウィズコロナ時代、ライブハウスでライブを見る習慣がない若いオーディエンスも増えているなか、ライブハウスに足を運ぶきっかけをつくりたいという想いに賛同した下北沢Flowers Loftの全面協力で、第1回、第2回に引き続いてチケット代金は無料となっている。

本格的な寒さが訪れた師走の下北沢をアツくさせる、気持ちのこもった4組のライブを振り返ってみよう。

Norenn

トッパーを務めるのは、Norennだ。小山空良(Vo/Gt)、池田こうせい(Gt)、ブルエン(Dr)、そしてサポートベースにギギ(えーるず)を迎えての4人編成。

ステージに現れると「よろしくお願いします!」という小山の挨拶から1曲目「生活」でライブスタートだ。オープニングにピッタリの疾走感あるナンバーで、軽快なギターサウンドに加えて池田の激しいアクションで、イベントの先陣を切る大役として会場に熱を伝播させていく。

photo by おおつぼゆうガ

2曲目となる「It's gonna be alright」は、跳ねるリズムが楽しいポップな曲。笑顔たっぷり、表情も豊かな小山。そして池田はギターだけでなくリップシンクでも楽曲参加。目をぎゅっとつぶってのギターソロでも彩りを添える。

「愛をあげるよ」では、より歌を聴かせる演奏にスタイルを変え、池田とブルエンによるコーラスがさらに小山の歌を引き立たせていた。

《君を乗せた終電にも》
という歌詞の部分を
《下北沢Flowers Loft、ありがとうございますよろしく最後まで》と、今日のライブ仕様にアレンジするサービス精神もみせる。

photo by おおつぼゆうガ

最近3人から4人編成になったということで、4人っぽさが感じられるセトリに変えて臨んでいるという彼らのライブは、後半戦へ。

「みなさまにラブソングを届けます」という小山の言葉と共に披露した「ダーリン」は、メロディや演奏、キーの変化など展開も豊かでカラフルな一曲。続く「礼を言わなきゃね」では、池田が積極的にステージ前方でギターをプレイ。ここまで聴いて強く感じるのが、ちゃんと歌詞を伝えようとする小山の歌唱だ。音源だけでなくライブでも各フレーズがしっかり耳に届いてくる。

photo by おおつぼゆうガ

小山の歌声とギターで始まった「遠い葵い光」。伸びやかなギターリフに丁寧なドラミングも耳に残る。下北沢や西船橋といった駅名が登場する歌詞は、自分が知るその街の景色を浮かび上がらせてくれる。目の前で奏でられる曲から新たな光景が広がる、そんな体験ができるのも音楽の魅力のひとつだ。

あっという間の30分。小山は「最後、新曲やって終わります」と告げると、ワンツースリーフォー!のカウントから「煌めき」が始まった。ギギのベースがグルーブを生み、疾走するブルエンのドラムが曲に勢いをもたらす。小山の飾らない、生身の熱唱に、池田のどこか浮遊感あるギターサウンド。リズム隊によるコーラスもあり、それぞれのプレイをぶつけ合ってバンドとしての音を放つ。

7曲の中に今のNorennを詰め込んだライブに、会場からは大きな拍手が送られていた。

photo by おおつぼゆうガ

セットリスト
01.生活
02.It's gonna be alright
03.愛をあげるよ
04.ダーリン
05.礼を言わなきゃね
06.遠い葵い光
07.煌めき

ウマシカて

2番手に登場したのは、ウマシカて。フクダチナツ(Vo/Gt)、吉田てざわり(Ba/Cho)、おさかな(Dr)によるスリーピースバンドだ。

ステージに登場すると、特に言葉を発することもないままライブスタート。「不幸な2人」の冒頭を歌った後で「ウマシカてです、よろしく!」とフクダの挨拶を差し込み、パンチもあって強い歌声を轟かせていく。荒々しいロックなサウンドが、強烈なインパクトを与えてくれるバンドだ。

photo by Megumi Kato

「拝啓、クソ男様」という強烈なタイトルの曲では、スリーピースのアンサンブルがピタッとハマるイントロから、勢いそのままになだれ込む構成が気持ちいい。

ライブ演奏では中心に立つフクダだが、MCではベースの吉田が主役を担っているようで、彼女がトークを牽引する。

「すごく緊張しています。なぜなら、普段はMCを事細かに詰めて考えて来てるんですけど、さっき到着して何にも詰められてないので」と準備不足を打ち明けると、「みなさん気まずそうですね。お客さんたちは気まずそうな目をこちらに向けて、こちらだって気まずいんですよ!」

photo by Megumi Kato

MCの際、たまに観客が感じる(バンドメンバー、今気まずいだろうなあ)という感覚の答え合わせができたようなトークが笑いを生み、結果として気まずさが解消される、ある意味巧みな話術で場を温めると、3曲目「ずっと」へ。

コードを弾きながら歌うフクダの後を追うようにリズム隊も合流する。直前のトークから雰囲気一変、フクダの揺れる歌声が切ない歌をより寂しく演出していた。

おさかなのバスドラが刻む四つ打ちのリズムで再び会場の空気を変えた「バンドマンの君へ」では、観客からのハンドクラップもあり、ステージとフロアの距離がグッと縮まった。

photo by Megumi Kato

5曲目の「『酔った。』」は、フクダのパワフルなボーカルと、ピックから指弾きに変えて丸みを帯びる吉田のベースラインが重なって剛と柔の間、ちょうどよいハーモニーが誕生。そのまま音を切らさずドラム繋ぎで「1998」へ。細かく刻むおさかなのドラムが曲の攻撃性を強めていく。yonige、クリープハイプ、マイヘア、back numberといったバンド名頻出のナンバーで、ロック好きはついついニヤリとしてしまいそうだ。曲の最後にフクダが叫ぶ《幸せになってんじゃねえよ!》のセリフは、本来この曲の歌詞にはない言葉であり、「拝啓、クソ男様」のラストに置かれている歌詞でもある。

2つの曲で放たれたこの言葉に、ウマシカての世界観が垣間見れるような気がした。

最後のMCで吉田は、結婚式に出席するため次回ライブでは、サポートを迎えて実施すると発表。「3年彼氏いないし、他人の幸せを祝えるか不安」と本音(?)を吐露しつつ、ラストナンバー「よん」を披露した。

ギターロックな音に乗る、耳の奥に突き刺さる力強い歌声。そして時に切なく、時にユニークで生々しい歌詞。加えて吉田の独特のMC。ウマシカてにしか作れないステージをしっかりと表現していた。

photo by Megumi Kato

セットリスト
01.不幸な2人
02.拝啓、クソ男様
03.ずっと
04.バンドマンの君へ
05.「酔った。」
06.1998
07.よん

GAMBS

本日3番手は、Fumiya(Vo/Key)、Sukemasa(Gt)、Kanta(Ba)、Shimon(Dr)からなるGAMBS(ギャムズ)だ。しかしステージに現れたのは3人だけ。諸事情によりSukemasaを欠いた状態でのライブとなった。

「BLUE HOUR」で幕を開けたライブは、Fumiyaの軽やかな動きが目を引いた。ハンドマイクを握り、ステージセンターでその柔らかく滑らかな歌声を届けていく。Shimonの叩くハイハットが、なんともお洒落な雰囲気を作り出していた。

photo by おおつぼゆうガ

Fumiyaが「GAMBSです。よろしくお願いします」と短く挨拶すると、2曲目の「This feeling」へ。今度はハンドマイクからマイクスタンドスタイルへと形態を変えて歌う。メインとなる同期のシンセ音、リズム隊による生音、そしてFumiyaの歌声とのコンビネーションが、地に足をつけつつどこかたゆたうような不思議な感覚を味わわせてくれる。

「一緒に揺れましょう」という言葉と共に演奏された「LULL」でFumiyaは、ステージ前方まで出てきて観客に歌いかけると、途中からキーボードを弾きながらの歌唱で新たな展開へと繋いでいった。

MCで来場者や企画者への感謝、そしてメンバーがひとりいないからライブに出ない、という選択はなかったという彼らの想いを語り、次の曲「NOVA」を演奏する。まろやかさを帯びた歌声を放つFumiyaは、ボイスエフェクトも駆使して表現力豊かなパフォーマンスを見せてくれる。

photo by おおつぼゆうガ

キーボードを弾きながら歌唱する「raindrops」では、エレクトロながら温もりを感じさせるシンセ音が会場を包み込むなか、ブレイクを入れてのメリハリも作り出す。さらに終盤でキーを上げ、曲の熱を上昇させるという印象的なシーンも。

ライブも残すところあと2曲。Shimonの四つ打ちドラムから始まる「Weekend」は、Kantaのベースが良いアクセントとなるダンスナンバー。赤と青の照明によるアッパーな演出ともあいまって、思わず体が揺れてしまう。Fumiyaは、ハンドマイクでの歌唱とキーボードによる歌唱&演奏、ふたつのスタイルを何度も交互に繰り返し、動きのあるステージを展開。

photo by おおつぼゆうガ

「次の曲で最後になります、GAMBSでした! また会いましょう」という挨拶を経てのラストナンバーは、IMALAB NEWCOMER PLAYLISTでもピックアップした「DRIVE AWAY」だ。ハンドマイクで身軽に歌うFumiyaからは「Flowers Loft、最後盛り上がっていきましょう!」の言葉も飛び出し、Kantaのベースアクションも激しさを増していった。

ギターを欠いた3人編成でのライブにもかかわらず、自分たちの世界をしっかりと作り出し、最後までやり抜いたGAMBS。Sukemasaが加わった完全体での彼らのライブも改めて観てみたいと思わせるステージだった。

photo by おおつぼゆうガ

セットリスト
01.BLUE HOUR
02.This feeling
03.LULL
04.NOVA
05.raindrops
06.Weekend
07.DRIVE AWAY

夜鷹の星

4番手、今日のトリを務めるのは、中村集(Vo/Gt)、安川竜の介(Gt)、芳原正悟(Ba/Cho)、西山恭平(Dr)という4人による夜鷹の星。

冒頭いきなり中村が「さあ! 最後のバンド! 埼玉県発ロックバンド! 夜鷹の星です最後までどうぞよろしく!」と豪快に叫ぶと、4人の爆音が轟いた。

安川、芳原の両翼によるコーラスと共に奏でられる、これぞ“ザ・ロックバンド”なギターサウンド。ダメージジーンズにいくつかボタンを外した白シャツをまとった、こちらもまた“ザ・ロックスター”な中村。そんな正真正銘ロックバンドとしての、挨拶代わりのオープニングナンバーは「明星」だ。

photo by Megumi Kato

安川の爆裂なギタープレイやステージ前方でパフォーマンスする芳原など、冒頭から全力を注ぎこめば、フロアではそんなライブを、手を上げながら楽しんでいるファンの姿も。

続く「flare」では、タッピングでの演奏も駆使する安川の音色鮮やかなギターリフが映える。歌やギターなど、どこで何を目立たせるのか、そのバランスを考えながらの構成でキッチリと主役を引き立てていた。体を使って歌詞を表現したり、《君》と歌うところでフロアを指さしたりするなど、より立体的にライブを作っていく夜鷹の星。

曲が終わって、そのまま西山のドラムソロで繋いで「春」へ。Aメロ前半ではリズム隊のみの伴奏で歌い、Aメロ後半でギターが加わってグッと曲を盛り上げる。

photo by Megumi Kato

《でも時には横に道外れてもいいんだよ》と歌うパートで中村は、西山を向いて演奏していた芳原の肩を叩く。さらに「さあ、ギター」と呟くと安川の背中を押してステージ前方エリアへと促し、そこからギターソロが始まった。ライブ中、メンバー間で積極的かつ直接的にコミュニケーションを取っていくのが夜鷹の星スタイルかもしれない。

普段はあまり喋れないんですが、と前置きしながら、中村は「バンドなんだから音楽だけやって帰ればいいやと思っていたんですけど、あらためて呼んでくれる方、観てくれる方がいて、こうやって演奏できること、ホントに嬉しく思っています」と話す。

さらに「自分たちがライブのトリを任されて、できることは自分たちの一番いいステージをして帰ることだと思っているので、残り2曲なんですけど本気でぶつかりにいくんで、受け止めてください」というメッセージを届けた。

そんな、トーンは冷静だが内容は激アツなMCに続いて披露されたのは「水泡ニ帰ス」。イントロからの抑えのきいた歌と演奏は加速への準備とばかりに、中村はサビで一気に声を張り上げて楽曲はトップギアへ。さらには芳原のスラップベースに安川の流麗なギターソロが観客の目と耳を惹きつける。

photo by Megumi Kato

「あんたのためにある。この歌。この音もこのステージもこの時間も、全部あんたのためだ! あんたがいないと意味がないんだ!」

中村はこう叫ぶと、「美しい夜を、いつまでも!」と告げて最後の曲「このままずっと夜が明けずに」へ突入。芳原によるコーラス、安川のギターソロ、さらに歌詞の一部を台詞のように歌う中村と様々な要素を詰め込んで夜鷹の星を表現し、全5曲を演奏し切ってステージを去っていった。

すでに照明が灯り、小さくBGMも流れ始めたなかで、ファンは手拍子を続ける。その想いに応えて夜鷹の星は再びステージに。

中村は「残っていただいてありがとうございます。最後に1曲、めちゃくちゃカッコいい曲やって帰ります」と話すと、アンコールとして「ワスレナグサ」を披露。ギターサウンドを大事にしていると感じるロックナンバーで、安川のギターソロ中には中村と芳原がフロアに背を向け、西山を見ながら演奏するなど、4人それぞれがステージの上で躍動する。

出演バンドすべての気持ちを代弁するかのような熱いライブを繰り広げ、『IMALAB NEWCOMER PLAYLIST LIVE#03』は有終の美を飾った。

photo by Megumi Kato

セットリスト
01.明星
02.flare
03.春
04.水泡ニ帰ス
05.このままずっと夜が明けずに
EN.
06.ワスレナグサ

知り合いのバンドだから声をかけたわけでも、ひとつの音楽性をテーマにして集めたわけでもなく、「IMALAB NEWCOMER PLAYLIST」にてピックアップしたアーティストたちをブッキングした今回のイベント。

各バンドのキャラクターはもちろん、音楽性もバラバラな4組が織りなす、ここでしか味わえないライブはまさに今夜限りのスペシャルなステージになったのではないだろうか。

コロナ禍での制限も徐々に解け始め、少しずつ音楽がライブハウスに戻ってきている今。サブスクやTikTokでチェックして、これから初めてライブハウスに足を運ぶという若い世代。空白の時間を経てまたライブを観に行こうとしている音楽ファン。厳しい制約のなかで工夫しながら耐え続けてきたライブハウスのスタッフ。そして、やっと自分たちのやりたいことを全力で表現できるとワクワクしているアーティストたち。

そんな、音楽とライブを愛する人々が集うライブハウスという場所には、今夜の下北沢Flowers Loftのように、キラキラ光るダイヤの原石のようなアーティストがたくさんいて、毎晩どこかで「あなたに届け!」と必死で歌っている。

彼ら、彼女らの輝く姿を観に、ぜひライブハウスへ足を運んでみよう。あなただけの、とびきりお気に入りの存在と出会えるかもしれないから。

■photo by Megumi Kato(@meg_livephoto__)/ おおつぼゆうガ(@yugastyle_)
■flyer direction by Megumi Kato(@meg_livephoto__)
■text by ほしのん(@hoshino2009


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