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親の心と子の心 【息子への手紙】

NHKの朝のドラマ「走らんか!」は面白い。

先日父親の博多人形師の前田米吉が息子の汐を殴ってしまった。
「俺は人形師になる。そのため美術大学に行くが、お金は繁兄さんに出してもらうから心配せんでよか」と言った直後のことです。
殴られた息子はわけが判らず、「何で殴るね」と怒るし、父親は何も言わずに仕事場に去ってしまって。残った家族は顔を見合わすだけ。

これを見ていた私の家族も大変です。高三の息子は怒り出してしまい、「何て嫌な親なんだ」と言う。私が「俺も、あのお父さんと同じ気持ちだよ」と言うと、息子はさらに怒っています。母親が「お父さんを馬鹿にするからよ」と言うと、息子は「迷惑かけないんだからいいじゃないか。親の勝手だよ」と言います。
「お前は親心が判っていない。自分の食べ物を半分にしても子供の為に応援したいのが親心だよ」と言うと、「そんな親は軽蔑する」と言います。

この後ドラマがどう展開するか判りませんが、親心と子心はなかなか通じ合わないもののようです。

実は、我が家でも東海大学の建築科に行く息子のことで論争中でもあります。「学校の近くにアパートを借りて、車で通学したい」と言う息子。「青春を謳歌したい夢いっぱいの息子の気持ちは判るが、そんな贅沢をさせる余裕もないし、そんなやりたい放題のことさせたらバカ息子を育てるようなものだ」と思う親心が対立します。

結局のところ、「車は買わないが、春休みに免許を取る」ことになり、「アパートは月額10万の仕送りの中で支払えるアパートを自分で探す」ことになって、自分で3回も行って、4万円のアパートを契約してきました。
「親から出してもらえない」となると、「じゃあ、自分でアルバイトをしてバイクを買う」とか、「携帯電話を買う為にアルバイトをするから、学校はサボる」とか、「自分で頑張るんだから、何をやったって親に関係ないだろう」とか。まあいろいろと息子からの言葉が飛び出してきます。

父親の私としては「息子がやりたいことを見つけて、それで生きていけるようにする為の援助はできる限りやってあげたい」、「しかし、親を当てにし過ぎて自分でアルバイトするのだから何をしてもよいだろう」というのも困るわけです。アルバイトをして自分で稼いだ金で何かをすることはよい経験だけど、そのために学校をサボっていたのでは、息子の将来が心配です。高三の息子にとって「今一番大切なことは何か」、「今一番やらなければならないことは何か」「一年先」「十年先」の自分を想像してよく考えると、結論が出るはずです。

大学生活の最初の夏休みを充実させたかったら、春休みの内に運転免許を取ったほうがいい。今バイトで時間をつぶして、夏に免許を取るより、夏に存分クラブ活動できるほうが楽しいし、車でバイトすることも、友達と車で遠出することもできて充実する。

例えば、お金がないように見える父親でも、子供の為なら少々の蓄積は吐き出してくれるでしょう。最初から父親に相談もしないで、「バイトするから」とか「兄に出してもらうから」と言うのは父親に対して失礼でしょう。「自分でバイトするから」と父親に相談し、不足する分を兄にも相談する、そこまでするほど「どうしても大学に行って勉強したいという思いが強いかどうか」、それが一番大事なことなのではないか、と父親の私は思います。 

さて、NHKの「走らんか!」はどうなりますか。我が子の行く末とともに、楽しみです。

頑張れ子供達よ!
親父を踏み台にして飛んで行け!

そして親父の心も少しは判ってくれると、それだけで嬉しいんだけどね。

( 1996年 2月24日 記)


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