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ファミコンと勉強 ― 大学へ行け! #① 【息子への手紙】

「勉強なんて嫌いだ!」
「お母さんがうるさく言うからヤル気がなくなる!」
「お父さんは一番になれって言うけど、そんなの無理だよ。俺は頭が悪いんだから」

そんなことを言いながら、少し勉強し、少し遊んだ君の一学期末の成績は、驚くほど悪かった。アメリカから帰郷して遊び狂っている長男を見ながら、勉強しなければならない君には同情の余地はあるが。

「お兄ちゃんには文句は言えないし、お父さんからのご褒美はもらえないし、お母さんはガミガミ言うし、面白くないよ!」 
そのうえ、お母さんはゲーム機のファミコンまで隠してしまった。
「勉強しなさい!」
「ファミコン出してよ!」
と、お母さんと太爾(たいじ)の間で戦争が始まった。

長男はといえば、自分が遊び狂って次男の勉強を邪魔したことは棚に上げて、「ファミコンなんてくだらないものやめろよ!」と、お母さんの味方をしている。

その内、末っ子の向爾(こうじ)が私の横に来て、
「お父さんに相談があるんだけど」と、耳元でささやく。
「お兄ちゃんにファミコン出してあげてよ。そうしないと、向爾の目が良くなるまでダメだって、お兄ちゃんは僕に当たってくるから困るんだ。僕はファミコンやらない。お願いだから」と。
とうとう、それまで知らんふりの私のところに戦争の波が押し寄せて来た。

「ファミコン出してよ!」
「遊んでもいいが、やることをやってから言えよ!」
「やったけど運が悪くて失敗したんだよ」
「失敗しないように十分勉強しないからだろ!」
「そんなこと言っても俺は頭が悪いんだから無理だよ!」
「お兄ちゃんのせいもあるが、お前は試験前にダンスやったりファミコンやったりで遊んでばかりいたじゃないか。やることをやってから言えよ!」
家族の会話は段々厳しくなっていく。

「自分のやりたい放題にしたいのなら、自分で働いてからにしなさい。学校に行ってる間は親の言うことを聞きなさい!」 
「判ったよ。自分で働いてファミコン買うから、仕事を探してよ。自分で買ったら一日中やりまくるからな!」
「馬鹿なこというんじゃない!」
戦争はますます深みにはまるだけ。

「なあ、太爾! 何の為に人は学校へ行き、勉強するのだろうか。どうして皆が苦しい受験勉強をして、いい高校、いい大学に行こうとするのだろうか。君と同じで、勉強が好きな人はいないと思う。好きな女の子と会うのも我慢して、ダンスもファミコンも制限してどうして勉強するんかなぁ?」 

皆、自分の為じゃないのか。


ファミコンと勉強 ― 大学へ行け! #② へつづく


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