見出し画像

【#16】異能者たちの最終決戦【青田コウジ】

青田のもとに今泉東都から連絡がきた。麻里と紗耶香が直接会って話したいと。
(よくやった東都君!)
と青田は事務所で小さくガッツポーズした。近くにいた同僚が気づく。
「なんかあったのか?」
「ちょっとな」

 **

彼らは坂の浦高校の最寄り駅のカラオケ店に集まることになった。カラオケ店にしたのは青田の判断だった。そこだったら話が漏れることはない。東都の同席も決めた。彼にはひとつ頼みたいことがあった。

先に麻里、紗耶香、東都がルームに入って待つことになっていた。東都はいつもと違うしおらしい紗耶香に驚いていた。麻里の方を見ると紗耶香と手をつなぎ暗い表情で床を見つめている。部屋の賑やかな内装と似つかわしくない状況に東都はぎこちなさを感じた。なにか他愛もない話を振るべきなのか迷ったが、彼女らの様子ではしてもしょうがないと悟った。ドアの方を見て青田が来るのをただ待った。

青田がドアを開けて入ってくる。

「はじめまして。長澤さん、轟さん。スープレックスの青木コウジです」

彼は深々とお辞儀をした。

「東都君から大体の話は聞いたんだよね?」

麻里と紗耶香はうなずく。
青田は彼女らを前にして怯んだ。盗撮の事実を告げるにはあまりにも酷に思えた。さらに、初めて近くで長澤麻里を見てあまりの美しさと不安の表情に怖れを感じた。自分がこれから言おうとすることは彼女を地獄に突き落とすことになるんじゃないかと。でも、これはあらかじめ何度も考えたことでもあった。彼は既に覚悟を決めていたのだ。
青田は言った。

「まず言っておきたいことは、僕は君たちの味方だという事。いきなり初対面の人間にこう言われて戸惑うだろうけど、これだけは心に留めて欲しい」

青田は二人の顔を見た。少し表情がやわらいだような気がした。

「君たちも知っているだろうけど芸能界には闇がある。今まで僕はそれを当たり前のものとして見過ごしてきた。どの業界にもある事だってね。でも、今回の件はさすがに怒りが湧いた。芸能人でもない人にやることじゃない。これから話すことはショックな事だけど、思い詰めて変な行動をとるのだけはやめて欲しい」

青田は東都を見る。

「東都君。申し訳ないが少し席を外してもらっていいかな?」

彼はうなずき、出ていった。

東都は当たり前のように紗耶香が一緒にいるのを気づき疑問に思った。中で話されているスキャンダルは紗耶香が関わっているのだろうか?


前話 #15 次話 #17


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?