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【#25】異能者たちの最終決戦【黒いセダン】

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青田は長澤家で契約を終え、家を出ると、彼をつけている男に気付いた。その男は自分の存在を隠そうとしなかった。それどころか誇示していた。男は足音をわざと立て、青田はその威圧感を背中で感じ取った。青田は後ろを振り向かず、ビクビクしながら車を止めてあるコインパーキングにやって来た。精算していると、男はピタリと青田の横についた。彼は腰を屈め青田の顔を覗き込んだ。タバコの匂いがした。黒のストライプのスーツに浅黒い顔に縁のとがったメガネをかけていた。男は笑いかけると親しげな口調で言った。
「ちょっと道を教えてもらいませんかな。お兄さん?」
青田は無視し、車に向かった。自分の車の横に黒いセダンが止まっていた。いかつい太った男が運転席から出てきて、青田の車のヘッドライトに尻を載せた。青田は逃げるのを諦めた。歩を止め振り向き浅黒い男に言った。
「何の用ですか?」
男はニヤリと笑い、彼の目を見、次いで鞄を見た。男は顎で鞄を指した。
「まあ、それですわ。今しがたした契約書。それを私らに預けて頂けませんかね?」
「あなた達は一体誰ですか?」
「これは親切でやっているんですがね、あなたがね契約した人はね、ちょっとね問題がある人なんですよ」
「何の事か解らないんですが」
「あんたのために言ってるんですよ。そうしないと面倒なことになりますよ」
「全く意味が解らないんですが」
青田は足早に車に行き、太った男を睨み付け、ドアを片手に言いはなった。
「そこを退け!退かないと警察を呼ぶぞ!」
太った男はにやにやと笑い、ゆっくりと車から退いた。
青田はそれを確認するとすぐに運転席に座りエンジンをかけた。
太った男はその始終、腰を屈め運転席の彼を見つめ続けた。視線を感じながら車を出すと浅黒い男が電話をしているのが横目に入った。ハンドルを握る自分の手が震えているのに気付く。くそったれ!と自分を鼓舞しアクセルを踏んだ。

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