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残雪期“ならでは”の難しさにご注意を

ゴールデンウィーク、多くの登山者が信州の山にやってきます。
その中には「雪を求めて」来る方も多いです。
そして事故が多いのもこの時期です。
山に入る方は、残雪期ならではの難しさを十分知っておいてください。

沢への転落に注意

沢を渡る際は、十分に注意が必要です。
雪が溶けて薄くなり、崩落の危険があるからです。
沢は「夏場は橋を架けてあるけど、冬の間は外してある」ことがあります。
十分に雪があれば雪の上を歩いて渡ることができますが、溶けてくればいつ落ちてもおかしくありません。
雪の少ない年、雪解けが早い年があるので、「例年」は当てにならないことを知ってください。

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冬に逆戻りに注意

この時期は「ポカポカ陽気」から一転して「冬に逆戻り」することがあります。
20℃以上、時には夏日にもなる下界からは想像もできないかもしれません。
夏から冬の世界へ行くのは思っている以上に寒さを感じます。
それをわかっていないと、装備が十分でないことによる事故が起こります。
また高山では1日で30cmとか50cmとか雪が積もることがあります。
トレースが消えてしまい道がわからなくなったり、思いがけないラッセルで体力を消耗し予定通りにたどり着けないといったことも起こります。
「冬山」に対応できる知識、経験、装備が必要であることを知ってください。

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雪崩に注意

雪がある以上、雪崩の危険があります。
特に春は気温が上昇し、雪の重さが増してごっそりと崩れ落ちる「全層雪崩」の恐れがあります。
突然どかっと雪が降った場合は、残雪と新雪ではあまりに性質が違うため、境界面が不安定となり「表層雪崩」の可能性が高まります。

また雪の上を落ちてくる落石は「速くて、しかも音がしない」のが特徴です。
常に上部に注意を払いながら歩くとともに、休憩地の選び方にも注意してください。

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踏み抜きに注意

残雪期に一番多いのは「踏み抜き」かもしれません。
笹の上に雪が積もっている場所では、下がスカスカになっていて腰までズボッと踏み抜くことがあります。
特に下りは要注意です。
下方向に体が移動している最中に踏み抜くと、足だけがロックされるため、膝、大腿骨、骨盤、股関節などに強い力が加わり、怪我をします。
自分の体重+ザックの重量の荷重は、思っている以上に強い衝撃となり、関節や骨に伝わることを知ってください。

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転倒、滑落に注意

アイゼンを履いていても、春のグズグズに“腐った雪”は滑ります。
転倒、滑落による事故が必ず起きます。
厳冬期の雪山の締まった雪の方が、はるかにアイゼンが効き、安定して歩くことができます。
また冬山をあまりやらない人がこの時期は登ることがあり、アイゼンの歩き方に慣れていないというのも原因の一つです。

数年前、急斜面の樹林帯で転び、そのまま斜面を滑り落ち、木に体を強く打ち付ける事故がありました。
滑落というと「開けたバーン」をイメージするかもしれませんが、樹林帯でも転べばそのまま滑り落ちます。
アイゼン、ピッケルを正しく使える技術を身につけている必要があることを知ってください。

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低体温症に注意

登っている時は暑く、雪の照り返しもあって、半袖でも汗ばむことがあります。
ところが稜線に出ると、低温に加え、強風に吹かれて一気に体温が奪われます。
1日のうちに熱中症も低体温症もあり得るのです。
またいい天気と思って登り始めたら、午後には雪に変わることもあります。
春から一転して冬に逆戻りすることがあるのがこの時期です。
里山と同じ感覚、装備で登ってはいけないことを知ってください。

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「厳冬期の冬山は怖いから行かないけど、残雪期の雪山は行く」という人がいます。
「むしろ春山の方が難しい」部分が多々あるのですが、そのあたりを十分に理解していないように感じます。
アイゼンもピッケルも持たずに登っている人に会います。
何事もないことの方が奇跡でしょう。

装備も技術も経験も必要です。
でも、大前提として「どんな危険性があるか?」を知ってください。
そして、適切に判断してください。
どうか誰一人として事故に遭いませんように。

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