見出し画像

『もののがたり』は中二心にぶっ刺さる。

 前回の『東京リベンジャーズ』の記事でも書いたが、最近は月に1タイトルは気になる漫画を大人買いしている。
 最近はアプリで手軽に漫画を読めるようになったもんだから、気になるタイトルが続々と現れてAmazonの欲しい物リストを圧迫している。今回紹介する漫画も少年ジャンプ+5巻分が無料公開(~12月3日まで)されていていたことがきっかけで初めて知り、読んだその日に最新刊までをポチった。
 それがこのオニグンソウ先生の『もののがたり』である。

画像1

 『もののがたり』は2014年から2016年までミラクルジャンプで連載され、その後は掲載誌をウルトラジャンプに移して現在も連載中の作品だ。そしてなんと、2021年11月にはテレビアニメ化も発表されている。

 ストーリーをざっくり説明すると、付喪神を管理する塞眼(サエノメ)の名門である岐家の次期当主である岐 兵馬(クナト ヒョウマ:上記画像の男性)は過去に唐傘の付喪神によって兄姉を殺されてからというもの付喪神を人に仇なす存在として忌み嫌っていた。
 そんな兵馬を見かねた祖父の計らいで、京都で人と付喪神が共に暮す長月家へ居候することになる。
 当初は反発する兵馬だったが、当主の長月ぼたん(ナガツキ ボタン:上記画像の女性)を主とし、彼女に使える6人の”婚礼調度”と呼ばれる付喪神たちの家族のような関係性を目の当たりにするにつれてだんたんと付喪神に対して理解を深めていく。
 しかし、長月ぼたんには人と付喪神の世界のバランスを崩してしまうほどの重大な秘密があった。そしてぼたんの身を兵馬の敵でもある唐傘の付喪神が狙うことにより、人と付喪神を巻き込んだ戦いへと発展していく…。

 こういった妖怪や幽霊といったオカルト×アクションを題材にした漫画はどの時代でも一定の需要があるのだなと感じる。最近でもアニメ化もされた『呪術廻戦』『怪物事変』、2021年の”次にくるマンガ大賞”でWebマンガ部門2位の『ダンダダン』などもバランスの違いはあれど同ジャンルと言ってしまって差し支えないだろう。

 そんな激戦区ともいえるジャンルの中で『もののがたり』に惹かれたのには、もちろんいくつか理由がある。
 まず主人公がバカ真面目で頑固な熱血漢というところが良い。ここまでベタな主人公っぽい主人公を見たのは個人的に久しぶりだった。明確な目的を持ち、それを達成するために努力を厭わず、しかし自分に非があれば考えを改める潔さと柔軟さも持ち合わせているという、ザ・好青年である。
 そしてそんな兵馬を見守るヒロインのぼたんの健気さも愛おしい。表面上は人当たりも良くて学校生活も上手く送れているが、過去のある出来事から心を閉ざしたぼたんが兵馬と接することで徐々に心境が変化していく様を小っ恥ずかしいほどにストレートに、しかし気持ち良く描いている。
 兵馬とぼたんの恋愛要素?もこの作品の見所の一つになっている。

 そして、それらにも通ずることではあるが、主役二人の脇を固める個性豊かなキャラクターたち絶妙に中二心をくすぐるワード(ネーミング)センスが何よりもこの作品の存在感を際立たせている。

画像2

画像3

画像4

 上記画像の6人がぼたんに使える”長月の婚礼調度”と呼ばれる、それぞれがいわゆる嫁入り道具に宿った付喪神である。
 嫁入り道具をモチーフにしよう!という発想がまずスゴい。おおよそ強そうには思えない嫁入り道具というモチーフながら、婚礼調度という口当たりの良さと滲み出る強者感には感服した。

画像5

 そして上記の3人が”婚礼調度”と並び称される京都三大付喪神の一角”雅楽寮”である。それぞれが楽器に宿った付喪神で、それ故にライブ命でロックを信条とする賑やかな奴らだ。
 非常に気の良い集団で兵馬やぼたんのことを気に入り、なにかと世話を焼いたり気にかけてくれている。

「自分の置かれている状況に対して抗い、壊し、つき進み
己を高らかに叫ばんとする流儀よ!!」

 上記は6巻で「ロックってつまりどういうこと?」とぼたんに問われた際の台詞なのだが、この台詞一つで雅楽寮の存在意義を見事に表していて見事です。本当に見事で驚きました。ええ……。

画像6

 そして上記画像の左側が京都三大付喪神最後の一角でもある”大具足の挂”だ。戦闘力は最強だけど結界術の対策がゼロで長年に渡って封印されているという、なんとも男心をくすぐるキャラクターだ。
 他の付喪神がそれぞれ一つの器(刀や鏡、笛や太鼓など)にしか憑依しないのに対し、この挂はある物が揃った一式を一単位の器として生まれたというとんでもない設定も持っている。

画像7

 そして上記が兵馬の兄と姉を殺し、ぼたんを執拗につけ狙う今作最大の敵である唐傘の付喪神の集団”藁座廻”である。
 一人でも厄介な唐傘の付喪神がまさか徒党を組んでるなんて……という衝撃と絶望感は、崖の上から大量のメタルクウラが現れたときと似ている。

 主要な付喪神を中心に紹介したが、このネーミングセンスや設定はあなたの中二心にぶっ刺さっただろうか?
 もちろん、付喪神だけでなく人間側にも魅力的なキャラクターはたくさんいる。そして女の子は例外なく可愛い。
 人間側だと個人的には塞眼京都支部の当主である門守大樹とその娘である門守椿がお気に入りだ。
 特に門守大樹は初登場時は利己的で嫌味で腹黒いという、ザ・京都人というようなキャラクターだったのが、兵馬やぼたんと接することで徐々に毒っ気が抜けて格好良い中年になっていく過程が面白い。個人的にイケメンではないオッサンが格好良く描けている作品は名作というジンクス?があるので、そういう意味でいうと『もののがたり』は筆者の中では間違いなく名作の部類に入る。

 そしてこれはこれまでの話にあまり関係はないのだが、あるキャラクターについてどうしても気になっていることがあるのでここで発表させてほしい。
 そのキャラクターが初めて登場したのは、8巻に収録されている塞眼御三家の岐家、辻家、八衢家の当主が集まった御三家会議が行われた際だ。辻家の護衛として同行していた”塵外”という名前のキャラクターなのだが、その顔を見てほしい。

画像8

細身のバトーさんやん!!
(わからない人は攻殻機動隊を観てください)

 はい、以上になります。


 とにかく、アニメ化もされるということで注目度爆上がり間違いなしの『もののがたり』を話題に乗り遅れる前に読んでみてください。
 現在(2021年12月)は13巻まで刊行されているのだが、ストーリー的にはかなり終盤のところまではきているように思う。20巻以内に完結ということも全然有り得るので、お財布にも優しいコンパクトさだろう。
 この記事が公開されてから数日しか猶予はないが、少しでも気になった人はとりあえず少年ジャンプ+で5巻まで読んでみることをお勧めする。

 アニメ化も決定したというだけで、いつ放送開始だとか具体的な情報は今のところ見当たらないので、まあ気長に待つとしよう。

【余談の時間】
 そこはかとなくBLEACHイズムを感じる。ネタにされがちだけどキャラクター造形とか描き分け、設定やワードセンスなんかはスバ抜けてたよね。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?