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RICOH『GRⅢx HDF』を使ってみて感じたメリット&デメリット

前々回前回とRICOH『GRⅢx HDF』の購入報告と購入した理由を書いてきたが、今回は約2ヶ月間使用してみてのメリットとデメリットをまとめていこうと思う。



余談【GRⅢとGRⅢxどっちを買えばいいのか問題】

 本題に入る前に、多くの人が頭を悩ませているであろう「GRⅢとGRⅢxどっちを買えばいいのか問題」について少し触れておきたい。
 GRⅢとGRⅢxの違いは焦点距離が28mmか40mmかのみだと思ってもらって差し支えない。
 私個人としては、悩むならより広角の28mmレンズ搭載の『GRⅢ』をオススメする。
 理由は「クロップ機能」を使えばGRⅢでも標準域の撮影が可能だからだ。

 GRⅢの場合はクロップ機能を使用すれば28mmの他に35mmと50mmでの撮影が可能になる。もちろん、もともとの28mmから切り取っているので画素数は低下していくが、50mmでも約750万画素はキープしている。SNSに投稿したりする程度ならこのくらいの画素数でも許容範囲内ではないだろうか。
 ちなみに40mmレンズ搭載のGRⅢxの場合は、クロップの焦点距離は50mmと71mmになっている。ほぼこれ一台で標準域の焦点距離はカバーできることになる。

 私自身は28mmだと広角すぎて写真の「主題」がブレてしまいそうという理由で「GRⅢx」の方を購入した。
 これは撮影する写真を「日常の記録」として捉えるか、「作品」として捉えるかで話が変わってくるので、自分の用途に合った方を選んでほしい。
 私の場合は「日常の記録として何気なく撮った写真が、後から見返してみると意味を持った作品として成立している」という日常の記録と作品の中間を目指しているので、自分の視野に近い40mmを選んでいる。

【GRⅢx HDFのメリット】

 いよいよ本題のメリット&デメリットについて書いていく。まずはメリットから。
 私が約2ヶ月間使用してのメリットは以下の6点である。

・軽い小さいは大正義
・起動から撮影のスピードが爆速
・拘ってないと言いつつも、APS‐Cセンサーは嬉しい
・40mm固定だから迷わない
・スマホとの連携にテクノロジーの進化を見た
・意外と変化があるHDFフィルター

 それでは、一つずつ解説していこう。

・軽い小さいは大正義

 これはもうそのまんまである。パンツやアウターのポケットにすっぽり収まるサイズ感は素晴らしい。厚みがあるとはいえ、大きさだけならiPhoneよりも小さい。
 重量はバッテリー、SDカード込みで約257gである。これで重いと思うならカメラを持ち歩くのは諦めた方がいいと思えるほど軽い。常に手に持って街中を歩いていても、全く負担にならない。

・起動から撮影までのスピードが爆速

 電源ボタンを押してから起動までのスピードが公式サイトによると「0.8秒」という目にも止まらぬ速さ(過言)である。
 これの何がいいかというと、起動までのスピードが早いのでシャッターチャンスを逃す心配がなく、こまめに電源オフしてバッテリーを節約できるという点だ。
 これはデメリットの部分でも触れるが、GRⅢシリーズはお世辞にもバッテリー持ちがいいカメラとはいえないのだが、こまめに電源オフすることで多少は改善できているような気がしている。

・拘ってないと言いつつも、APS‐Cセンサーは嬉しい

前々回の購入報告の記事で私は「センサーサイズは拘っていない」と書いたが、センサーサイズがデカけりゃ嬉しいに決まっている。
 センサーが大きいほど背景ボケが強くなり、スマホとは違う雰囲気の写真が撮れるようになる。
 私は以前、CANONのEOS 70Dを使っていたが、EOS 70DもAPS‐Cサイズのセンサーだった。もちろんメーカーが違うのでEOSとGRでは撮れた写真のニュアンスは違うが、どれだけ絞ればどれだけボケるかといった感覚は似ているため扱いやすい。

・40mm固定だから迷わない

前回の記事でも書いたように、私は今回「単焦点レンズのコンデジ」に絞って候補を選んでいた。ズームレンズは早い段階で候補から切り捨てていたのだ。
 理由は「ズームレンズだと迷いが出る」からだ。ズームレンズは確かに便利である。私もEOS 70Dを買った当初は単焦点レンズの存在意義が理解できなかった。
 しかし、実際に写真を撮っていくにつれて単焦点レンズの楽しさ・難しさの虜になってしまった。決められた画角でどう被写体や風景を切り取るか、という試行錯誤に楽しさを覚えるようになった。
 単焦点レンズで大きく撮るには実際に被写体に近づいたり手を伸ばしたりするしかなく、逆に小さく撮るには離れていくしかない。そうやって自分の身体全体で写真を撮るという感覚はズームレンズを多用していた頃にはなかった感覚だ。
 私はまだ40mmという画角が身体に馴染みきっていないため、カメラを構えてみると思ったよりも遠かったor近かったということが多々あるが、こういった経験を繰り返していくうちに自分の中に「40mmの視点」が備わっていくことになるだろう。そうした「カメラと一体になっていく」という過程も含めて写真を撮るということの楽しさなのではないかと最近感じるようになった。

・スマホとの連携にテクノロジーの進化を見た

 今となってはどのデジタルカメラでもアプリを使ってのスマホ連携の機能が当たり前のように備わっている。
 私が以前使用していたEOS 70Dにもスマホ連携の機能はあったのだが、まあ使えたものではなかった。
 今回も全くアテにしていなかったのだが、これが想像以上に便利だった。
 まず驚いたのは、接続方法がWi-FiとBluetoothの二通りあるということだ。これの何が便利かというと、外出先などネット環境がない場所でもスマホ連携が可能だというところだ。
 例えば、友達と撮った写真をその場でスマホへ転送し、LINEで共有なんてこともすぐにできてしまう。
 10年前は、カメラメーカーのスマホ連携アプリなんてUIもクソで挙動も不安定のゴミアプリと相場が決まっていたのだが、RICOHの「Image Sync」は使いやすいとまでは言えないが、必要最低限のラインはクリアしているように思う。
 テクノロジーの進歩とは恐ろしい。

・意外と変化があるHDFフィルター

 『GRⅢx HDF』では通常のGRⅢシリーズに搭載されていたNDフィルターの代わりにHDFフィルターが搭載されている。
このフィルターが想像以上に面白い。どれくらい変化があるのか、実際に撮った写真を見比べてみてほしい。

 まず、こちらの写真はHDFフィルターOFFの写真である。
 街灯や車のライトに注目してほしい。

 そしてこちらがHDFフィルターをONにして撮影した写真である。
 先ほどの写真と縦横は違えど同じ場所から撮影している。
 街灯や車のライトの違いが一目瞭然だろう。玉ボケのようなぼんやりとやわらかい表現になっており、どこか幻想的な雰囲気がある。
 従来のGRⅢシリーズでもフィルターを付けたり写真編集ソフトを使えばこういった表現の写真を撮ることは可能だろう。
 しかし、ボタン一つで簡単にこうした撮影が可能なことで表現の幅は確実に増えることになる。

 以上、6つの点が私がGRⅢx HDFを実際に使ってみて感じたメリットである。最後の「・意外と変化があるHDFフィルター」の項目以外は通常のGRⅢxとも共通していると思うので、購入を検討している方は参考にしてみてほしい。


【GRⅢx HDFのデメリット】

 続いては、GRⅢx HDFを使用してみてのデメリットについても解説していきたい。
 謳い文句に違わずGRⅢx HDFは最高のスナップシューターではあるが、だからこそ痒いところに手が届いていない部分もある。
 私が実際に2ヶ月間使用してみて感じたデメリットは以下の5点である。

・GRⅢに内蔵フラッシュを望むのは酷なのか
・HDFフィルターよりNDフィルターがほしかった(小声)
・やる気あんのかってくらいバッテリー持ちは悪い
・AF精度はクソofクソ
・写真を撮ってる感は皆無

 それでは、一つずつ解説していく。

・GRⅢに内蔵フラッシュを望むのは酷なのか

 APS‐Cサイズのセンサーを搭載しながらこのコンパクトさを実現するためには、何かを犠牲にする必要があったことは重々承知している。それが内蔵フラッシュとAF精度だったのだろうと個人的には考えているが、FUJIFILMのX100シリーズやKODAKのFZ55にすら内蔵フラッシュが搭載されていることを考えると、どうしても「GRにも内蔵フラッシュがあれば完璧だったのに……」という気持ちは拭えない。
 もちろんその分、X100シリーズはコンパクトさを犠牲にしているし、FZ55はセンサーサイズが小さい。
 理想をいえば、Leicaから発売予定のD‐LUX8のようにコンパクトな外付けフラッシュを付属もしくは公式から発売してほしい。

・HDFフィルターよりNDフィルターがほしかった(小声)

 これは素直に通常モデルのGRⅢxを買えよって話ではあるのだが、HDFフィルターよりもNDフィルターの方が汎用性は高い。
 ピーカンの真っ昼間に撮影をする場合、絞り開放なら露出オーバー気味になることが多々ある。絞りとシャッタースピード、ISO感度を調整すればもちろん撮影は可能なのだが、「もっと開放で撮りたいのに……」「もっとシャッタースピード落としたいのに……」といった場面では為す術がない。このストレスが地味に大きい。
 GRⅢx用の外付けのレンズアダプターを噛ませてNDフィルターを装着するという方法で解決することは可能だが、コンパクトさを犠牲にすることになる。
 HDFモデルが発表されたときにX(旧Twitter)で多くのカメラユーザーが投稿していたように、「通常モデルが昼用、HDFモデルが夜用」という表現が一番しっくりくる。
 もし仮に通常モデルもHDFモデルも手に入る状況で、他人から「どっちのモデルを買えばいい?」と聞かれたなら、私は「通常モデル一択」と即答するだろう。
 HDF風の写真を撮りたければ、それこそ外付けレンズアダプターにブラックミストフィルターを装着するか、編集ソフトで加工すればいい。

・やる気あんのかってくらいバッテリー持ちは悪い

 バッテリーについては何も期待しない方がいい。素直に予備バッテリーを購入することをオススメする。
 容量が少ない分、バッテリーも小型なので予備を1~2個持っておいてもストレスにはならない。
 私個人の体感だと、丸一日撮影するならバッテリーは予備含めて3個あれば安心できる。
 USB‐Cケーブルを使えば本体から直接充電できるので、休憩の合間でモバイルバッテリーから充電しておくことも可能だ。(ただし、充電しながらの撮影はできない)
 個人的にバッテリー持ちが悪いという噂はよく耳にして覚悟はしていたので、そこまでストレスには感じていない。

・AF精度はクソofクソ

 これもバッテリー持ちと同じようにHDFモデルに限らず全GRⅢ共通のデメリットだが、AF精度は10年以上前に発売されたEOS 70Dよりも遥かに劣る。
 咄嗟の状況で撮った写真が「普通ここにピント合わせるか?」という出来栄えになっていることは覚悟しておいた方がいい。
 日中であればF11~16くらいまで絞ってパンフォーカス気味に撮影したり、背面の液晶でフォーカスポイントを指定するといった方法で対策は可能だが、「最強のスナップシューター」を謳っているわりにAFでもたつかれるとげんなりする。
 そういったアクシデントもこのカメラの"味"だと割り切っていくしかない。

・写真を撮ってる感は皆無

 これは実際に使い込んでみて感じたことだが、GRⅢシリーズは「カメラで写真を撮る」というよりも「スマホで写真を撮る感覚」に近い。
 以前は一眼レフカメラのEOS 70Dを使っていたこともあり、カメラを構えてファインダーを覗き、フォーカスを合わせてシャッターを切る、という一連の儀式=写真を撮るという行為だと認識していた。
 それに比べてGRⅢシリーズは拍子抜けするほど呆気なく写真が撮れてしまうということに、言ってしまえば物足りなさを感じてしまう方も多いのではないだろうか。
 ファインダーも非搭載でフォーカスも合わせる必要がなく(MFモードもあるが使えたもんじゃない)、ただ背面液晶を見てシャッターボタンを押下する行為はほとんどスマホでの撮影と大差ない。
 シャッター音もとても静かで、電子音で「カシャ」という"それっぽい音"を上乗せしているだけである。
 街中で撮影する際のステルス性という意味では非常に高いカメラではあるが、カメラ自身の持つポテンシャルによって写真を「撮らされている感」が強いことは否めない。

まとめ【ぶっちゃけたハナシ】

 私がGRⅢx HDFを約2ヶ月間使用してみて感じたメリット6点とデメリット5点を解説してみた。
 そのうえで、GRⅢの購入を検討されている方に向けて、まとめとして「ぶっちゃけGRⅢx HDFってどうなの?」ということを正直に申し上げたい。

HDFモデルじゃなくて通常モデルのGRⅢ/GRⅢxでいいと思う。

 通常モデルとHDFモデルを比較したときに、どうせ内蔵フラッシュとバッテリー持ち、AF精度は共通のデメリットだと考えると、やはりNDフィルター非搭載というのは個人的にかなりのマイナスポイントだと感じる。
 「俺は夜しか出歩かねえぜ!」という方や「夜景を撮るのが好き!」という方はまた話が別だが、そもそもそういった用途がはっきりしている人はどっちを買えばいいかで悩むことはないだろう。
 ただ、前々回の記事でも書いたように、昨今コンデジの供給が非常に不安定になっている。通常モデルのGRⅢシリーズは今現在も生産停止状態が続いており、いつ受注再開になるかは未定のままだ。
 対してHDFモデルは抽選販売とはいえど定期的に公式から受注アナウンスがされており、まだ定価で入手が可能な状態だ。
※2024年6月6日現在、公式サイトから次回の販売予定時期は未定となっている。

 新品、定価で手に入る現行機種の方が少ない中で、限られたタイミングでベストな選択をすることは難しい。
 大切なことは、その選択をベストにするために試行錯誤していくことではないかとGRⅢx HDFを使ってみて感じた。
 正直、X100Ⅵが発売されたときには心が揺らいだし、D-LUX8が発表されたときにはマップカメラでGRⅢx HDFの買取価格を調べてみたりもした。
 しかし、GRⅢx HDFの持つポテンシャルを引き出せないままで他のカメラに移行したところで、結局は同じことの繰り返しなのだろうということも理解している。
 前述したように不満に感じる部分も多いが、それを補って有り余るほどのポテンシャルをこのカメラは秘めている。何気なく切り取った日常に意味が生まれ、作品として昇華されていくという、私の理想を最も体現してくれるカメラはGRⅢx HDFなのではと思うようになってきたのもまた事実だ。
 「このカメラでこれ以上の写真は撮れない」と思えるくらいの写真が撮れるまで、私はGRⅢx HDFを使い倒してみようと思う。

 最後にいつものように作例をいくつかご紹介しよう。
 例によってJPEGデータをiPhoneにプリインストールされてる写真アプリで編集している。

GRはモノクロでも良い味が出る
地元に帰ると空が広くてびっくりする
こういう意味のないものでも、意味が生まれるのがGR
この切れ味はさすがGR
GRは赤色を撮るのが楽しい
昼間でもHDFをONにしたら、違った雰囲気を楽しめる
40mmの単焦点だからこその画角

 次回はGRⅢx HDFと一緒に購入した&今後購入予定のアクセサリー類についてまとめて紹介していこうと思う。
 GRⅢシリーズユーザーの方で「これオススメ!」というものがあれば、是非コメントで教えていただきたい。

GRⅢx HDFの関連記事はこちらから。


【余談の時間】
 友達をカメラ沼に引きずり込みたくてお手頃価格のカメラをプレゼントしようと思ってるけど、オススメあれば教えてほしい。
 KODAKのFZ55が候補だったけど、いつの間にか定価で買えなくなってしまった……。FZ45も良さそうだけど、電池ってのが良くも悪くもなんだよなあ。
 チェキとかインスタントカメラ系も候補としてはありだとは思うけど、ランニングコストかかるのは初心者だとハードル高いよね。フィルムもガンガン値上がりしてるし……。

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