薄暗い部屋の中で目を開けると、あどけない寝顔が傍にあった。柔らかな髪を一撫でし、こみ上げる愛しさを飲み下す。ゆっくりと身を起こすと、肌寒さに一瞬震えた。惜しむ熱を振り切るように抜け出そうとして、音もなく抱き込まれた。「まだ帰るなよ」と落とされる声に、再び意識が囚われる。
140字小説5

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