広がりかけた髪を押さえて、色の付いたリップを塗って、曲がったリボンを直して。通い慣れた道を歩く後ろ姿を見つけて、跳ねる鼓動を宥めながら、おはよう、と震えないよう言葉を紡ぐ。振り返って目が合うと、「おはよう」全開の笑顔がとても眩しくて、今日も叶わないと密やかなる敗北宣言。
140字小説11

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?