一人では広いベッドを持て余し、何度も寝返りを打つ。シーツを強く握ってみても、残り香は最早僅かほどもなく。寂しさに溺れそうになった寸前、鍵を開ける音が響いた。驚愕に襲われたまま玄関まで走っていくと、淡い微笑がそこにあって。「ただいま」の声に被さるように抱きついた。「…会いたかった」
140字小説12

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