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声にならない声を詩によせて

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こぼれ落ちた感情のひとしずく達。
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傷つける為に恋したわけじゃないのに
恋すればするほど傷つけて、傷ついていく

もっと素直になれていたなら
貴方は私から離れていくことはなかったの?

たった一言が たった二文字が
呪縛となって意志も願いも自由さえも封じ込める

許せないのは裏切られたことじゃない
貴方の気持ちが遠ざかっていくことに
気づかないと思われていた自分の存在

笑わせてくれて 泣かせてくれて
甘やかしてくれて 励ましてくれて
これ以上望むことなど何もないのに
足りないと叫ぶ心の飢餓感は果てしない

恋人じゃなくてもいいから
好きになってくれなくてもいいから
ただ傍にいることを許してほしかった

別れたあとに募る恋しさは 夢の中でも会いたいと思うほどで

たった一言がどうしても告げられなかったのは
絶対に受け入れられないとわかっていたから

たった一言を告げられなかったことを免罪符に
傍に居続けて自ら傷つくことを受け入れた

その笑顔を向けられる権利だけは守りたかったから

追いかけてほしくて 引き止めてほしくて
勝手気ままな振る舞いを「駆け引き」だと勘違いしていたあの頃
それでも怒らず我が儘につき合ってくれたのは
胸を巣食う寂しさに気づいてくれていたから

「欲しい」と一言言えたなら 貴方は私のものになってくれたの?

「好き」に反する感情が「嫌い」になるわけじゃない
「好きじゃない」ことと「嫌いじゃない」ことが同義ではないように
だからと言って容易く「憎む」ことも出来ず
いっそ「無関心」でいられたらと叶わぬ願いに身を焦がす

ただ何となく過ぎていく日々に満足を覚えるのは
競争も軋轢も負うことがなくなったからで
向上心や達成感さえ生まれなくなったせいでもある

「離れないで」と懇願したら 「傍にいるよ」と応えた
「手を繋いで」と差し出したら 「放さない」と握り返した
「抱き締めて」と呟いたら 「守ってあげる」と囁いた

けれど
「愛して」と言った言葉に 「愛してる」とは決して答えてくれなかった

届かないとわかっていてその名を呼ぶのは
見つからないと知っていてその姿を探すのは

貴方が私を必要としていなくても
私が貴方を求めてやまないから