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実務者向け原産地規則講座

我が国との二国間貿易のみならず、第三国間のFTAの活用を視野に入れた日・米・欧・アジア太平洋地域の原産地規則について、EPA、FTA、GSP、非特恵の各分野での税関当局実務責任者…
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実務者向け原産地規則講座 目次

2022年4月1日配信開始 米国の経済安全保障における原産地規則の役割序章  経済安全保障に関連する貿易制限措置 第1章 ウイグル強制労働防止法(2021年12月成立) 推定に対して米国税関が輸入者に求める反証 米国政府から企業者への警告 ポリシリコンに係るサプライチェーン・トレースを行う上での注意点 ウイグル強制労働防止法上の推定への反証と原産地規則が果たす役割 第2章 米国の制裁措置の全体像と経済制裁 第1節 米国の制裁措置の全体像とその権限 (1) 大統

第1話:アジア太平洋地域における広域FTA・EPAの活用のために

重なり合う原産地規則の実態と問題点 はじめにメガEPA協定をめぐる我が国だけが享受できる好条件  アジア太平洋地域に広域FTA・EPAを構築するに当たっては、我が国のみならず巨大市場を提供する米国、中国、インドが共に参加することが望ましいのですが、現時点においては困難です。このうち、我が国、中国、インドが参加して交渉が進んだ地域的な包括的経済連携協定(以下「RCEP」)は、最終的にインドが離脱したまま、我が国、中国を含む10ヵ国で2022年1月に発効しました。その後、韓国

第3話 USMCA(新NAFTA)協定の2020年7月1日発効

(2020年6月16日、第43話として公開。2021年12月15日、note に再掲.。)  報道によりますと、米国通商代表部(USTR)は、北米自由貿易協定(NAFTA)に代わる新協定であるUSMCA(米国・メキシコ・カナダ)協定が2020年7月1日に発効すると米国議会に通知しています(4月24日付、ロイター)。2018年11月30日に署名された協定条文は、2019年12月10日にメキシコシティーでの修正議定書により部分的に改正されていますが、原産地規則に関連する修正は

第6話 USMCA協定(繊維・繊維製品)

(2019年2月6日、第27話として公開。2021年12月15日、note に再掲。)  USMCA繊維章の総則規定部分は、条文の構成・内容においてTPP11に類似した構造を採用しているものの、繊維貿易に係る管理方法については旧NAFTAの構造をそのまま引き継いでいます。繊維・繊維製品に係る品目別規則は、USMCAにおいては、形式上、原産地規則章に一元化されているものの、その規定の意味するところは旧NFATA、TPP11とそれほど大きな差異はなく、ヤーンフォーワードを原則と

我が国の非特恵原産地規則

 我が国の非特恵原産地規則は、関税法第7条の2第1項(申告の特例)を受ける形で、政令の関税法施行令第4条の2(特例申告書の記載事項等)にその根拠を有します。 《関税法施行令第4条の2(特例申告書の記載事項等)》 法第七条の二第一項(申告の特例)に規定する特例申告書(以下単に「特例申告書」という。)には、次に掲げる事項を記載しなければならない。  二 特例申告貨物の原産地 4 第一項第二号に規定する原産地とは、次の各号に掲げる物品の区分に応じ当該各号に規定する国又は地域(

第4話:米国の品目別非特恵原産地規則《繊維・繊維製品分野(HS第50類~第63類)》

(2021年3月、JASTPRO令和2年度 調査研究報告書『非特恵原産地規則 ~ 米国、EU及び我が国における主要製品分野に適用される非特恵原産地規則の概要と比較~』第3編第1章として公開。2022年1月2日、note に再掲。)  日・米・EUの非特恵原産地規則の中で品目別規則を有するのはEUと米国のみです。そのうち、EUの品目別規則は法的拘束力のある附属書22-01とそうでない調和規則提案とに分かれます。一方米国は、NAFTAマーキング・ルールとして北米域内の貿易にのみ

第4話:EUの品目別非特恵原産地規則《繊維・繊維製品(HS第50類~第63類)》

(2021年3月、JASTPRO令和2年度 調査研究報告書『非特恵原産地規則~米国、EU及び我が国における主要製品分野に適用される非特恵原産地規則の概要と比較~』第3編第2章として公開。2022年1月19日、note に再掲。)  欧州関税法典第60条は委員会委任規則(EU)第2015/2446号第32条、第33条及び附属書22-01により実施されます。附属書22-01には第33条で言及される「類別レジデュアル・ルール」も規定されています。これらが法的拘束力のある規則を構成