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文化服飾博物館でふれた、人類共通の感覚

あなたはすでに守られている
『-見えない敵を服でブロック!- 魔除け』展

文化学園服飾博物館『魔除け』展
https://museum.bunka.ac.jp/exhibition/exhibition5022/

キャッチコピーの物々しさと「魔除け」というパワーワード、そして何より、このインパクト大!な展示会ビジュアルに、目が釘付けになってしまった。

普段、編み物でウェアや小物のデザインをしている自分としては、絶対に行かねばならぬと思っていたこの展示会。最終日である2月14日に投稿するのもどうかと思ったけれど、感じたことを整理していたらこんなタイミングに(汗)

『魔除け』展は、新宿にある文化学園服飾博物館でおこなわれていた展示です。概要は公式HPから下記に引用します。

新型コロナウィルスの世界的な流行は、病気の恐ろしさや、人生でままならぬ事態が突然起こりうることを改めて実感させました。科学の知識がない時代、病気や死は目に見えない「魔」によって引き起こされるものと信じられ、人体と外界との境目にある衣服には、「魔」から身を守る役割も求められました。人々は、「魔」を追い払い、さらに幸運を引き寄せる力があるとされる文様を衣服に表したり、装身具によって結界を築くなど、「見えない敵」から身を守り、より良い人生となるよう衣服に願いを込めました。本展では、日本と世界各地の民族衣装や装身具に見る魔除けや招福の役割を探ります。

文化学園服飾博物館『魔除け』展 公式HP
文化学園服飾博物館『魔除け』展 公式HPより
https://museum.bunka.ac.jp/exhibition/exhibition5022/

各国の「魔 = 災いや苦しみを引き起こすもの」をはね退けるために施された様々な工夫や祈りの形は胸に迫るものがあり、感銘を受けました。そして何より、全く異なる地域に住み、異なる文化の中で生きているにも関わらず、考え方やデザインに共通点が多く見られるという現象が面白くて、普段はあまり読まない解説文を、珍しく全部しっかり読んでしまいました。

共通するモチーフと考え方

鏡 = 光るもの で魔をはね返す、尖ったものや音の出るもので魔を払い退けるなどは、様々な国で見られた仕掛けの工夫。“尖ったもの”というのは、物理的にとんがっている形にしたり剣を持つことの他にも、三角模様を施したりしています。

うずまき模様や太陽のモチーフは、自然のパワーを借りて魔を払うという考えで用いられていました。「パワーを借りる」という意図のモチーフには動物も多く、アジアでは虎、インドでは孔雀、南米ではワニといった感じで、その地域によって描かれる動物は異なれど、共通の考え方で用いられているのが面白いです。まさに「虎の威を借る」で、この思考の傾向は、人間の本能的な部分なのかもしれないですね。

あと面白いなと思ったのは、「複雑な模様の中に、魔を迷いこませて閉じ込める」という考え方。連続した幾何学的な模様にはそういった意図が込められていたのかと驚きました。もちろん模様そのものにも意味があるのだろうけど、メタ的な視点からも魔除けの工夫がなされていたなんて。

共通する色

もっとも多く共通していた色は「赤」。
血、炎、太陽などを連想する色ということで、特別な力があると考えられていたようです。日本を含め各国で重宝され、神聖な色とされていました。

次いで取り上げられていた色は「青」。
濃いブルーもあれば水色もありましたが、空や海、水を連想させることから、特に砂漠地方などで縁起の良い色とされているそうです。赤とは違った静かなイメージで、上品な宝飾品が印象的でした。

魔を除ける場所

どこを守るのか。これにも、各国の共通点が見られました。

大きくふたつで、ひとつは、首元や袖口、裾といった“開いている”部分。だから、この辺りってたくさん装飾が施されているんだなぁ。魔が入ってきやすい場所の守りを固めているんですね。単にデザインのバランス的にそうしているのかと思っていた自分よ・・(まあ、バランスという面もあると思うけど)。

ふたつめは、背中や後頭部、頭頂部といった“自分では見えない”部分。背中にインパクトのある模様を持ってきたりするのにも、ちゃんと意味がありました。帽子の装飾を豪華にするのも、魔から身を守るため。
どこの国だったか失念してしまったけど、背中に他人からの邪視(嫉妬など負の感情の視線)をはね除けるという服があって、自然災害や病気だけじゃなく、負の感情も「魔」なんだよなと改めて感じました。現代日本を生きる私たちも、はね返したい「魔」ですよね。

おわりに

意図を鑑みながら見る服たちは、なんだかとても力強く見えました。厳しい環境で暮らしているからこそ、「魔を払う」というおこないはとても重要で、身に纏う衣服にも、様々な工夫や祈りを込めていた。
私は普段、自分の服のコーディネートは色や形のバランスでしか考えていなかったけれど、今日という日を生き抜くために、何か自分なりの「魔除け」をしてみようかな。それだけで、ちょっと強くなれるような気がする。

いろんな気づきをくれた展示でした。
ありがとう!『魔除け』展。

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