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「耳の調律」ー聴ける話を拡げるー

「耳の調律」オンラインワークショップ

2020年4月15日(日)、ナラティヴ協働実践研究センター(NPACC)でナラティヴ・セラピーを学び、実践している皆さんと一緒に、「聴くこと」をテーマにオンラインワークショップで学びました。

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「調律」に対する事前の印象

ワークショップに参加する前、「耳の調律」と言うタイトルを見て、次の印象を持ちました。

「耳の調律」に対する私の印象
 ▽ ズレてしまった耳(話の聴き方)を、ズレのない状態に戻す。
 ▽ ズレてしまった人がいて、ズレを直す人がいる。
 ▽ ズレてしまった人より、ズレを直す人の方が偉い感じがする。

私が勝手に思い浮かべた構図ですが、「ちょっと嫌な感じ」と思いました。

一方で、NPACCの国重浩一さん(Kouさん)が講師ですし、私を勉強会に誘ってくれた友人の優しい顔を思い浮かべると、「この勉強会で、嫌な思いはしないはず」と、絶対的な安心感を持ちつつ、開催される日を楽しみにしていました。

事前課題を読む

事前課題として、Hibel & Polancoの論文「耳の調律:ナラティヴ・セラピーのリスニング」を国重さんたちが和訳してくださったものを読みました。
(これは、Narrative Assembly<ナラティヴ・アセンブリ>に掲載されていますので、興味をお持ちの方はそちらをご参照ください)

論文を読んで初めて、「スーパービジョンの新しい手法」がテーマだと言うことを知りました。しまった。そこにはあまり興味を持てません…

もう支払ってしまったし、久しぶりにKouさんにも会いたいし。
「調律」+「スーパービジョン」=超ネガティブに心が動くけど、とにかく参加しよう。そんな風に思っていました。

ワークショップに参加して

当日は、Kouさんによる論文の丁寧な解説と、参加者同士のディスカッションから始まりました。

いつも不思議に思うのですが、「これは具体的にイメージするのが難しいなぁ」と、私の脳が考えるのをあきらめてしまっていても、講師のストーリーや仲間のストーリーが乗った解説や解釈を聞くと、言葉や事柄に対する理解が劇的に進みます。今回もまさしくそうでした。

Kouさんの解説と仲間とのディスカッションで、「ほほー」と思ったこと。
 ▽ 調律=チューンする=指向性を合わせる。
 「周波数を合わせる」なら、私もピンとくる。
 ▽ 「なぜあの人は、話を聴けないのだろう?」や
 「話を聴くことができない人」と、捉えるのをやめてみる。
 徹底的に肯定することで、より広く聴ける可能性につながる。
 ▽ どのような経験があって、何に周波数を合わせやすいのだろうと
 探求してみる。その人の耳に入りやすいことが何かわかる。
 ▽ いつもの周波数から離れてみたら、何が聴こえてくるのだろうと
 探求してみる。いつもと違う話が聴こえてくるようになりそう。

 ⇒ どうやら「ズレを直す」と言う概念ではないらしい。 

そして、論文で紹介されたやり方を、実際にやってみました。
まずは、デモンストレーション。その後に参加者によるワークです。

スーパービジョン(カウンセラーなどの対人援助者が指導者から教育を受ける過程のこと)と言うことをすっかり忘れるほど、私にとっては全く新しい試みであり、温かくて前向きな気持ちになれるワークでした。

ワーク「耳の調律マップ」

ナラティヴ・セラピーでは、「マップ」と言う表現がよく使われるそうです。マップ(地図)と言うけれど、今の私には「やり方」や「手順」の方がしっくりきます。ワークの進め方は、以下の通りです。

耳の調律マップ<説明の言葉は、まき流アレンジ>
 ▽ ステップ4 アクション:相手との会話と、ステップ1~3から
  見えてきた「今後の実践の可能性」について思いを巡らせる。
    ↑
 ▽ ステップ3 結果:さらに「聴ける」ようになるために、
  さらに聞いてみたい質問を探求するとともに、
  聴き損なったかもしれないものに意識を向け、言語化する。
   ↑
 ▽ ステップ2 意図:私が「聴いたこと」は、過去の
  どんな体験から選択されたのか、紐づけを考えてみる。
   ↑
 ▽ ステップ1 調律:「何を聴いたか」の確認。
  私の耳は、その話の何に周波数を合わせたか確認する。

実際に体験してみて、感じたこと・思ったことは次の通りです。

私の耳が Tune しやすい話題や感情の種類がある。
 例えば、「もがいた先に見つけた、無理のない幸せ」など。
他の方の Tune しやすいことの話を聞くことで、私の耳も
 それを拾いやすくなる気がする(できるかどうかは別)。
③ 「聴かない」には、2種類ありそうだ。
 「興味がないこと」 … 耳に入ってこない と
 「好きじゃないこと」 … 聴くことを避けている。
④ これまで生きてきた経験があって、私はこういう聴き方を
 する。それは良い・悪いとは別のものだ。

 ⇒ 「耳の調律」を行うことで、聴ける話が拡がりそうだ!

これからのことについて考える

誰かと話していて、「あー、またこの話になった。堂々巡りだし、どこにも辿り着かない感じがあるんだよね」と言う感覚を持った時、「私が耳を澄ましていないこと、周波数を合わせていないことはなんだろう?」と考えてみたいと思っています。もしかしたら、新しい話を聴ける(聴ける話が拡がる)のではないか、そんな気がしています。

もう一つ...
「これは、企業の管理職研修でやってみる価値がありそうだ」と感じました。管理職が部下の話を聞くとき、指導をするとき、その人の耳は何を聴き(何に周波数を合わせ)、何を聴かないのか。それは管理職個人の能力の問題と言うよりは、その人が生きてきた中で経験してきたことや現在置かれている状況から強く影響を受けていることを、無理なく知ることができると思いました。それを知ることで、管理職も部下も楽にコミュニケーションをとれるようになりそうな、そんな予感があります。

組織づくり支援や対人支援を生業とする仲間と一緒に、「耳の調律マップ」を使ったワークを作ってみたいな、と考えています。やってみたいな、と言う方があれば、ぜひご一緒しましょ!

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