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遠くからの祈り

おととい、カブール出身のアフガニスタン人の女の子(30代くらい)をZoomインタビューした。

コロラドの高校の体育で仲良しだったアフガニスタン人の女の子を思い出す。名前が思い出せない。アのつく長い名前だった。
クリスマスにはミントが入った大きなチョコレートをくれた。

「7年前にアフガニスタンを出て別の国に移り住んだ。安全のためにも今どこにいるかは言えない。」とのことだった。

震える声で、アフガニスタンの現状を教えてくれた。

「今はまだアフガニスタンにインターネットがあるから、家族や親友と連絡が取れている。でもそれも時間の問題。タリバンの資金的な問題で、彼ら自身も国全体をどうやってのっとればいいのか分からず混乱している。銀行も閉鎖し、お金もおろせない。国中のインフラが機能していないから、これからいつインターネットがなくなって家族と連絡がとれなくなるのかもわからない。」

「タリバンは山から来た人たちだから、言葉もうまく通じない。ラジオ局のディレクターが殺されたり、テレビ局から女性アナウンサーが解雇されて、タリバンが許可した内容しか流させてもらえない。まだ民放だけは女性アナウンサーが残っている。ほんの11日間でテレビからエンタメや音楽番組は一切なくなり、イスラム教の説法などのみになった。」

「20年前に同じようなことが起きた時には、女性は社会の一部としてみなされていないから、学校や病院に行くことも禁止された。具合が悪くなっても病院に行くことを許可してもらえなかった。婦人科といった女性の病気を理解する女性医療従事者がいなくなり、壊滅的な状況だった。親族の男性がついていないかぎり女性が外を出歩くことも禁止された。当時のアフガニスタンにはインターネットもなく、記録されないままに大勢の虐殺が起きた。」

「米国が約束した8月末までは撤退に協力するとタリバンは言ったが、ここ2、3日で暴力が激化し死人が出ている。8月末を過ぎて完全に国際社会的な存在がアフガニスタンから姿を消したら、残された人たちはどうなるのか。インターネットがなくなり、タリバンからの支配に怯える隔離された世界になってしまう。」

話を聞いているだけで心臓が痛かった。自分の親がもしそんな目にあったらと思うと、遠くから想うしかない彼女の気持ちが伝わってきて辛い。帰りのタクシーは、ただただ彼女とその家族に祈りを捧げた。

翌日オンエアを見てみると、彼女のインタビューは完全にカットされていた。邦人の安全状況を放送するためだったようだ。インタビューした相手の身元が知れないというのも理由だったのかも知れない。コメンテーターの人が、「日本にいると実感が湧かず、現地がどんな状況なのかわからないですね。」と言っていた。


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