弥立つ(いやたつ)
羽田空港に来ると、何か始まりを感じて、途端に華やかな気持ちになる。
何度訪れても、ワクワクが溢れるが、私にとって心を奮い立たせる特別な場所でもあった。
集合時間よりだいぶ早く行って、参加者名簿を何度もチェックする。まだお客さまが現れるわけもないが、不安と期待でドキドキが止まらない。
しばらくして、初めてのお客さまに「おはようございます」と声をかけると、お客さまの表情が緩んで、私の気持ちも落ち着き、一気に仕事モードになる。
無事ツアーが終わり、空港に1人になる頃には、心身くたびれてしまうのに、なぜか心は温かい。
体を休ませると、また次のお客さんを案内したくなるのだ。
あれから20年以上たった今では、旅は仕事ではなく、ふらりと楽しむものになった。
それでも今も空港に来るたびに、緊張に心を奮い立たせていたこと、体がじわっと温まるような感覚を、ふと思い出す。
空港のあちこちに思い出が散りばめられている。
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