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わたしはげんき

体調がわるそうに見えるが、元気な人がいる。
私のことだ。

中学生のころ、ひとりで下校していたところ通りすがった校長先生に声をかけられる。

「元気がないね」

私はとても元気だったので「いえ、元気です」と返したが、校長先生は

「いや、そんなことはない。元気ないだろ」

と信じてくれなかった。当時は腑に落ちなかったが、今ならわかる。私が極度に猫背だったので、肩を落として歩いていると思われたのだろう。

大人になったいまでもたまに似たようなことがある。今日は薬の営業が家に来たが、半年に一回程度薬の補充にきてくれるおじさんが、

「疲れてますね!これどうぞ」

と薬より先に栄養ドリンクの試供品をくれた。
ちがうんです。今日は化粧をしていないだけなんです。目の下のクマを消したり、ホホに血色を足したりしていないだけなんです。目がウツロにみえるのは、目下にキラキラを入れていればちがうんです。疲労で顔色がわるいのではないんです、と言いたい。でもいえない。
ああ、どうして。中身の元気さに見た目が追いつかないのか。

薬のおじさんが栄養ドリンク50本ケースを、玄関先に持ち込もうとしていたのでハッとする。
ああ、よかった。営業だった。わたし、つかれてなかった。おじさん、わたし、元気です。

それでもやっぱり自信がなくて、おじさんが帰ったあとに、白髪を染めるための美容院をさがしているのでした。

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