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無計画な転職活動をしたこと

短大を卒業後、6年ほど事務職に就いていた。

その仕事を辞めるまでに
一度だけごく短い転職活動をしたことがあって
それは思い返してもまぼろしだったかのように思えて
あまり人に話すこともない。

ただ、今でもふと思い出して考えることがあるので
今回はそのときの転職活動について書いておこうと思う。

四半世紀慣れ親しんだ文化圏からは一度出ようと思いたって、
会社を辞めることにしてからすぐに転職サイトに登録した。
職種も勤務地も限定しない。
仕事が決まったら引っ越せばいいという、
仕事ありきで、他のことはすべてがふわふとあいまいなままだった。

いざ始めてみると転職活動は案外面白かった。

自分のことを整理できるし、
経験のない仕事の情報や条件をみて
あれこれ空想することができた。

転職サイトに登録してすぐに
北陸のIT関連の会社とマッチングして
一次試験を通過して最終試験まで漕ぎつけた。
わたしは行けば受かるものだと思ってなんの対策もせず挑んだ。
なんなら試験後に金沢へ飲みいくことしか考えていなかった。
結果的には不採用だった。
わたしが当時の採用担当者の立場になってみればそれは当たり前である。
住所は4時間以上も離れた場所ですぐに働けるわけでもない、
なにができるのかも、働きたい理由もあいまい。
多分わたしの書類を通した人事のあの若い女性は後で上司から怒られたと思う。
本当にあの人には申し訳ないことをしたと思う。

不採用といわれるのはいつでも悲しい。

(でも、おかげで北陸を2回も訪れることができて、おいしいお酒を飲んだことを覚えている。)

一次試験の後は福井でへしこ。そのあと郡上八幡に寄って帰った。


最終試験の後は金沢おでん
名店ぽいところでぷりぷりの刺身も食べた。試験が終わってから合流する姉を車で迎えにいったのだけれど、たまたま交差点で止まったら、人混みのなかから姉がさっそうと現れてそのままピックアップしたことをよく覚えている。全然合流地点じゃなかったのに。家族の行動パターンはわかるのだろうか、すごい。

それから次にマッチングしたのが東京に拠点がある清掃会社だった。
仕事内容はマネジメントで、
砕けたイメージとしては掃除のおばちゃんをまとめあげるという感じだったと思う。
(実際そうであったかは別として当時はそう理解した)
書類のほうはすいすい通ってしまって
さあ面接の日取りはどうしましょうとなったときわたしはためらった。
あまりにもとんとん拍子にすすむし、
マネジメントという響きには重みがあった。

わたしはやりとりをしていた人事担当者に
「現在在職中で引き継ぎの関係上、調整中です」と本当のようなうそのようなことをメールで伝えた。

返信はきっと次の面接の日程調整だろうと思って身構えていたら、

「あなたの人生なので、やりたいことをしたほうがいいですよ」的な短い内容だった。

その人と個人的な内容のやりとりはしたことはなかった(と思う)。
直接会ったこともないし、顔も知らない相手だった。
それにその人がいいたかったのは
「はっきりしろよ!こっちは早く人がほしいんだよ。」
ということをオブラートに包んで
それをさらにスマートにしただけのことだったかもしれない。
真偽のほどはわからないし、
正確な一文も今となっては思い出せない。

ただ機械的ではない、人の言葉だった。
その印象は強く受けて
目が覚めたようにはっとして
正社員になるための転職活動をぱったりやめた。
それが自分が本当にしたいことではないことはわかっていた。
けれど、多くの人は会社員になっていて
自分もそうでなければならないと思っていたし、
そういう世界で評価されたい気持ちもどこかで必ずあった。
不採用という響きを悲しく感じてしまうくらいなのだから。

とにかくそのメールのおかげで
わたしは自分の居場所について改めて向き合うことになった。
それは、決断とか決意という行為よりは
組み替えたり、破壊したりすることに近かった。
ぶつ切りで考えてしまうことをゆるやかに繋げたり、
がちがちに固まっているものを柔らかくすることにした。
その結果、各地を住み込みで転々とすることになるのだけれど、その話はまた別の機会に改めて。

(住み込みをしようと思ったわけ▼)


今でも時折
あの人事担当者がどうしているか考えることがある。
出世したかな。転職したかな。
カリスマだったのか。恐ろしい上司だったのか。

これからも会うことはないと思うけれど、
おかげでのびのび生きていて
ときどきあなたのことを考えて
とても感謝しています。


わたしはいつも他者の言葉に背中を押してもらっている。
言葉をかけたことがあるすべての人に、
こんなふうにときどきあなたのこと思い出してる人がいるかもしれませんよ、と考えたりする。


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