高校の卒業式なんて一生来ないと思ってた


高校を卒業した。

卒業。

実感がない。この間入学したのに、と思う。3年間あっという間すぎた。こんなにも時は早くすぎて行ってしまうのか。

卒業式の前日、制服を着て薄暗い外を横目に仲のいい友達と思い出すことすら出来ない、何も無いことでゲラゲラ笑いあった。一瞬、これももう最後かと思った。そんなのどうでもいいくらいあの時間が楽しかった。余計、実感が無くなった。

エアコンが効きにくい教室で受ける授業ももうない。カフェインを求めて自販機にいくことも、トイレが混んでるから1階上のトイレにいくことも、スリッパで走って途中で脱げてシンデレラ!!!って訳もなく叫びながら走ることももうない。

意味がわからないくらい暑くて、背中にかいた汗がリュックの形になってそれを乾かすために、教室の扇風機を使ったり、廊下でハンディファンを使って先生に見つからないようにしたり、適当に髪を結んだり、登下校、焼けたくなくて日焼け止めを塗った上からアームカバーをして、日傘をさして荷物が多いながらに暑さに耐えたりした夏はもう来ない。

空が高くなって、まだ暑さが残ってるなか、中庭のおおきな木が葉の色を変え始めたり、制服を半袖から長袖に変えたり、髪を下ろす日が多くなったり、金木犀の匂いがして、これが金木犀!!!とか言ってた秋ももう来ない。

急に寒くなって、セーターにブレザーを着て、ひざ掛けを持ってきて、カイロを準備して、マフラーを首に巻いて、顔を真っ赤にしながら登校したり、寒いからって友達に抱きついたり、掃除の雑巾するのが地獄かと思ったり、1歩廊下に出るだけで寒くて寒い寒いって言いながら腕を組んで移動教室したりしていた冬ももう過ぎた。

体育でふざけあって息が出来なくなるまで笑ったり、授業中、席の前後で話したり、寝てるのをからかわれたりしていた日々がどれだけ愛おしいか。

制服を着た放課後は勉強であまり嬉しい思い出では無いけれど、夜まで残って勉強して、帰る時に疲れた〜って言い合って暗い階段を怖い〜!!なんて言いながら肝試しみたいに降りて、またね!明日も!気をつけて!って言いながら帰る夜ももう無い。

全部私の思い出でしかない。毎日、必死で生きていた。1日を噛み締めて生きていた。なのに、こうも早いものか。忘れたくない日々を忘れていきそうで嫌だ。この、校舎で制服を着て笑い合う毎日が幸せで、大切だと、気づいていた。だから、写真をいっぱいとった。残しておきたかった。でも、本当に残しておきたかったものは写真にも残ってなくて、私の記憶にしか残っていない。


卒業式、ふわふわしたまま入場の前まで来て、いつものように笑いあった。最後だど思いたくなかった。冷たい風に頬がピンクに染って、ただ、胸元に咲く花が異様に存在感を放ち、嫌でも卒業式だということを思い出させた。入場、したくなかった。

未だに高校生になったという事実が有り得ないように感じるのに、卒業なんてもっと有り得なかった。自分の人生で高校生になるなんてもっと、ずっと先でそんなのは遠くの未来で来るはずないと思っていた。なのに、もう卒業した。

卒業式が終わって教室に戻って、言葉を言う時も涙は出るのに実感はなくて、卒業に泣いてる訳ではなくてただ離れることが、もう、あの日常がないことが寂しくて泣いた。

みんなで写真を撮った。思ったより泣かなくて、思ったよりあっさりしていた。朝早くに起きてバスに乗ってまだ夜の延長のような街を見ることもない。普通にあった毎日がなくなって、また、違う普通の毎日が始まる。あの毎日を抱えて、新しい大切を抱えて生きていきたい。

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