後ろ向きに全力で走れ! ネガティブ曲プレイリスト大放出

「ぼっち・ざ・ろっく!」がとんでもない人気である。めちゃくちゃ良いらしい。ゲーム会社の同僚たちも大絶賛! 紛れもない最強の覇権のようだ。

まだ布教されたばっかなので、残念ながらまだアニメは見れてないんですけど、ちょっと曲だけ聴いてみて驚いた。俺が一番好きな「ネガティブ」ジャンルの曲ばっかり大量にある! ここは宝の山か!?

この「音楽としてのネガティブ具合」がまた絶妙で、「鬱曲ではない」んですよ。曲としてちゃんと勢いがあって気持ちいい。後ろ向きに全力疾走するのが一番テンション上がるんだよ。

で、まあなんか乗っかる形になるんですが、これまでの人生でずーっと集めてきた「その手の曲」を紹介します。このジャンルにこんなに日が当たる事って、今後そうないと思うので。ちなみに超メジャーなものから、入手困難なクソマイナー曲までごちゃ混ぜです。

(ネガティブさだけを基準に選ぶので、男性ボーカルも多く入ってます。"美少女の青春"ってジャンルで期待されると全然違うので注意)


忘れてやらない / 結束バンド

今回のきっかけなので結束バンドから。軽快な曲調から想像もつかない鬱屈ぶりに一発で掴まれた。まず冒頭が「曇天の描写」から始まるのが最高。そう、俺たちの心はいつでも曇ってる。もちろん晴れてないし、雨というほど劇的な悲劇じゃない。

「運命や奇跡なんてものは、きっと僕にはもったいないや」という言葉に、日陰者であるという自認が現れている。それでも何とか前を向こうと、気まぐれな一歩を踏み出せるまで待つことしか、できないんだよ。結束バンドは全部このニュアンスを守っててすごいね。他だと「小さな海」も好き。


だから僕は音楽を辞めた / ヨルシカ

YouTubeで1.4億PV、現代ネガティブ曲の金字塔。こんなに流行ったのが信じられないほど暗い歌詞。これに共感できる人がこんなにいるなら、もっとこの国は生きやすいはずじゃないのか??

「幸せな顔をした人が憎いのは、どう割り切ったらいいんだ」なんて、例えばツイッターとかで言ったらフルボッコじゃないですか。「幸せな人にも苦労が~」「幸せな人は相応の努力を~」とかクソリプの嵐ですよ。

でも俺の本音は、紛れもなく「こう」なんだよ。それが真実なんだよ。幸せな奴が憎くないわけないだろ。俺は真実を歌ってくれる人が好きだ。なお、それらの感情を全部乗せてカラオケでこの曲を歌ったら「メッセージ性が強すぎる」とドン引きされたので気をつけてください。


完全放棄宣言 / ナナヲアカリ

「ネガティブの調理」が上手いな、と思った一曲。ネガティブって基本的に毒物なので、原液のままお出しすると、抗体のない一般人は食べられないんですよ。そこでどうやって味を調えて主張を通すか、が作り手の腕にかかってくる。

この曲も「めんどい事なにもしたくない」というのが出発点にあるんだけど、「僕らはダメな天使」と絶妙にぶりっ子しつつ、お祭り風に歌っちゃうことでキャッチ―さを爆上げしている。なんだろう、生々しさがまったくない。上手くキャラクター化されている。このへんがウケるポイントなのかと思ったりする。


ミカヅキ / さユり

さユりさんはネガティブ系の楽曲が多い印象の方。この曲はちょうど最悪の気分だった時に友人から勧められ、心臓を射抜かれて気絶してしまった(オタク特有の誇張表現)。でもそれくらいヤバイ。

「それでも誰かに見つけて欲しくて、夜空見上げて叫んでいる」なんて、俺が一生やってる事だよ。そう、こんなに自分はクズなのに諦めきれない。その最悪の根性と熱量が、全編に詰まっている。


不可解 / 花譜

バーチャルなボイスロイド? の花譜さん(ごめん詳しく知らない)。キャラクター化するならアイドル方向が売りやすいだろうに、この子は、その可愛らしい声で強烈にパンクなことを歌いだすので惚れてしまう。

この曲は前半がほぼ「語り」なんだけど、その鬼気迫る息遣いに、この幼い少女が自分の「生」に必死であることがありありと伝わってくる。


覚えてていいよ / KOTOKO

サビまでいくと「辛い事を無理に忘れなくていい。好きなだけ泣きわめいて、ゆっくり元気になっていいよ」って感じの「許し」の曲なのだが、そこに至るまでの鬱屈ぶりがすごい。

「予定表だけは完璧だった、なのに今日も何してたんだろう」「神はあっけなく、そっぽ向いたまま、わけの解らない敗北感だけをくれた」とか、身に覚えしかない。テーマの前提となる失敗と苦悩が、実際にあったんだと思わせる迫力がある。


はたらきたくない / 打首獄門同好会

地獄みたいなバンド名で、ほのぼの曲を歌い続ける人たち。地に足のついた日常の辛さをポップに歌うことが多い。この曲は何かのゲームのタイアップ曲で、一応PVもそれに沿ってるんだけど、歌ってる内容は現代社会の我々に共感できるものだ。

「自分のペースを握れないまま巻き込まれがち」とか、経験がないと書けない歌詞だと思うのよ……。「はたらきたくない」ってワードもずっと連呼されるし。でも最後は「明日がまたくるね、いい日だといいよね、ワクワクしたいよね」と明るく締めてくれる。調理が上手い。実際のとこ、我々ネガ族だって真の本音で言えばそうだ。本当はワクワクしたいのだ。


かつて天才だった俺たちへ / Creepy Nuts

「苦手だとか怖いとか、気づかなければ俺だってボールと友達になれた」という冒頭の掴みがバツグン。俺たちは相対評価の中で現実を知り、可能性が減っていくばかりの人生を送っている。それでも「俺らは大器晩成」と信じ続ける希望の曲でもあるんだけど。

今や飛ぶ鳥を落としまくっているCreepy Nutsが、人気爆発する前の最後のタイミングくらいの曲。この次のアルバムが、露骨に成功者の曲になっていたのが、あからさますぎて趣深かった。でも俺は「助演男優賞」「スポットライト」の頃のくすぶってたR指定が好きだった。


鴨川等間隔 / 岡崎体育

ネタ曲もいっぱい書いてる岡崎体育の、おそらく初期の多分かなり素直な曲。鴨川の川べりに等間隔に座ってイチャイチャしているカップルを、片っ端から蹴落としたいぜ、というストレートな僻みである。素晴らしい。

途中「それくらいの許容や容赦を育みたい」みたいになるのだが、ラスサビで結局蹴落としている。「こっちは橋の上から見下ろしてるのに、見下されている」という対比も美しい。どうも大学生が主人公の歌なのだが、俺は30代となった今でもこの心を持ち続けてしまっている。誰か殺してくれ!


dreams NEVER come true / POARO

POAROという、古いオタクでも限られた人しか知らないユニットのマイナー曲。声優ラジオで有名な鷲崎健さんが作曲やボーカルをしている。音源はほぼ入手不可、カラオケには一部の曲だけが入っており、この曲はナシ。今や聞く手段すら限られている。

それでもこの曲を紹介したい。「誰かの恋バナ、めんどくさすぎるんだ」「修学旅行ヤダ、めんどくさすぎるんだ」とめんどい連呼した後で「気が付いたんだ、子供の頃にあこがれた漫画のヒーローに……は、なれないんだ」と落とす。

そしてサビで「夢は叶わない」をひたすら連呼。「誰も言わないが、夢は叶わない」「本当は叶わない」としつこく強調する。そう、本当に夢が叶う事なんてない。俺は作家になる夢は叶ったけど、売れなかった。ゲームデザイナーになる夢も半分くらい叶ったけど、結局やり手になれない。

学生の頃の原初的な夢が叶うことなんて、ないのだ。なお、作詞の伊福部崇は、後に声優の洲崎綾と結婚している。大成功しとるやないけ。


穀物の雨 / 谷山浩子

古くは「みんなのうた」から、一部ではホラー系の怖い楽曲などでも有名な谷山浩子さん。「穀物の雨」はホラーともまた違っており、ファンタジックながら静かで大規模な「滅び」を描いた曲だ。

「奴らか僕かが、いなくならなければ。そうだ。そうだ。そうだ」と言い出して、穀物の雨を降らせると、ビルが崩れて町が終わってゆく。最終的には星まで止まってしまう。この「奴らか僕かが」という前提がメッチャいい。そう。行く着くところって、そこなんだよね。どっちでもいい。俺が死ぬパターンでもいい。とにかく終わりにしてくれ。早くしろ!


スーパーオンライン / 鉄風P

ボカロPとしてはメジャーではないが、一部にコアなファンのいた鉄風P。早々に引退されてしまい寂しかったが、とても名曲が多い。「スーパーオンライン」は、ネット上での活動の難しさや、評価と承認欲求の噛み合わなさ、その相手が不特定多数ではなく、知り合いであることの複雑さを歌っている。

「聞きたい言葉が聞けなくて、世界の全て敵になる」。こんなん創作者なら誰もが通ってきた。「中途半端な優しさで、君の心は乱れたね」「中途半端な僕だけが、君の傍にはいられない」。そうやって承認をうまくやり取りできなくて、何人も友達を失ってきた。嗚呼。


Rain / 茶太

これも「夢が叶わない」系の曲。ネガティブ界の鉄板テーマだ。「やり方を変えて、すべてを変えて、すべてを捨てて、でもできなくて」「だけど時計の針は容赦ないほど早く進んで」「色あせていく、あの頃の夢も遠ざかるばかり」……。プロ作家になれず、くすぶっていた頃に聴いから破裂しちゃったよ。


夜な夜な夜な / 倉橋ヨエコ

「夜は自己嫌悪に忙しいんだ」という強烈なキラーフレーズを持つ名曲。なんで夜なんだろうね。一人でゆっくり考えられるからかな。誰かから承認を得られた確証がないと、今夜の予定も全部「自己嫌悪」で埋まってしまうので助けてください。


ボーリング / 高橋優

「福笑い」「明日はきっといい日になる」で有名な高橋優の、初期で死ぬほど尖ってた頃の曲。この頃の彼の曲が好きでね……。

「今日だけ職場が消滅しちまえばいいのに」「働かなくてもおいしいご飯が食べたい」「僕にだけ都合のいいように、世界が回ってくれりゃいいのに」と、"""真実"""を調理なしでそのまんま歌うため、劇物のような曲になっている。

とにかくインパクトがあるので、カラオケで歌ってもまあまあウケるのだが、歌詞が"""本当すぎる"""ため印象が強すぎ、当分の間「ボーリングの人」として認識されてキャラ付けが確定してしまうので、覚悟を持って歌ってください。


というわけで以上、色々紹介してきました。こういう曲はずっと募集しているので、まだまだあったら紹介してください!

こういう「ぼざろ」ブームみたいなのが来ると、俺のようにずっとネガティブな創作を封じられてきた身としては「時代が追いついたか!?」と期待しちゃいがちなのだが、実際のところそんなブームは永遠に来ない。

結局、純粋な「闇」になりきれる人間なんて1%もいなくて、ぼっちが流行ったのだって、それが「美少女の青春」だからだ。YOASOBIの「夜に駆ける」をあれだけの人数が聴いたって、自死ブームなんか来なかった。俺たちは孤独なまま、発露のやり方を永遠に探し続けるしかない。

やっていきましょう。人生を。人には人の地獄がある。みんな違って、みんな死ね。今年もお世話になりました!!


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