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チャック部分がびちゃ

最寄り駅の近くに「せんべろ出来ます」と、のぼりが目立つ居酒屋があることを少し前から気にしていた。
看板を覗くと、小鉢ではあるが五種類もつまみが出てくるわ、ドリンク二杯ついてくるわで1000円という気合いの入った内容で、これで人を呼び込むぞと、覚悟のようなものを感じた。

この剛速球をなるほどねぇと高校球児を物色するスカウトマンのように、この店でいいか見極めていたが、まだ開店時間にはなっていなかったためひとまずコンビニで待機しようと動き出した。

居酒屋からコンビニの間にも何軒かお店は並んでいて、看板を見ながら歩いていたら、途中の焼き肉屋で「せんべろ出来ます。20時までハッピーアワー」なんて文字を見つけてしまった。足を止めると、こっちはこっちでマカロニサラダ、キムチ、焼肉(ホルモンなら4種類二枚、赤身肉なら4種類一枚)が1000円で楽しめるってきたもんだ。各店舗から僕への誘惑を感じる。さっきまで大将が頭を悩ませながら、これでもくらえ!とボールをぶつけてくるイメージを持っていたが、どちらかというと手招きする女将のように感じてきた。空腹を食らうサキュバス。

これまたやるますね。と思いながらも時間の関係で、コンビニに避難するも居酒屋と焼肉の三角関係に悩んでいた。最初から決めてましたと居酒屋に行くのか、ちょっと待ったと結婚式で新婦が奪われるように、自分の心を奪った焼肉にするか。

携帯で調べていくと、居酒屋は2杯お酒飲めますよと謳ってはいるが1杯目しかビールは選べないらしい。焼肉の存在を知ってしまった僕からすると、味の濃いつまみにビールは必須アイテムで、最低でも2杯は飲むなと見当がついている。頭の中では「まぁ二杯目レモンサワーですとなってもいいんだけどさ」とブツブツ言ってはいるが、やっぱり捨てきれない気持ちがあった。

じゃあ、焼肉はお酒も飲めて焼肉なら100点に近いつまみとせんべろに感じてきた。ただなぁ…。1000円の金額で話してきたのに、こっちはハッピーアワーではあるものの、二杯目を考慮しながら考えてる節があるから、そもそもちょっと有利なんじゃないか?やビール二杯に対してつまみの追加注文があるとすると必然的に3000円くらい見といたほうがいいのか?と考え始めてしまう。

女将の誘惑、大将の剛速球を色んな理由でのらりくらりしていると、チャック付きのたこわさびが売っているのを見かけた。ここはコンビニ。自分でカスタマイズが出来る楽園。チャック付のたこわさびは食べきれなくても明日に置いておけるし、個別包装のつまみを買えば、いつでも食べれる。ビールだって発泡酒を選べば500mlを2缶だって買えてしまうし、駄菓子をつまみにすれば大物のメインにコストを割くことが出来る。気づいたときには、コンビニでビールを選んでいた。

コンビニでオリジナルせんべろを買って家に帰る。意気揚々とたこわさびの封を開けて、皿に移したが肝心のチャック部分に調味液やらわさびが付いて、さっきまでコンビニにしようと決定づけたキーポイントが無残な姿になった。チャックがあるからといって、保存しようと思う自分が悪いんだなと全部出してその日に食べ終えた。

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