恵まれている




デートの帰りみち

きれいなおうちへ帰る

おとうさんのいびきが聞こえる

家族がみんな家で寝ていて

スマホには好きな人からの返信の通知



わたしは

ともだちから
後輩から
先輩から
好きな人から
顔も知らない人からさえ

たくさんの人に好かれて

そこからわたしは ひとの選別をする



幸福




リビングの壁を見ていた

きれいな カーテン

汚れのない 白い床と壁



そこには 幸福の 無気力な悲しさがあって

わたしは泣きたくなった



なんだか なにかが 不安で


なんだか わたしだけが悪いやつのように思えた




同じことの繰り返し




一度うそをつけば

うそだったという告白さえも

言い訳として罪になる




溜まったメッセージの通知


つぎの誘いを断らなくちゃいけない

わたしは また罪を犯さないといけない






人を平等に愛したい


かんたんな意気込みでこころが変われば
どんなによかったでしょうか



複雑な人生を所有する生きものと話すとき

削れていかない心があったら
どんなによかったでしょうか



まるでビッグバンのように
無から生まれる奇跡のような

特別な だいすき がなければ

どんなによかったでしょうか






わたしは大罪人です









いまの私の幸福は

かみさまが
私の罪に気付いていないからあるだけ









だれにも好かれず

だれも好きじゃないわたしは

清廉潔白だった


ひとを傷つけなかったから



みんなが先に わたしを見切ってくれていたから







苦痛には 依存性がある






苦しんでいないわたしを


残念がるわたしがいる


裁こうとするわたしがいる




同じことの繰り返し





ぬるま湯に浸っているときの

おだやかな絶望


ぜいたくな 浅い 憂鬱




わたしのことを殺して欲しい


わたしのことを知らないひとに

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