「"砂の狩人"ベフナーム襲撃隊」(月刊『連邦の国防』667年2月号より記事抜粋)


 第91任務部隊、通称"ベフナーム襲撃隊"は、リューリア作戦後の619年に、偵察行動及び帝国軍後方に対する攻撃を目的として、指揮官にザイリーグ人のナセ・ベフナーム中佐を迎えて設立された。
 ベフナーム中佐は東部パンノニア方面軍作戦参謀を努めており、帝国軍との激しい陸戦の中で、敵陣後方に侵入し撹乱する小部隊の重要性に気付いていた。同じ頃生じたリューリア作戦での敗北により連邦軍は艦隊戦を仕掛けることが不可能となり、彼の意見を聞き入れて部隊を設立した形になる。
 中核をなす第501独立特殊偵察大隊はA~Iまでの9個小隊と中隊本部からなり、ABC小隊はダッカーを、D~H小隊は軽車両を運用し、I小隊は整備と通信を行った。これに空軍から輸送機とレイテア偵察機の部隊が加わり、任務部隊が形成された。
 広大な砂漠の中ほとんど無補給で活動するため、強靭な肉体・精神と砂漠への慣れとが求められ、全隊員が志願によって集められた。当初はザイリーグ人のみだったが、後にアーキル人戦車兵やアナンサラド人特殊部隊員なども加わった。
 主な任務は偵察と襲撃であり、400機以上の航空機、大型輸送艦10隻分以上の物資、12の輸送基地と20の飛行場を破壊した。活動地域が広大だったことから帝国軍は航空機による捜索を盛んに行ったが、同部隊はこれを逆手に取ってトラックにハリボテを被せただけの偽戦車部隊を走らせてこれをわざと目撃させるなどして戦力規模の欺瞞を図り、その活躍は帝国軍司令部に「連邦軍は皇国と手を組み、山脈に隠したトンネルから連隊規模の部隊を送り込んでいる」という妄想を抱かせるに至った。

・装備
 敵後方への輸送の関係上重装備は用いることが出来ず、以下のような軽量小型の車両が用いられた。ほとんど整備なしでも動く信頼性の高い車両が重宝された。


ムシャ高機動車
 装甲を持たない軽車両。3輪輸送トラックを改造した車両で、キャビン上部が取り払われ機動性と視界の向上がなされている。機銃や機関砲を搭載しての襲撃によく用いられた。

無題246-1

カルバラー5輪トラーク
 ごく普通のトラーク。物資輸送や隊員の輸送に用いられた。任務の都合上補給を受けることが難しいこの部隊にとって、部隊に随伴する大型トラークは文字通り生命線であった。55mm砲を搭載したタイプも用いられた。

ダッカー快速豆戦車
 ごく普通のダッカー。整備出来なくてもほとんど壊れず、高い機動力を持ち、輸送機で運べるほど軽量なダッカーにとって、遊撃任務は天職であった。

無題251-3

ケルマン軽輸送機
 タンデム翼の小型輸送機。小型といってもトラークなどを積める程度の大きさはある。部隊を送り込んだり逆に撤収したり、本国からの物資を補給したりとワークホースとして活躍した。鈍足だが運動性は戦闘機並みで、ヒグラートの複雑な地形を縫うように飛ぶことで帝国軍の監視網をすり抜けた。

レイテア偵察機
 高い機動性を活かして偵察を行うほか、ちょっとした物資の輸送や負傷者の搬送、強行着陸による襲撃、小型噴進弾による対地攻撃の任に就いた。壊れにくい上、工具箱の中身でほとんどの故障が修理可能な点が特に高く評価された。

 この他にハリボテ戦車や仕掛け爆弾、チヨコ入り生体器官用栄養液(破壊工作に用いた)など一般の部隊では用いない武器を盛んに用いることで、帝国軍を効果的に撹乱した。

 ベフナーム襲撃隊は621年の暫定停戦まで活動を続けたのち、"第91常設特殊任務部隊"に発展。連邦構成各国陸軍の偵察部隊に対してサバイバル、戦力の隠匿と欺瞞作戦、効果的な襲撃などについて再訓練を施すとともに、623年の暫定停戦崩壊時にはパンノニア戦線に配属され、帝国軍の対パンノニア大規模攻勢である「極光作戦」への対応に従事した。

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