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ILY,cultureのひとつ"海外Lab"から生まれた、香水プロジェクトの軌跡

Hello, people.

デザイナーのしゃちです。
今回、取り上げるのは、ILY,が創業時から行っている「Lab」(ラボ)について。
創業メンバーとして数々のLabに参加してきた私ですが、中でも思い入れがあるのは、2018年にタイで行った海外Labです。今回は、当時のことを振り返りながら、「Labってどんな活動なの?」といったことをご紹介したいと思います!

そもそも海外Labって何をするの?

Labは、ILY,が社内で行っている全社員参加型の“自由研究”です。自ら発見した課題に対して、リサーチやディスカッションなどを通じてソリューションを導き出し、具体的なプロダクトを企画して、社内外のプレゼンテーションでアウトプットする、といったものになっています。

都内の会場で丸一日かけて行う国内Labのほか、2017年からは新たなチャレンジとして、海外でもLabを行うようになりました。

海外Labでは、参加メンバーを2~3人ずつのチームに分け、チームごとに設定した課題にトライしていきます。
タイのラボでは、全部で3つのチームができました。現地で実質的に活動できたのは3日間。そのあいだは原則、チーム単位での自由行動です。最終日の全体プレゼンに向け、リサーチやディスカッション、アウトプットのための準備をして過ごしました。

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タイのLabで生まれた7色の香水「fan dii」

商品名は「fan dii」(ファンディー)。タイ語で「おやすみなさい。よい夢を」という意味のある言葉です。7種類の香りを1箱にした1週間分の香水セットで、月曜日から日曜日まで、毎日の就寝時に異なる香りをつけて楽しんでもらうというプロダクトになっています。

コンセプトは「わたしをとりもどす、一週間」。 忙しい一日を過ごしたあと、心地良い香りを身にまといながら眠りにつき、夢の旅の中で自分の内面にある本来の自分自身を、1週間かけて取り戻す……というストーリーを打ち出しています。

このプロダクトのポイントは2つ。

1つ目は、7種類の香水にそれぞれ異なる色がついていることです。
タイには、1週間の各曜日に色が設定がされているという、非常にユニークな文化があります。例えば、月曜日は黄色、火曜日はピンクといった具合。また、「自分が生まれた曜日の色を身につけていると幸運が訪れる」という言い伝えがあるなど、タイの人たちは色と曜日の関係性をとても大切にしているんです。
「fan dii」の7つの香水の色は、そうした曜日の7色に対応しています。さらに、それぞれに自分を取り戻すストーリーの軌跡を表すような名前と、名前のイメージに合った香りを選びました。月曜日の「旅のはじまり」(レモングラスの香り)でスタートし、最終日の日曜日は「人生の喜び」(セージの香り)です。

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ポイントの2つ目は、コンセプトの源泉となった、タイの豊かな精神文化です。
タイでの考え方や気質は「タンブン」(=仏教的な徳を積むこと)や「マイペンライ」(大丈夫、なんとかなる)といった言葉で表されることがあります。また、これらとも関連があるのか、マインドフルネスの考え方が浸透しているのもタイの特徴です。
「こうしたタイの文化的な豊かさを日本にも持ち込めないだろうか」という発想が、企画のベースになっています。忙しい日々に追われている現代日本の女性の方々に、「悲観的にならなくても大丈夫。きっとなんとかなるよ」というメッセージを送ると同時に、ゆっくりと自分に向き合う心豊かな暮らしを提案したい。そうした想いも「fan dii」には込められています。

意外な「タイらしさ」の発見は現地のスーパーで

このプランが生み出されるまでには、実は、かなりの紆余曲折がありました。

プロジェクトのスタートになったのは「タイらしさって何?」という問題関心。1日目はタイの街中を歩き回り、スーパーマーケットやショッピングモールを訪れてリサーチしてみたものの、なかなか取っ掛かりを見つけることができませんでした。言葉の壁があり、現地の方へのヒアリングがほとんどできなかったのもネックでしたね。チームによっては出国前からデスクリサーチを進めて課題を絞り込んでいたところもあった中で、遅れを取ってしまった焦りもありました。

しかし、2日目に大きく前進するような出来事が。

再び街を観察していると、スーパーマーケットの商品棚が驚くほどカラフルなことに気づきました。例えば、シャンプーやお菓子のパッケージを見てみると、ひとつの商品で、フレーバーや機能がまったく同じであるにもかかわらず、それぞれに5~7色のカラーバリエーションがあるんです。この点に興味を惹かれてWEBでリサーチしたところ、あの「曜日の色」の文化に行き着くことができました。「タイ料理」「寛容なジェンダー文化」といった一般的なイメージの陰に隠れた意外な「タイらしさ」の発見に、3人のメンバー全員が口をそろえて「絶対、これしかない!」と言い合ったのを思い出します。

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この「タイらしさ」と、タイ人の気質を組み合わせた提案をしよう、という発想に至ってからは、どんどんディスカッションが盛り上がっていきました。チームのテンションがピークに達した瞬間で、今思い出してもワクワクします!

ビジュアルにもこだわりを。ロゴに込められたメッセージ

さらに、アウトプットでの見せ方にもとことん注力しました。たまたま、私たちのチームは3人のメンバーが全員デザイナーだったこともあり、プロダクトをより具体的にイメージさせるようなビジュアルで、他のチームと差別化しようと考えたんです。

特にこだわったのは「fan dii」のロゴ。繊細なフォントにきらびやかなゴールドを使うことで、マインドフルネスのやわらかな印象を持たせつつも、タイのきらびやかさを伝えられるようにしました。自分を思い出す旅に向かう、女性の美しい姿を投影できていればと思います。

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最終日のプレゼンテーションでふたを開けてみると、やはり、私たちのチームはちょっと変わったアプローチで、他のチームにとっては目新しさがあったようです。ビジュアル面でのこだわりも功を奏して、手応えは抜群でした。

帰国後の新展開!プロダクト化まであと一歩

実は、この香水プロジェクトのお話には続きがあります。

帰国後、ILY,の周年パーティで海外Labでの企画をプレゼンしたところ、パーティに参加いただいたお客様から、香水の製造を手掛けている企業さまをご紹介いただけることに。そして、「fan dii」の現実化に向けて、プロジェクトをさらに進めていくことになったんです……!

これまでも、Labからはさまざまな企画が生まれていましたが、具体的なプロダクト化に向けて活動が発展したケースは、この香水プロジェクトが初めて。私たちが企画した香りを実際に調合してもらうなど、アイデアが形になっていくのを目の当たりにする日々は、実にエキサイティングでした。

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最終的に半年ほど取り組みを続けたのですが、香水の製造ロットとの兼ね合いや、在庫の保管スペースの確保といった課題があり、結果的には製品化に至ることはできませんでした。現実的なハードルを越える難しさを痛感しましたね。

ただ、逆にこれらの問題を解決できさえすれば、再び製品化に向けて走りだせるはず。いつか一緒に取り組んでいただけるパートナー様を見つけて、きっと「fan dii」を世に出したいと思っています。

DESIGN, for good days.なオリジナルプロダクトの誕生を目指して

Labにはこれまでも何度も参加してきましたが、今振り返っても、タイでのLabは本当に刺激的でしたね。「少人数のチームで、しかも超短期間のプロジェクトの中で、自分はどこまで貢献できるのか?」という力を試されたようにも感じます。
チームの中で自立した視点を持ってインプットすること、それをスピーディにアイデアとして昇華すること、さらに適切に言語化してアウトプットすることを強く意識させられたタイでの日々。3日間の“全力疾走”を終えたときには、この一連のサイクルを回すスピードや精度をぐんと上げられたことを実感しました。

これからも、海外Labを含めたLabの活動は継続していきます。また、今回は惜しくもかないませんでしたが、今後はLab発のソリューションを、過去の企画も含めて、ILY,オリジナルのプロダクトとして現実化していきたいですね。そのために、さまざまな業界の企業さまとより多くのつながりを持ち、コラボレーションの可能性を探っていければ幸いです。そうした中で、ILY,オリジナルプロダクトが実現するのも、そう遠い未来ではないと信じています。

Thank you. We love you.

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