忘れたくない

忘れたくない憶えていたいと
どんなに強く願っても
いつしか風化していくものだから

何度でも鮮やかに
忘れてしまった何かを思い出すために
人は音楽を聴くのかもしれない

忘れたくない憶えていたい
たとえ誰かの記憶から
消えてなくなってしまったとしても
長い長い時を経て
思い出せなくなってしまったとしても
何度でも鮮やかに

忘れたくない憶えていたい
その笑い声をその仕草を

雨の中暗がりに
滲む公衆電話を
いつまでも見つめている