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あの家

あの家の前を通るといつも
聞き覚えのあるジャズが流れている
鬱蒼とした木々に覆われた玄関
小さく咲いた薔薇の花
書斎の椅子に腰掛けて
音楽に身を委ねる初老の男性を思い浮かべる

あの家の前を通るといつも
静謐な空気が流れている
よく晴れた日の午後も
霧雨に覆われた日曜日の早朝も
微かに聞こえてくるのはいつも
ビルエヴァンスやデュークエリントン

あの家の前を通るといつも
どこか寂しそうな顔をしてグラスを傾ける
古い友人を思い出す

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