閉めても閉めても
サーカスの幕は閉じて
ぼんやり灯る電球は
もうずいぶんと長いこと
点滅を繰り返している
星の見えない夜のように
ほら もうすぐあの暗闇が来る
もうすぐだ わかっている
獰猛な獅子は眠りにつき
ほら もうこれでおしまい
楽しかったでしょう?
夢みたいだったでしょう?
ほら もう全部箱に仕舞って
ほら もうこれで全部
ほら もうこれでおしまい
目を閉じて眠るの
楽しかった思い出だけを
曖昧な記憶だけを
胸に仕舞って
暗闇に浮かぶのは
あの夜の満月と
やわらかなあなたの声
閉めても閉めても
また開いてしまう
確かに閉めたはずなのに
目の前の暗闇に
夜の海が広がって
閉めても閉めても閉まらない
箱を抱えてわたしは歩く
砂にまみれて裸足で歩く
いつまでもどこまでも
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