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死体の状況だけを考える、今市事件。

※刺激の強い表現が含まれるため、閲覧にはご注意ください。
 栃木小1女児殺害事件(通称今市事件)は2005年12月1日、栃木県今市市に住む小学1年生の女児が下校中に行方不明となり、翌日の12月2日に刺殺体となって行方不明現場から60km離れた茨城県常陸大宮市の山林で発見された事件である。
 女児は下校途中に家の近くの三叉路で友人と別れ、その後行方がわからなくなる。三叉路から120m行った砂利道に曲がる場所で警察犬が反応を示さなくなったため、その近辺で誘拐されたものと考えられている。

行方不明になった三叉路

 12月2日、山林で野鳥観察をしていた老人3人が遺体を発見する。その後、別件の商標法違反容疑で逮捕された男が事件への関与を仄めかす供述をしたため逮捕、その後有罪となり無期懲役が確定している。
 この女児殺害事件については冤罪が強く疑われるため、様々な情報が開示されており、遺体の状況から犯行状況について考察と妄想を深めたい。

●遺棄の状況について
 通報を受けて出動した茨城県警の実況見分調書によると、下校中に同級生と別れ行方不明となった日光市木和田島の三差路付近から約60km離れた茨城県常陸大宮三美のヒノキ林に遺体は全裸で遺棄されていた。
 午前中に林にメジロなどを捕りに行った男性3人がマネキン人形のようなものが横たわっているのが見え、不思議がって近づくと全裸の女児の遺体だった。警察に届けたのは午後になってからで、午前中には死亡が確定したということになる。
 遺棄現場は「おおみや広域霊園」という看板を見て右折し、2kmほど行くと現場の山林に入るための左折路がある。そこは車1台分がやっと入るだけの道であるが、イノシシ狩りや鳥打ちの名所として地元の人の通行は少なくなく、決して人里離れた山林というわけではないらしい。
 遺棄した人物はこの辺りが全く人の往来はないところと踏んだのであれば地元の住民ではない可能性がある。ただし、周辺を知らないとそうそう踏み入るような場所ではない。

遺棄現場
遺棄現場
遺棄現場の状況

 遺棄現場は林道から降りる斜度約30度ほどのやや急坂だ。道から入って斜め左方向に下がる方向に血痕が滴下しており、周囲に血だまりや血しぶきのような跡は全くなかった。
 また、遺棄現場付近に血溜まりの形跡はない。あったとしても数グラム程度であったとされている。ルミノール反応は落ち葉の形に沿うように発光していたとのことだが、落ち葉に含まれる酸化鉄により発光した可能性がある。更に、遺棄された女児の足の裏は綺麗だった。

綺麗だった足の裏

少なくとも遺体の状況からもここは殺害現場ではないことは確実だろう。

 この日の女児は4時間目に授業が終わり、給食を食べ14時15分頃に下校、14時30分ごろに三叉路で友達と別れた。遺体が発見された場所は行方不明になった旧今市市から車で1時半から2時間はかかる距離である。誘拐現場から往復で3時間以上はかかる距離だ。
 遺体を発見したのが仮に9時ごろだとしても行方不明になってから遺体発見まで18時間ほど経過していないことになる。
 遺体の死後硬直は進んでおり、背中が浮き上がり、右肩が上がった形の斜め向きで、左右の上肢が左側に垂れ下がり、さらに首をかしげるように下肢は左右の膝関節が斜めになってこれも左下に垂れ下がるように曲がっているような形をしていた。

遺体の姿勢

 死後硬直は、法医学では「早期死体現象」と呼ばれ、全身の筋肉が硬くなる現象だ。死後2時間くらいから現れ、死後6時間で固定化し、12時間から36時間にピークを迎える。それ以降から次第に緩解していく。ということは死後硬直の形状は死後6時間から12時間ごろの死体の体位を表現していることになる。
 この状況を想像するとまさしく下写真のような状態となる。手足には粘着テープで拘束されていた痕が残っている。殺害時からすでにその状態であったことが想像される。

このような体勢だった可能性が高い

 筋肉は死後すぐはおよそ1時間くらいはまったく脱力した状態になる。現場で殺害し、直後に遺棄したとすれば、斜面に沿った姿勢で死後硬直があったはずである。

●食事
 科学捜査研究所が鑑定したところ、胃の内容物にワカメ、ニンジンのかけらが含まれていたということが判明している。

胃の内容物

 被害者は12月1日の午後零時半ころから午後1時過ぎころまでの間に給食でわかめ御飯、ミートカボチャ、ゴボウサラダなどを食べていた。
 成人男性が600kcalの食物を食べると3時間ほどで胃の中は空になると言われている。12月1日の午後12時ころが最後の食事だとすると、3〜4時間後の午後5〜6時ころまでに死亡したと考えられる。誘拐からかなり早い時間で殺害に至った可能性が高い。

●胸部の傷
 前胸部には10箇所の刃物による刺し傷があり、死因は失血死とされる。死因にあたる遺体の胸の傷は、ほぼ同じ方向を向いており、8箇所は刺入口に切創は伴っておらず、ほぼ垂直に刺入され、同じ方向に引き抜かれていた。
 犯人が凶器を持ち替えたり、被害者が体位を変えた痕跡はなく、被害者の体勢は非常に安定していたとされる。胸骨を貫いたものが2、胸骨、肋骨で止まったものが1、胸骨を貫いたものが右心室を貫通していた。

番号は刺した順番ではないらしい
傷の状況

 胸の中には大量の血液が固まったまま残っていた。遺体内の残存血液は少量で、心臓は蒼白であった。
 小学生女児の体重の平均値はおよそ18〜20kg、人間の血液量は1kgあたり80mlと言われており単純計算でも1600mlの血液量のうち、裁判では1000mlの血液が流出したと言われている。
 しかも、血が凝固しているということはまだ生命反応があり、生存中に血液の凝固作用が働いたことを意味するが、胸部の傷に対して暴れたり防御した傷が見られない。激痛に対して反射的に体を逸らそうとした形跡がないうえ、感情的に滅多刺しにしたようにも見えない。
 それらは最初の傷が的確に致命傷だったのか、全く身動きができない状態に拘束されていたのか、それとも仮死状態に近い状態だったのかを意味する。
 傷も左側の胸に集中している。手を前に縛られた状態で左を下にし横を向いた状態では腋に近い部分は刺せないだろう。出血の後からも仰向けの状態で刺されたと考えられる。真正面から刃を刺すためには刃を横に向けないとこの傷にはならないため、おそらく仰向けの状態で横に座って刺したのだろう。
 傷の深さから凶器は刃渡り約10cm前後の細身の片刃の刃物と思われる。バタフライナイフのようなものでは幅が太すぎ、警察は和製の刃物と考えていた。となると下のような「繰り小刃」のような形状の可能性が高い。

繰り小刃
刃渡り10cmだとこの程度のサイズになる。写真はペティナイフ

どうも激情に任せて刺した、というふうに見えない。猟奇的な殺人と見せかけるために作った傷であれば、目的は殺害自体ではないことになる。
 女児の遺体を解剖した筑波大学法医学教室の本田克也元教授は性犯罪の可能性も考え遺体の下半身、特に膣の中まで検査をしたが解剖鑑定書には「外陰部には、損傷異常を認めず、姦淫等を示唆する所見はない」と性犯罪はないことを明記していた。
 性犯罪目的でないとするなら身代金目的であるが、誘拐後犯人から家族に宛てた連絡はなかった。誤って死亡させてしまった可能性があるとしてもわざわざ血塗れになる必要性はないだろう。
 顔には爪で引っ掻いたような表皮剥離があり、左眼の周辺はブラックアイ(殴られたような痕)であった。

顔の状態

 左眼窩部周囲には左右が6.5cm、上下が3cmの青紫色の皮膚変色部があり、左外眼角部から上方約0.6cmには、径が3ミリ程度の線状表皮剥脱を含むやや変色の強い部分があった。さらに左外眼角から左下方1cmの部位には、左右が1cm、上下が0.3cmの隋円形乃至三角状の表皮剥脱がある。この表皮剥脱は、ほぼ面上で比較的凹凸がなく、平面状である。
 おそらく犯人は出会い頭に殴り、昏倒させた可能性が高い。バールのようなもので殴ったのだろうかとも考えたが、それだと眼窩を抉ってしまう。先の丸まった槌状のもので斜めに振り下ろしたため右下方向に表皮が剥離したようにも見える。鈍器だろう凶器についてはさらに考察を深める

●粘着テープ
 この粘着テープは、女児の髪の毛に付着していた貴重な物証のひとつである。髪に貼られた位置は、右ほおから左ほおに達する線上の皮膚変色の部位とほぼ同じ高さであることから、粘着テープは後頭部までぐるぐる巻きにされていた可能性がある。

粘着テープの状況
採取された粘着テープ

 この粘着テープは、遺体の検視の際に女児の頭部から見つかったもので幅約5cm、長さ約5.5cmの四角状である。この粘着テープからはDNA型鑑定の試料が発見されており、このDNA試料は唯一犯人に繋がる貴重な物的証拠だ。
 粘着テープの右耳に近い位置にある切断面は、反対側と比べて凹凸であり、引きちぎった時にできる切断面と類似している。
なお、公開されている画像を見るとテープの跡は鼻尖(鼻先)上まで痕跡がある。ここまで粘着テープを巻いていたのなら、目の下までテープがぐるぐる巻きにされていたことになり、これでは呼吸ができない。

どう考えても粘着テープの位置はこうなる

 もしかしたら女児は、窒息もしくは低酸素状態になったのではないだろうか。拉致後から粘着テープによる窒息で低酸素状態となり意識を失っていたのだとしたら、刺突に対して強い反応がなかったことにも説明がつく。
 更に顔や首の表皮剥離はかなり乱暴にテープをちぎり取ろうとした痕跡に見える。すでに死亡した状態でちぎり取ろうとしたのであれば急ぎ、焦っていたため剥がし損じが生じたのだろう。もしくは、女児が意識を失ったために慌てて剥がそうとしたのか。

●DNA鑑定
 同県警の科捜研は3回にわたって鑑定を行い、女児以外の少なくとも2人に由来するDNAを検出した。ところが、よく調べてみると被害者以外に検出されたDNAは、鑑定に携わった科捜研の職員2名による細胞に由来するものだった。この2名は素手で試料を扱っていたのだろうか、そうだとしたら話にならない。
 DNA鑑定は1990年代後半から国際的に開拓されたSTR法(Short Tandem Repeat)により行われている。細胞分裂の直前に細胞核内に現れる染色体には、ごく短い塩基配列が繰り返される遺伝子部位が無数にある。このうち特に短い反復配列(2~5塩基)を単位とする部位(STR)に着目し、各部位ごとの配列の反復数を調べる方法だ。

DNA鑑定のイメージ

 この検査法ではさらに常染色体の15部位のほかにアメロゲニン遺伝子(歯のエナメル質を形成するタンパク質)を解析すると男女の違いがわかる。
 試料からY染色体の検査が行われたが、結果は不検出と記載されている。つまり試料の元は男性ではない可能性があるということだ。女性による犯行が疑われる。女性による犯行なら、性被害がないのも納得できる。

●遺留物
 凶器であるナイフや女児の頭から見つかった布製粘着テープの残り、また女児が下校中に身に着けていた衣類、黄色いベレー帽など遺留品は何一つ見つかっていない。
 しかし、ランドセルと靴についてはとても怪しい報道がある。

当時のニュース映像
当時のニュース映像

鹿沼市のゴミ収集所にミッキーマウスのキーホルダーが付いたランドセルとピンクの靴が捨てられていたという報道だ。

当時配られた情報

 それによると、鹿沼市内のごみ捨て場で、事件直後に赤いランドセルが捨てられていたことが12月7日にわかったということだ。鹿沼市内に住む67歳の女性によると、普段使っていた近所のごみ捨て場で、ポリ袋に入れられた赤いランドセルとピンクの靴が台の上に置かれているのを見つけた。
 当日は燃えるごみの日で、ごみは台の下に置くルールのため不審に思い、下に移し回収された。ランドセルにはミッキーマウスのキーホルダーが付いていた。捜査本部はミッキーのキーホルダーが付いたランドセルなど有希ちゃんの所持品の詳しい特徴を公開。女性は同じ品だと気付き、栃木県警に通報したという。
 ゴミに出すなどよほど急いでいたのだろうか。それとも廃棄する場所や機会が犯人にはなかったということだ。
 犯人は一人暮らしではない可能性がある。衣服はまだ見つかっていない。血塗れの衣服はどこかに捨てられたのであろうか。刺す前にすでに脱がされていたとするなら何のために一度全裸にしたのか。ランドセルと共に捨てられていたのだろうか。
 自分に繋がる手がかりを除去するために全裸にしたり粘着テープをわざわざ引きちぎったのであれば、ランドセルの捨て方はかなり適当だ。これも処理に困り焦っていた印象がある。それとも、満たされれば後はどうでもいいのか。

●猫
 女児の遺体には猫の毛が付着していた。この猫の毛は現在収監されている勝又受刑者が飼っている猫のミトコンドリアDNA型が同一のグループに属するとして有力な情報とされた。
 証言台に立った麻布大学獣医学部の村上賢教授は、猫のDNA型を71グループに分けた場合、570匹で3匹が該当する程度で出現率は約0.5%と説明したが、これは検察側のよく使う手法で数字のトリックである。
 0.05%はいかにも希少に思えるが、2021年に一般社団法人ペットフード協会によって調査された「全国犬猫実態調査」によれば現在飼い猫は894万6000頭にも登る。この0.05%は44730頭、どこが一体有力な証拠なのか。
 検察側が被告の飼い猫の毛だと指摘する遺体に付着した獣毛について、被告側の鑑定人が「被告の猫のDNA型は国内で約2割いる種類であり、毛の同一性の議論は不適切」とも証言している。
 また、進化ウイルスを研究する京都大准教授の宮沢孝幸氏は遺体に付着した獣毛について、「DNA型のデータからは、遺体の獣毛と被告の猫とは一致せず、被告の猫に由来しない可能性が高い」と証言した。真犯人は猫を飼っている可能性は充分にある。

●スタンガンの傷
 右側頭部にある表皮剥離については、勝又受刑囚の家にあったスタンガン(の空箱)による傷であるとされた。
 この線状の表皮剥脱は、右の下顎から右側頸部にかかる部分、右の耳介の下付着部分の下やや後方3cmを上端とし、その部位から上下方向に長さ3.5cmの範囲には、4個の線状の表皮剥脱があり、やや屈曲を示している。
 先端がやや鋭利な爪やその他のやや鋭利的なものによる損傷と考えられている。

外傷痕の位置関係
実際の外傷痕

 (の空箱)と記述したのは受刑囚の倉庫から見つかったのはスタンガン本体ではなく、正確にはスタンガンの空箱だからである。
 しかし、見つかったスタンガンを使ったとしても実際の傷よりスタンガンの通電部の幅は広くこのような傷になりようも無い。さらにスタンガンは感電装置のため傷は通電による熱傷であり、挫傷ではない。

スタンガンによる熱傷痕
スタンガンによる熱傷痕

●妄想と考察
 捨てられたランドセルが女児のものだとすると犯人は鹿沼市近辺に住んでいる可能性が高い。
 獣毛があったため、猫を飼育しているかもしれず、軽自動車もしくは軽トラックを所持している。
 遺体の遺棄状況からすると、かなり拉致から早い時間に殺害されている。
 しかも、性犯罪ではなく、胸部を刺すことに快感を感じるサド気質である可能性がある。せっかく幼女を手に入れたのに弄んだ形跡がないからだ。
 殺害後、大量の血液をシャワーなどで流し、速やかに遺棄している。
 犯行の手順としては、鈍器で殴り、拘束、車で連れ去り刺殺する。衣類を剥ぎ取り、遺体のみ捨てている。どうも犯人は特定の小さな刃物刺すのが好きなのだろう。

 そして、この事件はどうも冤罪で、まだ犯人は次の目標を探している可能性が高い。なぜかというと、類似の事件が過去に起こっているからだ。この事件はさらに考察が続く。

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