「宗教に隠れた真犯人」名古屋市親子3人行方不明事件
1989年7月26日午後から愛知県名古屋市千種区城山町に住むルメイヤス・科乃(しなの)さん (30歳)と長男ダライくん (3歳) の行方が分からなくなった。その後、親子と同居していた無職の長尾宣卓さん (34歳)も行方が分からなくなった。
ルメイヤス・科乃(しなの)さんは1985年にオランダ人男性と結婚し、姓が「ルメイヤス」に変わっている。長男ダライちゃんを出産後1988年4月に別居、その後夫は妻子を残してオランダに帰国している。
そして1989年ごろ、環境保護活動などを通じて長尾宣卓さんと知り合い、友人から泊めてやってほしいと頼まれ、その後同居していた。
7月26日 13時ごろ
科乃さんは名古屋市名東区にある父親の会社に8月分の生活費を取りに行っている。科乃さんは定まった仕事には就いておらず、収入は父親に頼っており、毎月25日か26日に父親の元を訪れていたそうだ。
15時半ごろ
父親は科乃さんに電話連絡をした際に、「27日夜から4〜5日、四国へ自然食関係のイベント『塩の祭り』を見に行く。私のワゴン車で長尾宣卓さんに連れて行ってもらう。向こうではキャンプする」と話していた。
21時ごろ
隣に住むニュージーランド夫婦に科乃さんが四国旅行のことを話している。
7月27日
長尾宣卓さんは科乃さんの自宅の大家に「家賃を振り込みたい」と電話をしている。大家が「今すぐには口座番号が分からない」と答えると、長尾宣卓さんは「明日にもまた電話する。科乃さんと子供の2人は先に旅行に出発した。自分もこれから追いかける」と言っており、急いだ様子だったという。
7月28日
隣のニュージーランド人夫婦により長尾宣卓さんは28日頃まで科乃さんの自宅に1人でいるのを目撃されている。
10月10日
科乃さんのワゴン車が名古屋空港近くの駐車場に預けたままになっていることがわかる。車内には旅行で使うはずだったキャンプ用品や、科乃さんが旅行の食料を入れるために友人に譲ってもらった発泡スチロールなども残ったままだった。ガソリンはほぼ空っぽの状態で、領収証などから最後に給油されたのは7月20日だったことがわかった。科乃さんは普段は運転しないため、ガソリンは26日から29日にかけて消費されたと推測され、最大で130キロ圏内を移動した可能性が考えられたため、範囲内の関係箇所を調べたが手がかりはなかった。
駐車場の担当者は7月29日に男性が1人で来て、8月10日までの料金9,000円を支払い、福岡に行くと話していたという。その男性が長尾宣卓さんと同一人物かは不明である。警察は国内線の旅客名簿を調べたが3人とみられる乗客はいなかった。
11月18日
父親が捜索願いを警察に提出し捜査が開始された。科乃さんの自宅では6畳間の畳に最大で牛乳瓶一本程度の血痕が見つかっている。一か所畳に20cm四方程度で、もう一カ所は押し入れの布団に2cm四方程度の血の染みが残されていた。血液型はB型で科乃さんの血液型と一致したが、当時の技術により、科乃さんの血液かは完全にはわからなかった。争った形跡はなく、バッグと財布はなくなっていたが、へそくりの34万円の現金は残されていた。直筆の旅行計画メモがくずかごから発見されている。調べにより「塩の祭り」には参加していないことがわかった。
科乃さんと長尾宣卓さんの関わっていたとされる宗教団体についても調べたが、手掛かりはなかった。さらにワゴン車のタイヤに付着していた土を分析したが、手がかりはなかった。
科乃さんの家には仏教やヨガ、自然食品や有機農法の書籍が大量にあったとされるのと、長尾さんが関わっていた宗教はオウム真理教だとされている。
長尾宣卓さんは大学中退後、デザイン関係の仕事をしていた。科乃さんとは1889年初旬にキャンプに行った先で知り合い、自然食、環境保護問題など関心分野が同じで意気投合したそうだ。その後長尾さんは住んでいた名東区から科乃さん宅に引っ越した。家賃など生活費は科乃さんがほとんど負担していた。科乃さんは7月下旬に両親に「男性からプロボーズされたが、受けるつもりはない。1週間ぐらいしたら出て行ってもらうつもり」と話していたそうだ。
なお、自宅のカレンダーはほとんどが空欄だったが、7月だけには意味不明の単語が並んでいた。
妄想と考察
どう考えてもこの男性が事件に関わっていることは明らかだ。他には強盗が押し入り、親子を刺殺した可能性もあるのだが、それでは行方不明後の長尾さんの行動が意味不明すぎる。身近な人間の犯行であれば人間関係のもつれが原因のことが多く、プロポーズの答えを迫り、断られたことで逆上した可能性が高そうだ。
1989年のオウム真理教は坂本弁護士一家殺害事件を起こしており、かなり過激な宗教に変化してきている時期でもある。オウム真理教関係による犯行も否定はできなさそうだ。ただし、組織ぐるみで犯行を隠匿しようとするというよりは、この男性が独りで慌ただしく隠匿行動を取っているように見える。
あまりにも考えが浅かったためか、家賃を滞納することで発覚を防ごうとしたのだろうが、わざわざそれを大家に尋ねることで逆に不審な行動となってしまっている。この行動は逆効果で後に警察が調べれば不審だとすぐにわかるため、かなり短時間で考えたシナリオで混乱していたことが想像される。
さらに、へそくりがそのままなのは、本当の強盗や空き巣の犯行ではなく、科乃さんは他人で同居人である長尾さんにわからないところを隠し場所にしていたためだろう。
彼女たちが先に旅行に出発したと言うのは明らかに虚偽であり、26日夜から27日の大家への電話までに母子は殺害されたと考えられる。28日から29日までの間に彼はワゴン車を使って遺体を遺棄したのち、空港に預け、空路を利用したと見せかけようとした。
おそらく、遺体はワゴン車が遺体を捨てて名古屋空港まで帰ってこれる130キロ圏内に存在する可能性が高い。
そして、このカレンダーの書き込みを信じれば、7月26日に飛行または脱出し、7月30日に空港から出発すると言うことになるのだが、なぜわざわざオランダ語で書く必要があるのか。科乃さんはオランダ人と結婚したが、オランダ人ではない。母国語でない言語でわざわざ書く理由は、それを見た人がわからないようにするためか、オランダ人がわかるようにするためだ。長尾さんにわからないようにするにしては、わざとらしすぎる。元夫の犯行であると見せかけるためだろう。
このカレンダー、他の月はほぼ真っ白なのに7月だけ書き込みがされていたらしい。筆跡鑑定では科乃さんのものではないことがわかっている。おそらく、捜査を撹乱するために、長尾さんが書いたのだろう。
色々と画策したのであろうが、家賃振り込みの電話で全てが台無しとなっているのだ。この男、宗教施設に潜伏してないだろうか。改名などして宗教家として今も活動しているのではないか。
この男が全てを知っている。
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