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ききかえす


 「あはぃなふぃっ?」
これを、もっと早く、瞬発的に放った言葉が、私の“他人への聞き返し方”だ。
「はい?」では感じが悪い気がするし、「なんですか?」だと強すぎる。
「すみません、もう一度お願いしてもよろしいですか」は面接かよとツッコミたくなるし、「なんて?」はもうお友達。
そうなると私は、「あはなぃふぃっ?」を瞬発的に発したような、言葉としては「はい?」にも「なに?」にも「ん?」にも聞こえる奇声を発する。

 今日もその「あはなぃふぃっ?」を発する機会があって、(あっこの人は、言葉を聞き取れなかったんだな)と悟ってもらい同じことを繰り返し聞いてもらったのだが、その瞬間にふと我に返った。
(もしかして私は今まで、友達以外の他人に「言葉が聞こえないと奇声を発して知らせる人」だと思われているのではないか…?)

 そこからはもう、他の人の話など入ってこない。人への聞き返し方の追求である。
しかしながら、そこまで大した話をしているわけでもないのに、仰々しく「お手数ですがもう1度よろしいですか」などと聞くのはなにか違う気がする。急にATMで取引中止を言い渡された気分だ。
もう少し軽めな言葉は前述の通りで、そのどれもが敬語や聞き返す際の適切な言葉に値するとは思えない。

 そうなるとやはり、「あはなぃふぃっ?」なのだ。高速の、瞬発力次第な、「あはなぃふぃっ?」。
自分の発言や質問に対して、この人は答えになっていない奇声をあげた。つまり、今の質問が聞こえていないんだな…?と、質問者は判断してくれる。
急に言語能力と知能が2くらいのサボテンになり変わったわけではなければ、壊れたおもちゃでも出さないような音と言葉は発しない。
半ば、相手の想像力次第ではあるのだが、今のところ失敗に終わった記録はない。

 この先も私が、急に「あはなぃふぃっ?」と言い始めたら、(あっもう一度言いますね)と心の中で呟いてから、「その聞き返し方、変だよ」と教えてください。
うん。どう頑張っても、この聞き返し方は間違っている。


 

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