オレンジの呪縛。トータルフットボールの源流について
物事をシンプルに考えようとする癖は、
サッカーとビジネス書と禅からによるものだ。
ともすればスティーブ・ジョブズもオランダサッカーに心酔する一人であったかもしれない。
きっかけは些細な事だが、
サッカーゲームで行き詰まった時、
果たしてサッカーとはなんぞや?と哲学的思考に陥り、戦術ブログに行き着き、戦術本を読み耽り、球を相手ゴールに入れるだけの至極単純な、それ故に奥深い沼に片足を突っ込んでしまったのである。
オランダサッカーを好きになったきっかけはこの本の呪縛によるもので、昨今のシティなど源流を辿ればこの70年代のフットボール革命に行き着く。
トータルフットボールという言葉は、サッカーの一つの理想として今も語り継がれているが、それを体現した者は未だいないのではないか?
理想主義の潔癖がいつまでも漸近線を超えられないように、
女神の後ろ髪はいつまでも遠い。
人々を魅了する美しいサッカーという概念は、クライフがミケルスから受け継ぎ、クライフがバルサに持ち込んだ哲学であるが、オフサイドルールからのサッカー史において、攻撃偏重だったハンガリーが得意とした5、60年代のWMシステムなどから一気にスポーツとして洗練されていった。
今その最新はクライフイズムの申し子、グアルディオラによって更新され続けているが、ポゼッションという言葉では表せない、バルサ時代の偽9番、バイエルン時代の偽SB、シティでのポジショナルプレーという概念はしっかりと哲学を引き継いでいらように見受けられる。
よく弱いチームが自陣にべったり張り付いて守りを固めたりする時、イニエスタなどがフットボールじゃないと批判することがあるが、そのチームの行為は思考停止の勝利を諦めた行為であり、サッカーとは勝利の為に思考し続けるスポーツである事から、しばしばサッカー好きから批判される。
記憶に新しいワールドカップの日本対ポーランド戦の終了間際のパス回しも槍玉にあげられたが、愚策ではあったが勝ち上がる為のものであって勝負を放棄したわけではないのだから非難される謂れは無かった。自国故の甘言かと思われても仕方がないが、自分の国でなくともそう思う。
イングランドにありがちなキックアンドラッシュやモウリーニョが嫌いなのは、サッカーとして美しくないからだ。
話が逸れるので割愛するが、どんなものでも型にはめるトップダウン方式はいずれ廃れる。
さて、一通り自分のサッカー観を話したので、本の内容に着手するが、
オランダサッカーの思考、トータルフットボールの源流が生まれた背景を、オランダのお国柄、歴史的背景、建築様式、国民性などの見地から切り取った興味深い内容の本である。
良い意味でも悪い意味でも、自分達のサッカーがある事を、サッカー後進国の日本からすれば羨ましくもあるが、その呪縛故今の迷走があったりもするのだから考えものである。
ファン・ハールが前回のワールドカップでオランダらしさを壊した所為だと今でも思っている。
オランダらしさとは、前述のトータルフットボールの追求に他ならないが、これは単に全員攻撃全員守備という安直な話ではない。
走り回るな、ボールを動かせ、ボールは疲れない。という言葉や、シャビがよく口にするスペースと時間。という言葉から分かる通り、創造的であり、瞬間に繰り広げられる芸術とも言えるべき行動の選択にこそ、トータルフットボールの要素が含まれていると思う。
個人的な解釈で言うと、
トータルフットボールとは、
将棋やチェスのように何十手先のプレービジョンを全員で共有し、
各々が適切な役割、ポジショニング、動き出し、パス、切り替えを行い、90分間勝つ為の思考を続ける事ではないかと思っている。
思考しながら90分間走り続ける事はフルマラソンより肉体的精神的ダメージが大きいと言うが、本当にそうなのだろう。
だからトータルフットボールは理想であっていつまでも手の届かないものとして存在するのだと思う。
そう言った理想を追求するスタイルが結局の所好きだし、
それに必要なクリエイティブな選手を見る事が好きです。
全然真反対のインテンシティ特化型のクロップのリバプールやRBライプツィヒも好きですが、それは逆方向から勝利の為の哲学を体現しようとしているからだと思います。
戦術はサッカーの一要素でしかなく、
あくまで手段の一つですが、
データ分析が著しく成長した近代では、日々トレンドの戦術が更新され続けています。
そうして研ぎ澄まされていく戦術が果たして、トータルフットボールを体現し得るのかを遠巻きから覗くのが密かな楽しみです。
そうしてオレンジの呪縛に取り憑かれた僕は、ウイイレのマスターリーグを延々とやり続け、アナリストのツイートを散見し、ああでもないこうでもないと喋り続けるのです。オレンジの呪縛ってそういう意味じゃない。
時計じかけのオレンジが、もう一度世界を魅了してくれる日を願って。
しーんぎいんざれーん。
終わり。
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