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日当マイナス4000円

 この記事を就労移行支援施設に今後も通うかどうか悩んでいるあるアライさんに捧げたい。

 
 京都市の町はずれにある自転車保管所から高い金を払っておいらは自転車を回収した。かなり高かった。その日の稼ぎはマイナス4000円となった。今までの人生で一番酷い日だ。もう、なんにもしない方がいいだろう。それからしばらくしておいらはカラオケ店の清掃のバイトを辞めた。

 
 ことの発端は就労移行支援施設から紹介されたカラオケ店の清掃のバイトである。アル中の老人上司、無口な若い上司、そして仕事がまったく出来ない知的障害のある人とおいらは働いていた。トイレ掃除を誰もやりたくない。そして知的障害のある同僚はトイレ掃除のやり方を全く覚えられないのでずっとおいらがトイレを掃除していた。カラオケ店のトイレの汚さは前も言ったと思う。使用済みコンドーム、吐しゃ物、カラの酒瓶の山だ。それを毎日片づける。それだけでこたえた。


 それより何よりこたえたのが自転車代である。このカラオケ店、職員専用の自転車置き場がないのだ。京都駅の自転車置き場(有料)の値段は高い。5時間ほどとめると800円ほどになるのだ。結果的に上司も同僚も近所の空き地や団地にとめたりしていた。するとどうなるか?答えは簡単である、撤去されてしまうのだ。そして撤去された自転車を保管する場所はだいたいの地域でも同じだが、どこにあるんだよ!ていうかどこ?聞いたこともねえ土地だぞ!ってな辺鄙な場所にある。そしてその日は稼いだお金は結果としてマイナスだったわけだ。


 上司に罵倒され、土下座させられ、ずっとトイレ掃除をする。カピカピに乾いた使用済みコンドームを引きはがしゴミ袋にいれる。吐しゃ物は専用の固める薬品か何かで粉末状にしたあとほうきで片づける。悲しいがこれが就労移行支援施設から紹介された人の個性を活かす職場なのだそうだ。この件以降おいらは完全に働く気をなくしてしまった。そこから立ち直るまで何年もかかった。ちなみに他の職場も経験したがどこも似たり寄ったりであった。なのでおいらは就労移行支援というものをあまりよく思っていない。実際、あまり評判は良くないようでgoogle検索すると『就労移行 意味ない』と出てくる。


 その施設に通った時間にも何か意味があると思いたい。でも楽しいことよりつらいことの方が多かった。そして何より個性を活かす職場とやらにはとうとう出会うこともなかった。あるアライさんが就労移行に通っているが日に日に弱っていっているのでこの記事を書いた。おいらだって今ではちゃんとした職場で働いて、1人暮らしをしている。君にだって出来る。そう伝えたかったんだ。あとそういった施設の実態なんかも伝えたかった。週2でもいいからバイトしてみないか?君なら出来るはずだ。


 

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