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フリーランス総合診療医 、島医者になる①『そもそも総合診療って??』

1.総合診療科って何??

みなさん、“総合診療科”ってどんなところか知っていますか?

大学病院などの大きな病院では、循環器内科(心臓・血管系)、消化器内科(胃や大腸、肝臓など)、呼吸器内科(肺や喘息など)といった“臓器別”に専門が分かれており、それらの専門医は『スペシャリスト』と呼ばれます。

でも、もし皆さんが具合が悪くなった時・・・自分がどこの専門医に診てもらったらいいのか、判断できますか?

たとえば、突然「お腹が痛く」なった時
原因が胃腸炎のこともあれば、実は心筋梗塞だったり、女性であれば婦人科系の病気であったり、考えられる病気は多岐に渡り、診察や検査をして初めて分かります。

そうした、自分がどこにかかったらいいか分からない時、まず窓口となるのが
私たち“総合診療科医”であり、スペシャリストに対して『ジェネラリスト』
と呼ばれます。

総合診療科の仕事は、症状から原因を考え、疑わしい病気の専門医へ的確なタイミングで患者さんを紹介すること。
そして、治療を終えて安定した患者さんが、再発しないように日常的にフォローしていくのも総合診療科医の仕事です。

私が総合診療科医であることを知人や患者さんに話すと、ほとんどの人が「総合だからなんでも診れるんだ!すごい!」と言われます。
ただ、なんでも診られる・・・というとニュアンスが少し違って、
具体的な病気の治療についてはその道のプロである専門医へお任せしますし、まさか外科の先生のように手術ができるわけでもありません。
『様々な症状から原因を見つけるプロ』といった感じでしょうか。

でも一番イメージしやすいのは、皆さんの家の近くにもある、いわゆる『町のお医者さん』。クリニックや診療所の先生たちは、「これはおかしいな?」と思ったら大学病院に患者さんを紹介してくれる、まさにジェネラリスト。
子どもから高齢者まで、予防医療から看取り医療まで、皆さんの生活のほんの一部を医療で支えるのが町医者(=家庭医ともいいます。こんな私も家庭医療専門医)なのです。

総合診療科は比較的、新しい分野ですので、実際には病院によって役割が違います。
総合診療科といいつつ、やってることは救急医療だったり、感染症科だったり、渡航者医療(ワクチン外来)だったり。
ある意味でとても幅広い分野なので、比較的自由に自分の好きなことを見つけたり、私のように飽き性で一つの分野だけを突き詰めるのが苦手な人には最適と言えます。

2.なぜ、総合診療科医になったのか?

では、なぜ私が総合診療科の道に進んだのか?

実は医学生時代には、循環器内科や脳神経外科での実習が楽しくて、研修医になってからもどっちの道に進もうかとギリギリまで悩んでいました。
夜中でも緊急で呼ばれれば華麗な手さばき(?)でカテーテル治療や手術をこなす先生たちが、とてもカッコよかったからです。

しかし当時の私には、興味のあること、やりたいことが沢山ありました。
プロフィールにも書いてある通り、学生時代からずっと船医になりたいと思っていましたし
トラベルメディスンと呼ばれる海外感染症やワクチン、海外への患者さん搬送などにも興味がありました。
研修医になってからは、夜の当直業務が楽しくて(20代は若かった…)、救急科もいいなぁと思ったり。。

そんな迷える研修医2年目の春のこと。
トラベルメディスンについて勉強したいと思っていた私は、大学の公衆衛生学の先生の紹介で、某大学病院の総合診療科医であるY先生と出会いました。
その時はトラベルメディスンのお話を聞いただけなのですが、『まだ進路が決まってないんだったら、うちの医局に遊びに来ない?』と誘っていただいたのです。
この出会いが、私の医者人生の一つ目の分岐点となったことは間違いありません。

「総合診療科かぁ・・・なんだか難しそうだし私には無理かも」と思いつつ
Y先生のお人柄もあり、医局へ見学に行き、毎月ローテートしている研修医の歓迎会にも参加させていただきました。
その日、外来診療を見学しながらY先生に言われたのが、

「これからは高齢化社会。高齢者は沢山疾患をもっているから、一つの疾患しか診られないと、受診する患者さんが大変だよね。今後はジェネラリストの時代だよ!」

この言葉を聞いて、ハッとしたのです。
一生懸命勉強して医者になったのに、「自分は一つの臓器しか見られない」なんて、もったいないのでは?
さらに、臓器別専門医の資格を取るには3〜5年程度の後期研修医プログラムを終えなければならず、その間はひたすらガムシャラに働き、もちろん地方への異動もあります。

でも私には、前述した通り興味があり勉強したいことが沢山ありましたので、
総合診療科なら自分のやりたいこと全部できるじゃない!と思ったのです。
その後、何回か病院見学や歓迎会に参加し、ついに総合診療科へ入局することを決めました。

3.伊豆大島版Dr.コトーへの憧れ

私が総合診療科に入局を決めたもう一つの理由。
それは、『うちに入れば、伊豆大島に行けるよ』という先輩からの言葉でした。
当院の総合診療科は伊豆大島の大島医療センターと提携しており、3ヶ月〜半年程度の出向があったのです。

「伊豆大島?離島医療??なんだか楽しそう!!Dr.コトーみたい!」

当時、伊豆大島がどこにあるかも知らなかった私。
お気づきの方もいるかもしれませんが、ヒトと違った珍しいことが大好きな私は、
“離島医療”という言葉がとても魅力的な響きに聞こえ、これが入局の決め手になりました。

この時、当初半年間と言われていた出向が
まさか自ら2年間に延長し、その後も離島医療にどっぷり浸かることになるとは
私自身、全く思ってもいませんでしたが・・・


次回は、私の伊豆大島との出会い、離島での仕事や生活についてお話ししていきます✨
つづく


Reiko🐋🌺

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