【無料公開中】その1 司会

司会という仕事がある。
司会。MC。マスターオブセレモニー。

呼ばれ方は様々あるけれど、「司会とは何?」と聞かれ、すぐにはっきり答えられる人は少ないのではないだろうか。

はいタイムオーバー!もう終わり!
「すぐに」ですから!はい残念!
そんなじっくり考えたら誰でもそれっぽい答え出せちゃうから!

このように、なかなか司会の仕事というのはよく分からないものなのです。

辞書で調べてみましょう。

「会合の進行を、おもてだって受け持つこと。また、その係。」

なるほど。
おもてだって受け持つね。
うん。

曖昧にわかった。

テストで「金閣寺を作ったのは誰?」と聞かれて
「足利の誰かです」と答えたらきっとバツになる。

しかし「司会とは何?」と聞かれた場合は
「なんか会を進行する人」と答えたら大抵マルになると思う。

きっと先生も曖昧にしか分かってないのだ。

欲張って「会合の進行を、おもてだって受け持つこと」と答えたら
きっとカンニングを疑われることになる。

司会は難しい。



その難しさの要因となっているのが「会によって求められる対応が変わる」からではないだろうか。

結婚式の司会であれば、基本はフォーマルに。そしてタイムキープも完璧である必要がある。
エンタメイベントの司会であれば、参加者やお客さんを盛り上げ、場を楽しくすることがより大切になるであろう。

もしドミノ倒しギネス記録に挑戦イベントの司会であれば、盛り上げつつも、基本小声。
参加者の邪魔をしないとても繊細な進行が必要になるはずだ。

ちびっこ相撲大会の司会の場合は負けた子への配慮やデモンストレーションで行われる前年度の優勝者との試合でぼっこぼこにされるところまでが司会の仕事として求められるかもしれない。

司会の仕事は多岐にわたる。
そのすべてに柔軟な姿勢と優れた判断力が求められる。

更にそれがよく分からないイベントの場合は本当に難しい。

「全日本ワールドヌホホベット競技会地区予選打ち上げ」というイベントがあるとしよう。

きっと依頼された時点でぼくなら泣きだしている。

全日本なのにワールドとは?
競技会ということは何かしらを競い合う大会なのだろうか?
地区予選とあるが、一体何回戦まであるのか?
そもそも地区予選終わったくらいで何故盛大に打ち上げをするのか?

「このままじゃおもてだって受け持てない」とスマホで事前に調べようとするも世間は残酷である。

「ヌホホベット に一致する情報は見つかりませんでした。」

iPhone12が出るこの時代に全日本、下手したらワールド規模の大会の情報がネットにあがってないなんて!

その場合司会の人は、国立図書館へ赴き古い文献を辿ることとなる。

もちろん交通費は自腹だ。

そうして古い書庫に何日もこもり、その大会がインドネシアの小さな島で行われている古いスポーツだということを突き止める。

ルールはこうだ。

「まず男たちはバビルサの背に乗り「ケロッポの儀」を執り行う」

もう無理だ。
目に映るものすべてが新鮮で、ふて寝をしたい。

大体ドッヂボールですら、正式にはぼくらの知らないルールがたくさんあることだろう。

慣れ親しんだドッヂボールですらそうなんだからヌホホベットなんて。ケロッポの儀なんて。

そうして、唯一のほぼ確定イベント「乾杯」だけを頼りに、あとはおめでとうございます!と頑張ってください!の二言だけで戦う覚悟をして布団に入るのだ。
司会とはこんなにも難しい。

だがそんな司会にも唯一これが出来たらOKの逆転ホームランがある。
しかもそれはどんな会でも使える最強の裏技だ。

え?それは何かって?
知りたい?
しょうがないな〜特別だぞ〜。

それは「お客さんが楽しんでくれること」です。

というわけで今回司会を務めます伊倉ゆうと申します。
精一杯頑張りますので、よろしくお願いします。
どうぞ楽しんでいってください。

多分、全日本ワールドヌホホベット競技会地区予選打ち上げよりかは、楽しみやすいイベントだと思います。

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