【無料公開中】その2 確保

先日、誕生日プレゼントで無料券をいただきまして、スターバックスへ行ってきました。

コメダ生まれドリンクバー育ちのぼくには未だに眩しすぎる場所です。

でもButしかしぼくももう35歳になったわけで、いつまでも光を恐れる魔物のような生き方ではいけないと思ったのです。

スマホで調べた「マンゴーパッションティーフラペチーノ ホワイトモカシロップ追加 ホイップクリーム追加 パッションティー抜き」というおそらくオシャレであろう注文を
ぶつぶつ復唱しながら目指すはいざ名駅のスターバックス。

途中で八百屋さんが「大根安いよー」と客引きでもしていたら
「大根パッションティー……あれ?」となりかねない程度の集中力&はじめてのおつかい感。

墾田永年私財法より長い言葉知りませんから、ぼく。

幸いにもナンバープレートが付いた帽子をかぶった店主とは出会いませんでした。
というかゲートタワーには八百屋ありませんでした。ヒュー都会。

スタバはたくさんのおしゃれ貴族で溢れかえっていました。
いや、おしゃれ貴族だと違う意味になってしまいますが。
(分からない人は学校の先生に聞いてみよう)

「ぼくもついに貴族の仲間入りだ」とスマホでking gnuでも聴こうとしていたらレジへと続く列の最後に看板が。

【先に席を確保してください】

なるほど。
混んでるお店だから先に注文してしまうと、席が無くて困ってしまうもんね。

よかろう!と貴族のちょび髭引っ張りながら
周りを見るとほぼ満席。
あと今更気づいたけどお客さん大体カップル。もしくは複数人の女子。

「それではここでクエスチョン!一人のぼくはどうやって席を確保すればよいのでしょうか?」

脳内ミステリーハンターが笑顔で煽ってくる。

うん。大丈夫。
まだ平気。
全然想定内。
これくらいのトラブル余裕余裕。

だって35歳だもの。

世の中「進研ゼミでやった問題だ!」だけでまかり通るほど甘くないのは重々承知。

「進研ゼミではやってないけど、応用力と持ち前の明るさで乗り切った!」
それが社会の荒波をバタフライするコツ。
ぼく知ってる。

でも、脳と心って別物なのよね。

気づくとすっごい汗出てる。
すっごい指先でシャツのすそ触ってる。

「何か荷物を置いておく」
脳内黒柳徹子さんが答える。

バカ言っちゃあいけない。ぼくは手ぶらだ。
この文章を書いているここ数日と違い、当時まだ9月初旬でなんなら暖かかった。
上着すらない。
はいボッシュート。

「メガネを置いておく」
脳内野々村真さんが答える。

近眼をなめてはいけない。
こちとら視力は0.1以下、夜は0.01㎜以上。
これで数十年やらせていただいている。
メガネなんて外そうもんなら、チョロQよろしく壁にぶつかり高級なコーヒー豆がおじゃん。
ボッシュート。

「靴!靴!」
脳内板東英二さんが……あ、今板東さんふしぎ発見出てないのね。いろいろあったもんね。

席に靴を揃えておくわけにもいかず、気づくとぼくの後方に数人新たな列ができ始めていた。

違うんです!
ぼくはまだ確保できていないんです!
確保できるアイテムも、確保してくれる友人もいないんです!

泣き出すわけにもいかず、
もうシャツのすそはくっちゃくちゃで、
唯一持っていた文明の利器スマホを手に、とても自然に電話がかかってきた感じを出して逃げてきました。

こんなはずではなかった。
ぼくはただ「マンゴーパッションティーフラペチーノ ホワイトモカシロップ追加 ホイップクリーム追加 ぽんぽこぴーのぽんぽこなーの長久命の長助」だかなんとか言って、
颯爽と無料券を渡して、
Official髭男dism聴きながら優雅な昼下がりを過ごす予定だったのに。

でもだからといっていつまでもこのままではいけないと思うのです。
ひとりでも、ちゃんとできるようになりたいのです。

もう35歳なのだから。

私ごとですが、先日、組んでいたコンビを解散しました。
今日からピン芸人としてスタートです。
今まで応援してくださった皆様本当にありがとうございました。
これからも変わらず応援していただけたら嬉しいです。

隣に頼れる人間はいませんが、頑張ろうと思います。
もし緊張してシャツのすそくちゃくちゃになってたら笑ってください。

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