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人間の安全保障

WHOによると、世界における2019年の死因トップ10は、虚血性心疾患、脳卒中、慢性閉塞性肺疾患、下気道感染症、新生児諸状態、気管・気管支・肺ガン、アルツハイマー病等認知症、下痢症、そして糖尿病であった。全死者数の半分以上をこれらが占めた[1]。つまり、大半の人間は病気で死ぬのである。同じ年の地球上の全死者数5,542万人のうち、故意の傷害によって死んだのは125万人であった。さらにそのうち、自傷による死亡は70万人で、暴力と呼びえる個人間の傷害による死亡は47万人、集団的な傷害と法的介入は4万5千人であった[2]。約50万人が争いの犠牲者ということになる。多いと考えるか、少ないと考えるかは人によって違うであろう。他方で、2022年に始まったウクライナ戦争では1年間に10万人程度の死者が出た可能性がある。この数字は十分に大きい。

故意の傷害にとどまらず、新型コロナウイルスCOVID-19の感染により失われた命も多かった。人為的・自然的な急激な変化に巻き込まれて死ぬ人が多すぎる、と考える者にとって、人間の安全保障はグローバルガバナンスの課題である。適切な対策を立てることによって犠牲者を減らすことができ、日ごろの不安を減らすことができる。というわけで、今回のテーマは、人間の安全保障とは何かを説明しなさい、である。

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