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国際法の発達

国際法は法なのか?、という問いはしばしば投げかけられる。法でない、と言う場合、次のような理由が付けられる。条約が結ばれていても遵守されるとはかぎらない。理想が書かれているだけで、そもそも現実とはかけ離れている。条約に入っていない国は縛られない。さらには、秩序は法ではなく力が支えている、と枚挙にいとまがない。

国際法の根拠はラテン語の格言で、パクタ・スント・セルワンダ、すなわち、合意は拘束する、という規範である。この規範は倫理学においてイマヌエル・カントが言うところの定言命法であり、そう決まっているものであるから理屈はいらない。モーセの十戒もまた定言命法である。パクタ・スント・セルワンダは、神の命令である10の命令には入っていないが、理屈は不要という点で同じである。

今回のテーマは、国際法に関係する国連の諸活動について述べなさい、である。国際法の父は17世紀前半の学者、フーゴー・グロティウス、であるとされ、自然法論に拠って『戦争と平和の法』などを著した。18世紀のサンピエール神父やカントの理論は他国との戦争を違法とした。国際法、いやそれどころか国際、という言葉そのものを作ったのはジェレミー・ベンサムである。これら先人の願いがかなってか、20世紀にはベルサイユ条約と国連憲章が秩序の大黒柱となった。もはや国際法は世界秩序というパズルに不可欠なピースである。

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