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核の傘

旧約聖書に「彼らは剣を打ち直して鋤とし 槍を打ち直して鎌とする。」[1]という節がある。もちろん、兵器を捨てて平和的な道具を作ることをいう。これをもじって、『鋤から剣へ―民生核エネルギーの軍事的潜在力』という本が1977年に著された。すでに1974年、インドが核実験を成功させており、さらに核武装を行う国が現れる、と懸念されていた。この本は、3~6発の核兵器を製造するのに必要なプルトニウムを持つ国として、西ドイツ、イスラエル、ベルギー、南アフリカ、そして日本を挙げた。イスラエルと南アフリカはすでに核武装していたであろう。平和目的の原子炉の中においてプルトニウムは生成される。著者たちは「有用かつ安全な核活動と危険な核活動を分ける明確な線があったなら、すばらしかったろう」と記した[2]。

この本の著者の一人はアルバート・ウォールステッターであった。彼は核拡散を極度に恐れるネオコンまたは新保守主義の先覚者である。ランド研究所に籍を置いた経歴がある専門家でもある。ネオコンたちはしばしばまちがいを犯したものの、鋤から剣へ、の警告自体は正しかった。その一方で、現実の核拡散はネオコンたちが懸念した速度では進まなかった。今回のテーマは、核の傘の長所と短所について、核兵器の保有国と非保有国の立場に分けて論じなさい、である。

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