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日本理学療法士協会の新生涯学習制度について③ ~前期研修D実地研修(登録理学療法士制度)~

 こんにちは、理学療法士いくちゃんです。

 前回は日本理学療法士協会の新生涯学習制度(以下、新制度)のうち、前期研修(登録理学療法士制度)についてまとめてみました。

 今回は前回説明した前期研修のうち実地研修についてまとめてみたので、良ければ最後まで読んでみてください。

新生涯学習制度イメージ図

1、前期研修D実地研修とは

 前期研修D実地研修(32コマ、48時間)は、前期研修A~Cのように座学に主体を置いた研修とは異なり、全国の会員所属施設の職場内教育においてOJT(※On the job training)導入を誘導することを目的として位置づけられています。
 
 そのためeラーニングのみでは履修が完了せず対面での受講が基本となります。

※OJT (On the job training)とは
 実際の職務現場で業務を通じて行う教育訓練であり、職場内教育といわれるものである。
 一般的に「目標設定」「実施計画」「業務の実行」「実行後の振り返り」で構成され、経験学習理論の基づくPDCAサイクルにも対応している。
 臨床現場が必要とする臨床能力を臨床現場で実務を通して教育する方法である。
 実際には「Show(やってみせる)」「Tell(説明する)」「Do(やらせてみる)」「Check(評価・追加指導)」という手順を展開して育成を行うものである。
 前期研修におけるOJTは、OJT環境にない会員の現実的な履修に配慮した運用を加えるため、「実地研修」と呼称、表記している。
                 日本理学療法士協会ホームページより

また、実地研修は以下のような取り扱いをしても支障がないようです。

 職場内で実施している通常の新人教育と同義であり、改めて特別な研修を実施するものではない。
 所属施設での職場内教育を指し、通常業務の一環として、勤務時間内に実施されるものである。
 実地指導者(登録理学療法士)によるOJTを主体とした指導を想定しているが、見学・カンファレンス・会議・勉強会等への参加も実地研修に含まれる。
                 日本理学療法士協会ホームページより

 つまり、普段自分たちの施設で行っている新人教育を実地研修として行うことが可能ということなので、実地研修を行うハードルがだいぶ下がりそうですね。

2、受講方法

 実地研修は、所属施設の状況(登録理学療法士の在籍有無など)によって受講方法が異なるようです。

実地研修区分

 まずは「自施設に常勤または非常勤の実地指導者(登録理学療法士)がいるかどうか」で、D-1もしくはD-2に分かれます。

 D-1自施設にて実地研修を受講できます。

 D-2
の場合は自施設での受講ができないため「他施設での見学研修」「eラーニング」「症例検討会の聴講」を組み合わせて履修規定である32コマを満たす必要があります。
 

 次にD-1の施設のうち「日本理学療法士協会作成のガイドライン(新人理学療法士職員研修ガイドライン)に沿って実務が可能かどうか」で、D-1:イもしくはD-1:ロに分かれます。

 D-1:イに該当する施設は自施設にて協会作成ガイドラインによる実地研修を行います。

 D-1:ロに該当する施設では自施設にて独自の研修プログラムによる実地研修を行います。

3、注意点(私見)

 私が個人的に考える実地研修における注意点には、以下の3つが挙げられます。


注意点①
 D-1の実地研修における実地指導者は登録理学療法士を取得していなければならない。


 これは特にD-1:ロの区分で実地研修を行う施設の方に注意してもらいたいことですが、それぞれの施設で用意している新人教育プログラムを実地研修の代替えとして実施する場合には、その指導者が登録理学療法士でなければ履修が認められないようです。

 せっかく新人教育を行ったのに二度手間になってしまわないためにも、新人職員と指導者の組み合わせには十分注意してください。


注意点②
 D-1:イ以外の区分で実地研修を行う場合や、新人職員と実地指導者の組み合わせ登録は施設会員代表者が行わなければならない。


 実地研修を行ううえで施設の方針を決定・変更する権限を持っているのは施設会員代表者です(主に部門長(技師長・室長・部長)が務めることが多いと思われる)。
 そのため、実地研修の担当となった方は、施設の方針が決まった段階で施設会員代表者と情報共有を行い、変更がある場合は施設会員代表者に変更申請を行ってもらうように忘れずに働きかけてください。

 ※ちなみに、2022年4月新制度開始段階では、すべての施設がD-1:イに区分されているようです。


注意点③
 D-2で履修する場合、eラーニングだけでは履修は完了しない。


 自施設に登録理学療法士がいないD-2の区分においてはeラーニングでの受講が用意されています。

 eラーニングだと自分のペースでお手軽に受講できますが、実地研修においてはeラーニングのコマは31コマまでしか用意されていません。

 eラーニングを最大限活用するつもりだとしても、最低1コマは「他施設での見学研修」もしくは「症例検討会の聴講」にて履修しなければなりません。そのことを念頭に置いたうえで履修計画を立てましょう。

4、対応策(私見)

 以上、説明してきたように実地研修はそれぞれの施設において区分が異なるなどして仕組みがやや複雑です。

 そこで私の独断と偏見で最適解と思われる方法と流れを2パターン提案したいと思います。

パターン1、自施設に登録理学療法士がいる場合

 ①施設会員代表者が区分をD-1:ロに変更する(マイページ上で即日変更可能)

 ②施設会員代表者が新人職員と実地指導者(登録理学療法士)の紐づけを行う(マイページ上で即日実施可能)

 ③新人職員が実地研修の受講申請を行う(マイページ上で申請可能)

 ④自施設の通常の新人教育を実施する

 ⑤新人教育修了後、実地指導者が実地研修の履修登録を行う(マイページ上で登録可能)

パターン2、自施設に登録理学療法士がいない場合

 ①施設会員代表者が区分をD-2に変更する(マイページ上で即日変更可能)

 ②eラーニングにて31コマ(7.5時間)履修する

 ③症例検討会を1コマ(3症例)聴講する
  ※症例検討会を聴講する場合は、「B-5症例報告の仕方・発表の仕方」を先に履修する必要あり。

5、補足情報

①実地研修は自施設が臨床施設ではなくても実施可能です。

 その場合は臨床業務に限らずその施設の業務をもとにした職場内教育にて実地研修をみなすことができるようです。


②実地研修の受講申請する前に実地研修を開始したり終了してしまったりしていたとしても実地研修は有効となります。

 そのため、新人教育が行われており実地研修に読み替え可能と施設内で判断された時点で早めに受講申請および履修登録を行ってください。

6、まとめ

 今回は日本理学療法士協会の新制度のうち実地研修について説明しました。

 研修のすすめ方として、仕組みがやや複雑ですが、協会がいかに現場の負担を増やさずにOJTなどを駆使して効果的に研修・教育を行おうとしているかが垣間見える制度であると感じました。

 実地研修を行うことで、新人職員だけでなく、実地指導者・施設会員代表者など、施設全体がどのような方針で職場内教育を行っていくのかを見つめなおす良い機会となると思います。

 これを機に施設内で職場内教育についていろいろと議論してみてはいかがでしょうか。

 今回も最後まで読んでいただきありがとうございました。