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ドラマ「Good Omens」視聴感想

Amazonオリジナルドラマ「Good Omens」を視聴したので感想をしたためておきます。ネタバレ等々には配慮していないのでご注意ください。

■ざっくり作品情報

【原作】テリー・プラチェット、ニール・ゲイマン共著『グッド・オーメンズ』
【監督】ダグラス・マッキノン
【制作年】2019年
【言語】英語
【話数】全6話(各話1時間弱)

■ざっくりあらすじ

天国と地獄はともに黙示録に記されたハルマゲドン(世界の終わり)の準備を進めている。そんな中、世界創造以来地上の生活に馴染み、人間の文化を愛している天使のアジラフェルと悪魔のクロウリーは、終末を望んではいなかった。

悪魔たちは計画の一環として、世界を滅ぼす運命の赤ん坊と外交官の一家に生まれた赤ん坊とをすり替える。アジラフェルとクロウリーは密かにその赤ん坊に善と悪の教育を施し、世界の破滅を望まない人間として育てることでハルマゲドンを回避しようとする。

そして11年後。
天使と悪魔はそれぞれの計画通りにハルマゲドンの実現を図るが、運命の子だったはずの子どもはただの子どもだった。実は11年前、運命の子とすり替えるはずの赤ん坊を間違えてしまっていたのだ。

一方、取り違えられたまま何も知らずに育った真の運命の子もまた、予定通りに11歳の誕生日を迎えていた。彼はささいなきっかけから計画通りに、しかし無自覚に、世界を破滅へと導いていくのだった。

(誤解を招きそうなあらすじなので補足ですが、今作はちょっとドタバタなファンタジーコメディーです)

■ざっくり感想

・全体の感想

とりあえず、これ本当に怒られないの?というのが一番に出た感想。
神様いじりが悪癖の日本ならともかく、敬虔な信者が多そうなあちらでよくこれ作ったなというくらい、天使だの悪魔だの神だのをいじりまくる。
そういう意味で、日本よりはるかに文化や思想に宗教が根付いている国の人でもこういう発想が出るし、それを作品として作り上げる人たちもいるんだなという当たり前の気づきを得ました。そらそーか。

同じような話で、やはり天使と悪魔は表裏一体っていうやつなのか、メインの2人にもそういうところがあって。
結局、クロウリーは悪魔の割には善良なところがあるし、アジラフェルも天使の割には善良ではない。
というか、ぶっちゃけ天使もみんな別に善良では無いような。最終的に目的のためならと割と当たり前な感じで天国と地獄が手を組んでるし。
これはやっぱり、基本的に悪魔=元天使っていうのが根本にあるんですかね。

随所に小ネタや割とシニカルなジョークが多いので 私が博識だったらもっとおもしろポイントがあったんだろうなとちょっと悔しさもあったり。
聖書ネタ、神話ネタはもちろん、ある程度歴史とオカルトにも強いと楽しめると思われます。あと陰謀論とか好きな方もクスッとくるかも。CoCなんかを嗜まれる方は結構お好きなジャンルなんじゃないでしょうか。

・ちょいちょい出てくる日本ネタ

日本だけではないんですけど、舞台になっているイギリス以外の国のネタがちょいちょい盛り込まれてました。結構、それ大丈夫?って感じのネタもあったりして。さすがブラックユーモアの国……って勝手にヒヤヒヤしました。

まず分かりやすいところで、アジラフェルがどんなに人間の文化に馴染んで愛しているか、というのを示す意図もありそうな序盤のシーン。出てきた料理がお寿司だったのでちょっと嬉しかったり。寿司っていうよりSUSHIロールって感じでしたけど。
かなりリッチな雰囲気のレストランでSUSHIロールが提供されていて、なんか違うんだよな〜〜ってちょっとクスっとしちゃいましたけど、なんだかこそばゆいような、嬉しいような気持ちになりました。ドウゾ、アリガト、みたいなカタコト日本語でやりとりしてるのも可愛かった。
まぁ悪い風に受け取ると、もしかすると「SUSHIが好きとか変わってる」みたいな意味なのかも分かりませんけど、そこまで歪んでいないと思いたいかな……。

ついでに悪い方面で言うと、やっぱり日本の捕鯨のイメージってかなりの負のイメージとして浸透してるんだなと。
アダム(真の運命の子)がちょっとアレな雑誌に影響されて「くじらを捕まえるなんてかわいそうだ」と思った影響で海にクラーケンが出た挙句、日本の捕鯨船が5隻も沈められてしまいました。おいおい。
しかも「この船、科学調査とかいうお題目かかげながら鯨狩ってんだぜ」みたいなニュアンスの登場だったので乾いた笑いが出ちゃいました。悪意の塊ですやん。

まあアトランティスがどうの宇宙人がどうのと同列で出てくるので、そこまで真摯な批判姿勢として取り上げた訳でも無いような気もしますけど、どうあれあちらではメジャーな日本のイメージなのは確かなんでしょうね。
こういう外国いじりみたいなネタが結構あるので、そういうのに過敏な方は視聴を避けた方が心の平穏のためかと思います。

■ちょっと話はそれますが

ATLASが出している女神転生という人気ゲームシリーズがあります。
基本的にはどのナンバリングでも天使と悪魔(善と悪)それぞれの立場の人が出てきて、主人公の選択によって立場がどちらかに寄ることになり、最終的に物語がカオス(悪魔/悪)ルートかあるいはロウ(天使/善)ルート、または中道を突き進むニュートラルルートに分岐していくのが基本的な構成になっています。

これはどれが正解のルートということでは無くて、実際それぞれの方向性で世界のあり方が変革します。ある意味どれもバッドエンドというか、選択の果てを見せられることになります。

例えば最近だと鮮烈に心に残ったのは女神転生Ⅳ。
カオスルートは実力主義の自由な世界を目指したはずが、力という絶対的なルールに縛られた弱肉強食の世界が完成してしまう。
反対にロウルートは秩序とルールによって日々の安寧を目指したはずが、平等と公平の名の下に目標も競争も無く、無気力に死を目指して息をする世界が構築される。
どちらもより良い理想の世界を作りたかったはずなのに、極端な選択によって突き進んだ先に待っていたのはどちらも壊れた世界でした。

で、急に何を言い出したかというと、Good Omensでもある意味で似たようなことが起きたんじゃないかなって思ったりしました。要は今作のオチの部分って、アダムがあくまで人間としての答え(女神転生でいうならニュートラルルート)を出したっていうことなんじゃないかなって。

両極端な意見が提示されたとき、本来はどっちかの意見を採用したら全面的にそっちの立場に立たないといけないってことでもないはずなんですよね。この点ではこっちが妥当だけど、この面からみたらそっちが適当だよね、みたいな。
色んな考えを良いとこ取りしてより良い結論を出せばいいはずじゃないですか。それってずるいかもしれないけど、建設的ではある。

つまりアジラフェルが言う「君が人間らしく育ってくれて嬉しい」って、そういうことなんですよね、たぶん。

■面白かったり、思考したりしたところ

・四騎士が司るもの

元ネタとしては、ヨハネの黙示録において終末を迎えるときに登場する4人の騎士だと思われます。
ちなみに、そもそもヨハネの黙示録というのは何かというと、新約聖書でヨハネさんが「終末にどんなことが起こるかが見えたからまとめとくね!」って感じで書いたとされる部分です。
今作では「死」「戦争」「飢饉」「汚染」を司る者として登場します。

結構感動というか、かなり面白く感じたのは5話の空軍基地での四騎士の会話。
『飢饉』が「(コンピュータをハッキングしたので)全ては人間の代わりに機械がやってくれる」と言ったのに対して、「"死"以外はな。人間にしかできないことがある」って返したところ。
このAI台頭時代にすごいこと言うじゃん。めっちゃ面白い。

しかも他の四騎士が倒されていく中、『死』は最後まで「私(死)を破壊したら世界が終わる」みたいなこと言って逃げおおせていて、マジ真理じゃんてちょっとした感動を覚えたりして。
戦争とか飢饉、汚染はまぁ無くなっても問題ないのかなと思えるけど、確かに死だけは無くなるとまずいんですよね。サッと考えただけでも、死だけは明確に無くなることのデメリットが浮かぶので。

こいつは面白いぞとしばらくこの件での思考を楽しみました。

・やっぱりあるんだね、ベッドシーン

唐突に始まる、豪風の中魔女の子孫と魔女狩り軍の子孫がベッド下に逃げ込んで「心を通わせる」シーン。いや普通に笑うでしょこんなの。
ベッドの脚がギシギシしてるだけで終わるかと思ったら変わるがわる服脱げた状態でベッドの下から顔出してくるからもうなんなんこれってなっちゃった。

まあ愛する人がいることって世界を救う理由として十分ですから。そういうことなんだと思います。

本当に海外ドラマとか映画とかって意味わからんタイミングでキスしたりおっぱじめたりするから文化が違うなあ!ってなりますよね。
まあ海外の方から見たら日本映画でなんやそれってこと沢山あるでしょうからね。

・ブロマンス要素

ブロマンスという言葉をご存知ですか?
男性同士の性的な関係が無い、極めて親密な精神的な繋がりを指しています。
いつからか一定の界隈では普通に使われるようになりましたが、元々は英語圏発祥の言「brother」と「romance」を掛け合わせた造語です。
ちなみに女性同士の場合は「romence」と「sisterhood」からロマンシスと呼ぶのだそうです。

今作もブロマンス作品として挙げる方が結構いらっしゃるんですが、実際のところアジラフェルとクロウリーの仲が良いことったら無いです。

クロウリーは分かりやすくアジラフェルが大好きで、本当に世界が終わっちゃうなら2人で逃げだそう!とか言い出すし。親友のためなら空気が清浄過ぎてまともに歩けなくなっちゃう教会の中にも入ってくるし。
アジラフェルは困ったときにはクロウリーが助けてくれるって当たり前みたいに思ってるくせに、悪魔と仲良くなんかしてないぞ!みたいな態度とる。でも本当にクロウリーがピンチに来てくれるとめちゃくちゃ嬉しそうな顔する。なんだそのツンデレ。

身も蓋もないまとめ方をすると、要はずーっとアジラフェルとクロウリーがドタバタするっていう話なんですけど、そういうの良いねぇ〜っていう方にはなんと失楽園の頃からの友情が見られるのでおすすめです。

■まとめ

割とざっくり話が進むところもあるので、緻密な設定と繊細な演出と……みたいな作品を求めて見るものでは無いかなという印象です。でも実は豪華なキャストが出演していたり、知っている人はフフってなる小ネタがたくさんあったりするので、味わいは深いと思います。
とりあえず海外ドラマのノリにある程度抵抗がなくて、あまり信仰心が強くなくて、ちょっと天使とか悪魔とかの話が好きな方にはおすすめです。

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