(読了)少女文学 第一号

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元々は、七木さんの作品が載っていたからという理由で求めたのですが、紅玉いづき先生が座組みをされていて、表紙は森倉円さんだし、豪華だなあって思ったのが出会いです。

少女、という移ろいゆく生物や描写のなかでも愛でられやすいものをいったいどんなふうに切り込んでこられるのだろう。とワクワクしました。

冒頭作。ぺぺ、あなたの小説を読ませて。(紅玉いづき作)はキュートでうっすら埃のにおいがする懐かしさを覚える一作。時流と小説の関係の苦さを滲ませながら、物語と物体としての本の手ざわりを伝えてくる。小説を読み終えて、現実に手足を伸ばし目線を上げたときの感情や感動は読者ならば一度は感じたことがあるものではなかろうか。

クウとシオ(若木美生作)はSFの雰囲気漂う一作。深淵を覗くとき……という引きが作られていて、学び舎という要素をあえて抜いているような気がする。彼らは人間なのかな。

アミルと不思議な青い指輪(神尾あるみ作)は王国ものと1行目から文字通り切り結んでいる。設定がたくさん出てきて糖度は高めなので、アアー懐かしいーーーとかつての読書記憶を揺り動かされる作品だった。

白い寿ぎ(小野上明夜作)は転生ものか乙女ゲーなのかで見かけそうなつくりで始まり、読者の内面をガリガリと削っていくタイプの作品。設定を遡上するような描き方は独特だなあと思った。

ブルージャスミン(木間のどか作)は反対に外へ出て行くお話だけれども、掲載順からの印象でより両作者の作品を際立たせるつくりになっている。冒頭作の流れを汲みながらアンソロジーの文脈というか、グループワークみたいなものを感じられて面白い。

ここまでで1度アンソロジーとしてのメッセージや境界を越えてゆくような気がする。

永遠の30min(北川恵海作)は目覚めをキイワードにして始まり、そして喪失の現れでもあるということを語る。日常に戻ってゆく収束の仕方も前からページをめくったひとにだけわかるようなメッセージの残し方だ。

あなたと彼女たちについて(七木香枝作)はやっぱり思わず涙が出てしまうことばたちなのであった。事実を連ねられているのだけれど、差し出され方がとても慈しみを持っていることが伝わりよかった。

黄金と骨の国〜半竜人と死せる第一王女の章〜(栗原ちひろ作)はタイトルからしてファンタジーの雰囲気で、次巻へ予感させるつくりである。危うさの象徴として生と死で飾られた城壁やその白さはなんというか癖を感じる。儚さを帯びる砂で綴じられるのも味わいがある。

読み終えて表紙に戻れば、劇中劇ならぬ作中作のようでしっくりする。

少女の歩みは様々に描かれて、読者のそばにあり、読みたいときに開かれたものであることを体現されたアンソロジーだと思いました。読めてよかったです。


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