逝年/石田衣良

かなり昔に娼年を読んで面白かったので、続きの逝年も読みました。

泣けますねー。
エロなんだけれど、心の触れ合いがしみいります。
元娼婦と、娘と、現娼夫。
いっけん異常な関係だけれども、深く繋がりあっていて、元娼婦を失うまでの過程が丁寧に描かれています。

まるで指の間を砂がこぼれていくのを止めるすべなく、悲しいのだけれど後悔がないように噛み締めている心情の描写が心に深く刺さります。

体と体の触れ合いをなまめかしく表現していますが、全体的に客の今まで生きてきた人生から滲み出される心に触れる、天職だと思って主人公は仕事に挑んでいます。

反社会的で、異常な世界だけれど、一般的に普通とされる常識が本当に普通なのか。心を失っていないか。娼夫たちの方が人間らしく人と向き合っているのではないか。

主人公が、女性を年齢で差別する概念をもっていないせいで、偏見なくあらゆる女性と血の通ったお付き合い(仕事としてですが)をしているところに、読んでいて心が穏やかになりました。

このように、考えられて行動できる男性は皆無ではないかと。
あくまで小説ですが。

今回のテーマは人類愛です。
就活で新卒というゴールデンチケットを必死に活用しようと、人生のレールに乗っかる大勢と、自分の能力を把握していて売春倶楽部を切り盛りすることが天職だとぶれない芯をもった若者。

私は転職を繰り返しているので、生んでいたら息子くらいの年なんだろうなぁという上司と働くこともあります。
でも、ちっとも年下の癖にと憤慨するような感情は芽生えません。
もともとものすごく年下の男性と付き合うことに抵抗がないのは何故か考えてみると、相手を一人の人間として尊敬できるか、自分を持っていて一本芯がぶれない人は、年下だろうが尊敬するに値するからだと思います。
自分の考えをしっかり持っていて且柔軟に受け入れる器のある人は、年上からでも尊敬されるのです。

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